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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

恐るべし目力(サン・ファン・ラ・ペーニャ3)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その10

サン・ファン・ラ・ペーニャSan Juan de la Penaの修道院Monasterio、続きです。
あちこちでどひゃぁ、などと、心の叫びをあげつつ、やっとたどり着いた回廊。




しかし、すさまじい発想です。岩山が覆いかぶさって、天然の屋根になっていますが、下の方は、それでも少しは掘ったんでしょうねぇ。異常なロケーションでも、セオリーに従って、とにかくきっちりと回廊を作っているところが、なんというか、執念的な思いを感じる場所です。
それでいて、やっつけ仕事ではなく、いや、それどころか、ここの仕事のレベルはすごいんですから。




この時代、教会建築を束ねる棟梁、つまり建築家は、おそらく聖職者が兼ねていたケースが多く、同時に石工もやっていたりしたわけですが、ただ、石工さんについては、必ずしもそうではなく、純粋に職人さんだったケースもあると思うんです。




こんな、今にも岩が崩れてきそうな場所で、働くなんて、いやだった人もいたんじゃないか、とふと思ってしまいます。閉所恐怖症の気があったら、たとえ空が見えたとしても、すごくいやだと思います。
柱頭は、工房で彫って運んだでしょうが、アーチのチェッカー帯などは、現地で彫るしかないものですよね。

では、柱頭を、アップでご紹介します。




ひじょーにおっさん臭いアダムさんですね。顔は超おっさんだけど、身体は妙にぷよっとしてなまめかしい肉付き?
相方のイブさんは、角の向こう側にいて、やはりぷよぷよ。

これは受胎告知みたいです。




両者がそれぞれ、角からはみ出さんばかりのポーズをとっているのが、珍しいっていうか。ダイナミックというのか、こせこせまとまってないのが、全体に共通するかも。飛び出す絵本的な、深浮彫。

同じ柱頭を右側に回り込むと、エリザベスご訪問。




天使の翼が、もっさりと重厚で、ひどく重そうですねぇ。

ぐっすりと眠っているヨゼフに、天使がそっと手を置いて、お誕生のお告げをしています。
人間のパパ、ヨゼフ、かなりハンサムじゃないですか?
全体に表情はかなりしっかりとあらわされている感じ。




天使ったら、目が飛び出ていて、すごいですね。目力、半端ないですが、怖いです。
そのお隣にあるのは、この頭かちわりシーン。




並びから言えば、ヘロデの幼児虐殺という解釈が正しそうですが、カインとアベルのエピソードだという解釈もあるとか。確かに、頭かちわられているのは、どう見ても大人だしね、でも、いきなり旧約置くのも変ですしね。

いきなり話飛びますが、これは、水をワインに変えたという、カナの結婚の奇跡っぽいです。このエピソードがこんなにはっきりわかりやすく彫られたのって、初めて見たかも。他にあるのかな。




湖でお魚をとっているとこ。




ね、こういうの、表情がすごいです。
キリストのエルサレム入場。




ロバとキリストだけ、石色が赤い。たまたま、ここだけ赤かったのかなぁ。色付けしてる?
後ろに従う子ロバ。かわゆい。




そして最後の晩餐。




どうやら、ところどころ、赤い系の石なのですね。
それにしても、一部は破損、摩耗、摩滅しているとはいえ、残されたものは、修復の賜物もあるのでしょうが、素晴らしいです。この辺り、各地で見られる似たようなタイプの作品は、共通する表現力がありますので、カベスタニーみたいに、技術というよりも、独特の表現方法を持っている石工さんたちがいたのですね。場面やエピソードよりも、それぞれの人物が浮かび上がってくるような、そういう意志を感じる柱頭です。




見飽きることがなく、何度も行ったりきたり。また、無残にもなくなってしまった柱には、いったいどういった彫り物があったものやら、思いをはせてみたり。




実に素晴らしい場所です。やはり、昔訪ねてなくてよかった~。

去りがたいものの、いつまでもいるわけにもいきませんので、帰路に着くこととしました。私にしては珍しく、1時間以上も過ごしていたので、びっくりです。
帰りももちろんバスに乗ればいいのですが、途中、家族3人(男女と子供)で騎乗して、羊や犬などを従えて、坂道を降りてくる巡礼風の人たちに出くわして、びっくりしました。せっかく面白いシーンだったのに、私ときたら、写真を撮るのも忘れ、茫然と見送ってしまいました。
それにしても、こういう巡礼がいるんですね。他の場所で会えば、路上生活者としか思えない人たちでしたが、貝を下げていましたし、やはり巡礼なのでしょう。

やはり観光地にまでなっている著名な場所というのは、すごいものです。想像以上。

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  1. 2017/02/13(月) 06:39:41|
  2. アラゴン・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

No title

知識を有してからの現地見学は・・・・・
見所も違いますよね?

私も古代遺跡の知識を後から知って、良く見て来れば良かった!と言う後悔の念にとらわれた事は多々ありましたよ!


本来は二度訪ねれば良いのだけれど・・・・・・
時間的にも旅費的にも、海外の場合は無理ですよね?
  1. 2017/02/12(日) 23:49:00 |
  2. URL |
  3. 古代遺跡めぐり<山下亭> #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

サンチャゴ巡礼の道筋にあるので巡礼者も多いのでしょうね!

頭柱の飾りが、もの凄く素敵ですね!

ナイス・ポチ!
  1. 2017/02/14(火) 18:04:00 |
  2. URL |
  3. Atsuko #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

山下さん
本当におっしゃる通りなんです。当初は、そもそも、どこへ行ったらいいのか、行ったら行ったで、どこに注目すればいいのかもわからなかったのです。好きに見ればいいと言えばいいのですけれどもね。
二度は、ヨーロッパに住んでいても、なかなか行けるものではなくて。ミラノから日帰りで行ける教会くらいならともかくね。
  1. 2017/02/14(火) 22:55:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> Atsukoさん
巡礼路と言っても、実際は相当遠いので、ここを歩いている巡礼は、本気の人たちでしょうね。
柱頭は、とにかく素晴らしかったです。
  1. 2017/02/14(火) 22:56:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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