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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

もしや、ル・コルビジェのやつ…?(サン・ファン・デ・ラ・ブーサ)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その15

大満足でラッレーデLarredeの見学を終え、この日の宿泊地であるハカJacaに向かいました。まだ日も高く、時間的な余裕はあったのですが、この日は本当に暑くて、早朝から動き回っていたためにもうガス欠状態。
その上、ラッレーデを出発したときに、車の温度計は、なんと40度を示していたのですよ。これでは倒れる、と思い、早いところハカに行き、まずはビールだ!という誘惑に勝てませんでした。

ところが、ハカに向かう道をのんびりとドライブしていると、右側の草原にぽつりと一人佇む建物が目に入りました。家畜小屋?それにしては立派な、と思いつつ、目の端で見つつ、後続車も対向車もいない田舎道のこと、スピードを緩めると、なんと、馬蹄形の開口部が認められたのです。




驚きつつ、路肩に急停車。
この辺りは、おそらく時間的に行けないだろうと思いつつも、一応主な教会はピックアップしてあったのですが、これはない。でもあの馬蹄形は…。
こうなったら、やはり見過ごせませんので、なるべく道にはみ出ないように駐車しなおして、草原に入り込みました。

道路と草原の間は溝になっていて、草木がうっそうとしていたので、結構回り込む必要がありましたが、無事、入り口を見つけました。
遠く、側壁にある扉の様子は、やはり教会のようです。




この辺り、相当興奮して、近づいていきました。
そして!




サン・ファン・デ・ラ・ブーサ教会Iglesia de San Juan de la Busa。

一人だったし、自覚もあまりなかったですが、絶叫的な悲鳴を上げたように思います。これは心底驚きました。すごい!今見たばかりのセラブロが、こんなところに、こんな形で一人、佇んでいるとは、だれが期待したことでしょう。




それも、このオリジナリティ!
これを見て、すぐに髣髴としたのが、ル・コルビジェのロンシャン礼拝堂です。やつ、ここに来たな、と思ってしまいました、笑。いや、ロンシャンは行ったことないんですが、写真で見るイメージが、そっくりっていうか。

道の方から見たたたずまい。




この、馬蹄形の窓のおかげです。これがなかったら、たぶん、停まらなかったと思います。

現地に置いてあった説明によれば、教会は、10世紀ごろのものですが、用途の起源、つまり修道院が関連していたとかそういう歴史的な経緯はわかっていないそうです。しかしながら、地域に点在するセラブロ様式の中では、ほぼ唯一といってよいほど、オリジナルの姿そのままで、千年からずっとここにあった模様。

ル・コルビジェが真似した(勝手に決めつけてますが)屋根のスタイルは、クーポラなしに円筒系の後陣を覆うためのスタイルらしく(この辺、あやふやなスペイン語理解なので、確信なし)、そういう様式が当時あったようです。ということは、ここだけじゃないんですね、きっと。

他の説明版には、モサラベ、と記載されていました。
この辺りは、前回の記事に書いたように、いろいろな説があるようで、決定的な説はまだないようですが、たまたま最近テレビでやっていた中世を巡る番組では、「ゴートが好んだ馬蹄形が、イスラムに伝わった、その代表が、コルドバのメスキータ」であるようなことを堂々と言っておりました。馬蹄形というのは、半円のアーチより、さらに高度な技術力がいるようなことも、語られていました。ここは、スペイン・ロマネスクには欠かせないポイントなので、ちょっと調べてみたいところです。

側壁にある扉も、馬蹄形。




アーキボルトには、あたかもイスラムの文字のような朝浮彫がありますね。これまた不思議な。木製の扉は、新しいものになっています。
この環境、このようなたたずまいの教会ですから、当然閉まっているものと思ったものの、これまでの経験から、忘れずに試してみました。

そしたら、あっさりと開いたので、またまた驚愕、雄たけびです。




すがすがしいシンプルさ。天井は新しくされていますが、石積みが当時のままと思うと、また、じわじわと興奮が沸き起こってくるような、そういう雰囲気です。
でも、建築的には相当素朴で、武骨です。




つけ柱的な柱が、天井を支えていたようです。前回のラッレーデと同様のトンネルヴォルトの天井だったと考えられますね。




こういう素朴さ、そして、大事にされているのが明らかな様子って、やられます。いつまでもいたくなるような空気が漂っているんですよね。
本当に名残惜しくて、何度も振り返りながら、帰路につきました。





セラブロ様式は、いつかまた、きちんと回りたいものです。

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  1. 2017/02/24(金) 06:30:01|
  2. アラゴン・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:17
<<なぜここまで引っぺがすのか…(ハカ1) | ホーム | わたしはゴート派ですが(ラッレーデ)>>

コメント

No title

きゃ~素敵ですね!出会いですよね。
どうやってここにできたのか謎です。中に入れて良かったですね。
ヨーロッパは戦争もたくさんあったのにこうして残っていてくれて本当に良かった。
  1. 2017/02/24(金) 00:54:00 |
  2. URL |
  3. まーたん #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

凄いです。よくぞ遭遇されましたね。車で自由に動ける強みでしょうか。後陣のギャラリーもどきの小円柱、ほほえましくなります。地元の人がそっと祈りをささげにくるのでしょうか。今ドイツの立派な教会巡りの ホームぺージ作成中ですが、やはりRomanesqueはこうでなくちゃ。屋根、本当に面白い。コルビジエ風片流れ?
  1. 2017/02/24(金) 02:34:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

おめでとーございます。神さまが健気さにご褒美をくださったものと理解しときます。たまにこんなことがあるから舞い上がってしまいます。私も。
  1. 2017/02/24(金) 02:44:00 |
  2. URL |
  3. otebox #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> まーたんさん
ほんと、出会いでした。幸せな出会い。
なーんにもない場所だったから、爆撃もされなかっただろうし、人も少ないから、家畜小屋にもされなくて、それで、結構きちんと残ったんだろうな、と思います。幸せな建物ですよね。
  1. 2017/02/25(土) 19:41:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

