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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

多分ここに行った日本人は初めてだと思う修道院(カルチ2とフチェッキオ)

モンテピサーノ・ロマネスクその15

カルチCalci、サンテルモラオ・エ・サン・ジョバンニ教会Pieve di Sant'Ermolao e San Giovanni続きです。




美しい青石、いつまでも見ていたいですが、中にも入ってみます。
おお!




青石とは違った衝撃!漆喰ぬりぬりでした~!
柱頭は、往時の姿が取り戻されているようです。




きっと、この柱頭も、漆喰とか黄金ぬりぬりの時代があったのではないか、と想像します。
でも、この、ピカピカの本堂に、そのピカピカとそぐわないものが、一個だけあります。




これは、びっくりしました。事前メモを見たら、ちゃんと11世紀の洗礼盤、と書いてあったんですけれど、瞬時に、何もなかろう、と思い込みそうなピカピカぶりでしたから。
11世紀なのかどうかはわからないのですが、ロマネスク全盛期のものであることは、スタイルから言っても、そうですよね。
一つ一つの彫もとってもいいんです。




人物の、表情も、衣装の表現も、とってもハイレベルな石工さんの仕事ですよね。それに加えて、アーチや、柱にも、とても凝っているのが、印象的。




もっとずっと縮尺の大きい説教壇なんかでも行けるし、このまま、教会そのものの装飾といっても通用しそうな作品です。アーチの隙間に置かれた天使とか、ミニチュアの柱頭とか。




透かし彫りっていうか、浮彫じゃなくて自立した彫刻ですね。
危うくたっているような円柱が味わい深いです。

これ、洗礼盤としてはかなり大きくて、上から見ると、こんな作りになっています。




手前は古そうですが、半分以上は、再建という感じですね。それにしても、大きいし、不思議な作り。そもそも、11世紀だと、もう全身浸かる時代ではないので、階段式なのは不思議だし、真ん中のスペースは小さいし。単に水をためるシステムで、四隅が洗礼盤として使われていたとか、そういうものなのかもしれないですね。

この洗礼盤のおかげで、中に入れた喜びが何倍にも膨れ上がりました。やはり、写真だけではわからない宝物がいっぱいあります。ロマネスクは、現場に行くしかないって、改めて再確認しました~。

で、その再確認をもって、次に向かったのが、フチェッキオFucecchioという町なんですけれど~。これは、逆の意味で、行ってみないと、と思わされたのでした。
目指したのは、サン・サルバトーレ修道院Abbazia di San Salvatore。




ここは、大きな謎でした。
というのも、事前に調べた教会の中で、最も興味がもてそうな場所には、星を付けるのですが、ここ、二つ付けていたんです。結果として、ロマネスク的収穫は、限りなくゼロ。自分が、何をどこで見て、二つ星を付けたのか、今となっては、大いなる謎なんですよねぇ。

丘の上に町があるので、ふもとに車を止めて、坂道を登って、教会にアクセスしました。




教会の裏側が町になっていますが、ファサード側は、高台から新市街を見下ろすという絶景です。修道院の前身に、10世紀ごろ教会があったそうなのですが、そのころはきっと、ここからの眺めは、ただの緑だったんだろうと思います。

教会はクローズ。外がこんなでも、もしかしたら、中には、そういう古い時代の名残があるのかなぁ、と悩みました。教会前は、人々の憩いのスペースとなっていて、輪になっておしゃべりに興じる暇そうなじいさんが数人いたので、ちょっと話を聞いてみました。




東洋人がやってきて、うろうろしながら何かを探している様子は、おそらく、彼らも気になっていたのでしょう。話しかけたら、すごく盛り上がってくれました。教会の中は、美しいものだから、是非見ていくといい、そこの扉を入ると、修道院の窓口があるから、頼めば開けてくれる、と言うじゃないですか。

これはもしかして、ビンゴ?とワクワクしながら、示された脇の扉を入ると、鉄柵で遮られ、顔が見えないようになっている窓口があり、頼むと、では、中から扉を開けますので、そちらで待っていてください、と修道女さんが言ってくださいました。
なんと、現役の修道院なんですね~。びっくりでした。

ドキドキして、中央のドアで待っていると、すぐに扉が開けられました。興奮、絶頂!
そして!




こ、こりは…!
シュポーン、と興奮がはじけて、どっと疲れを感じました。
それでも、もしかして、クリプタとか、何か…?と思い、扉を開けてくれた修道女さん、さっさと姿を消そうとしている彼女に追いすがるようにして、あの、クリプタとかあるのですか、と尋ねると、いえ、ありませんよ、ここまでしか見せてあげられないのよ、と淡々と奥に姿を消してしまいました。

でも、面白かったのは、右側の上方にある窓から、修道女さんが二人ばかり、じっと、私を見下ろしていた姿が目に留まったのです。




私が、彼女たちに気付いたと思ったら、慌てて姿を消されましたが、あの窓は、修道院につながっているのですね。なんだか知らんが、東洋人が見に来たぜ、ということで、きっと私を見に来たんだろうな、と思います。その日の、ちょっとしたニュースを提供したのかも、私。

あとから、説明版を見てみると、確かに起源は古いので、床下などから、何か出てきたりしているそうですが、とにかく全部新しくなってしまっているので、今は往時の姿はどこにも見ることができないようです。
わずかに名残を感じるのは、ファサードに、ちょっとだけ残されている、これかな。




古い構造をなぞった窓の跡。

じいさんたちには、どうだったか、きれいだったろう、と自慢げに言われ、ゆがんだ笑顔になってしまったと思いますが、それでも、確かに現役の修道院に触れた面白さはありました。
同時代の城跡があって、どちらかというと、そちらの方が、往時の姿が残っていて興味深いから、是非見ていけ、と言われて、わかりました、と言いながら分かれてきましたが、もう元気がなくなってしまい、結局、これで、今回の短い旅は終了。ちょいと尻すぼみですね。
でも、得るものの大きい旅でした。
この地域、まだまだ、訪ねるべき場所が結構あることも分かったし、ピサ様式のバリエーションって、本当に幅広くて、そして好みだし、また短い旅をしてみたいと思います。

ちなみに、このフチェッキオの修道院。私以前に訪ねた日本人がいるだろうか?と、ふと考えてしまいました。

番外編、続きます。

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  1. 2016/12/30(金) 06:15:20|
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