> ykさん
同じ道を行ったのですが、行には目に入らなかったんですよ。やはり気持ちが目的地に向いているからでしょうかね、笑。
ロケーションも素晴らしいし、このセラブロ様式、私はとっても気に入ってしまいました。
ドイツに行かれていたんですか?ドイツロマネスクは、きっと行くチャンスがなさそうに思っていますので、ホームページ、楽しみにしています。
  1. 2017/02/25(土) 19:42:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> oteboxさん
クルマの旅、ならではですよね。でも、修行旅は、結構綿密に調べていくので、出会いってありそでなかったり。スペインの、特に巡礼の道沿いは、とにかく数が多いので、未知との遭遇(?)の確率が高い気がします。それも、スペイン・ロマネスクの楽しみですね。
  1. 2017/02/25(土) 19:44:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

素敵な出会いでしたね!
ナイス・ポチ!
この教会!良く残っていましたね!
3,4、10、の写真の角度からですと、、、
ル・コルビュジエのロンシャン礼拝堂に似ていますね!

屋根の形は、、、あれは馬蹄風というよりは
蟹の甲羅とか言われているようです~~
  1. 2017/02/26(日) 00:01:00 |
  2. URL |
  3. Atsuko #79D/WHSg
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No title

> Atsukoさん
一目で、ロンシャンにそっくり、と思いますよね。写真でしか知らないとはいえ、ロンシャンのスタイルって、とっても独特で印象的だと思っていたのですが、すでにあったんだ~、って感じです。
  1. 2017/02/26(日) 22:50:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

素敵ですねえ!

葬儀の時のミサに使うんでしょうか?
聖櫃はありませんね。
  1. 2017/02/27(月) 02:17:00 |
  2. URL |
  3. ガビィ #79D/WHSg
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No title

来週から、南イタリアRomanesqueのtourです。貴blogしっかり読ませていただいています。tourですから、highlightでくまなく、というわけにはいかないのですが、もうそれは割り切るしかありません。ドイツは東でオットー朝のものをいくつかみました。ロマネスクは先行するものをとりいれてできているので、そういう点でも勉強になりました。ただし、かわいくはないのです。こいうスペインの田舎の小教会がたまらなくまた見たくなっています。時間切れで、最初の4日分だけアップしています。必見のヒルデスハイム、青銅扉、Veronaとはまた違った味わいでした。
  1. 2017/02/27(月) 10:03:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
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No title

> ガビィさん
教会として機能しているのがいいですよね、こんなに何もない場所なのに。ミサはきっとたまにしかないんだと思いますけれど、でも、現役。
なんか、人々がどこからともなく集まってくるのかと思うと、ちょっとしたドラマみたいな。
  1. 2017/02/27(月) 23:04:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

> ykさん
そうなんですか!
実は私も4月のイースター休暇に、久しぶりにプーリアに行くんですよ。念願のオートラントのモザイクと、周辺の洞窟教会という、かなりマニアックな目的ですけれど。
ツアーですと、オートラントにはいらっしゃるのではないかと思いますので、先を越されちゃいますね。
ドイツの教会、是非サイト、見させていただきますね。かわいくないっていうの、わかります。修行としては、行くべきなのでしょうが、どうも食指が…。
  1. 2017/02/27(月) 23:07:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

あら、corsaさんの後なら、もっと情報が得られたのに。オトラントには行きますが、洞窟教会は行きません、20年近く前、一般ツアーでマテイラには行き、洞窟教会にも入りました。とってもすてきなマリア様(壁画)を見ました。苔で緑色でした。旅行はカラブリアの山の中の教会をみてプーリアへ、モンテサンタンジェロまで行って、トロイヤ、ベネヴェントを見ながらナポリへ。でも 天気予報が、、 無常にも雨続き!!帰ったら、「緑の風」の方に速報版を載せます。
  1. 2017/03/02(木) 03:35:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
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> ykさん
カラブリアって、Stiloですかね。あそこは一度行ってみたいです。プーリアでも、北部なんですね。
実は、ベネヴェントのあたり、大変興味があるんですよ。時代や様式が混じった面白そうなものがあるんですよね。一度行ってみたいけれど、なんか場所的には抵抗があって、決心できないでいるんです。
  1. 2017/03/04(土) 13:36:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
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No title

Calabriaではスティロとサン・デメトリオ・コローネ(蛇などのオプス・セクティーレで有名)に行きます。一昨年申し込んで催行されなかったプランには入っていたロクサーノに行かないのが残念。でも Naples近郊でサンタンジェロインフォルミスに行くので選びました。ボエモンドがらみでカノーザにもいきたくて、タクシーで行けないか考えているところ。でもここはロマネスクだけでなくローマ遺跡、初期キリスト教会遺跡もあってチョコット行きにはもったいないみたい。イタリア在住のcorsaさんがうらやましいです。では行ってきます。
  1. 2017/03/05(日) 03:06:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
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No title

ロクサーノになっていますが、ロッサーノ、失礼。
オトラントでは2泊してカサラネッロやガラティーナにも行きます。ブリンディシに行かないのが残念。
いよいよ明日出発です。では
  1. 2017/03/05(日) 03:11:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
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No title

YKさん
もう出発されちゃいましたね。楽しい旅をされて、お帰り後のレポートを楽しみしています。
それにしても、オートラントに泊まり、結構小さい場所に行くのにブリンディジなしとは。面白いですね。
  1. 2017/03/05(日) 15:54:00 |
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  3. corsa #79D/WHSg
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