2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その16
多分、前の訪問からは、10年以上経つのではないかしら。前に来たときは、まだ、それほどロマネスク一辺倒じゃなかったので、この訪問は、結構楽しみにしていました。ハカJacaのカテドラル・サン・ペドロCattedral de San Pedro。
かなり疲れていたので、前回記事にした小さな教会に出会っていなければ、まずは、このカテドラルの横にあるバールに座って、ビール、と行くところですが、あのちびっこのおかげで、再びエネルギー充填!ホテルに荷物を放り込んで、すぐに出陣です。なんせスペインは、夏の日が異常に長いこともあるのか、昼休みが長い分、このカテドラルなどは、20時半まで開いているのですから、修行旅においては、ビールに酔いしれている場合ではなく、身体にムチ打って、この日のうちに見ておくべきものなのです。
工事現場の覆いにまでロマネスク。こうなると、テンション上がってきますよね。
時間が気になりますので、まずは、カテドラル内部に作られたハカ司教区博物館Museo Diocesano de Jacaの見学からです。本堂に入り、中からアクセスするようになっています。
カテドラルの姿とは裏腹に、内部はもちろん新しい内装の博物館となっています。
以前ここに来たときは、訪ねておらず、でも、まったく記憶にもなかったので、なぜだろうと思っていたら、どうやら改装で閉まっていたようです。開館は1970年と古いものの、2003年からクローズして、2010年2月に再オープンしたということ。なるほど、見逃していたわけではなかった、ということで、ちょっとほっとしました。
ほっとする、というのも変ですが、過去に見逃したと思うと、なんか悔しいんで~。
この博物館には、ハカのカテドラルの柱頭オリジナルが置かれていたり、地域の小さな教会から持ってきたフレスコ画や彫刻が飾られており、ロマネスク的には、一度は訪ねなければいけないマスト・プレース。
トップに掲げた回廊は、一時かなり荒廃してしまったのを、近年に整備したものということです。その回廊にあった柱頭のオリジナルなどが、展示されているというわけです。すでに、かなり傷んでいる柱頭も多く、痛々しいです。ただ、傷んでいるものは、現地に置いといてもいいんじゃないか、とちょっと思いましたけれど。
こちらは、側壁外側の入り口部分にある柱頭のオリジナルと思います。ダビデ王とその音楽家たち。楽器を弾いている姿が、ちょっと見、首切りに見えちゃって、幼児虐殺かと思っちゃいました、俺ときたら。笑。
外にある柱頭は、保護するのが難しいですから、こういう形で保存していくのもむべなるかな、とは思うのですが、でも、勝手な個人的思い入れでは、現場でいいんじゃないか、と思いがち。
特に、話が、内部のフレスコ画となると、絶対現場においてほしい派です、私は。
実は、ここにもこれほどたくさん、フレスコ画があるとは知らず、びっくりしたし、同時に、現場においてほしい派としては、正直がっかりしました。
サラゴサ県ルエスタRuestaにあるサン・ファン・バウティスタ教会Iglesia de San Juan Bautistaの後陣フレスコ画。
こういう、田舎の小さな教会らしい。
確かに、保護するの大変だし、ここに置いてあったら、見ることができないかもね。でも、こんな教会に、こういうフレスコ画があったら、どれだけすごいかと思ってしまいます。フレスコ画引っぺがしちゃったら、おそらく教会は放置されて、今は草に埋もれちゃっているとか、そういうことなんじゃないでしょうか。教会の建物だって貴重なのにな~。
ぎゃ~、これまた素敵なフレスコ。マットな色といい、表現法といい、かすかだけど、ベアトゥス写本髣髴です。
教会は、ウエスカ県HuescaナヴァサNavasaのラ・アスンシオン・デ・マリア教会Iglesia de la Asuncion de Maria。
こちらも、よく残っていますよね。若干、時代が下る感じがありますが。
ウエスカ県HuescaオシアOsiaにあるヌエストラ・セニョーラ・デ・ロザリオ礼拝堂Ermita de Nuestra Senora del Rosarioにあったもの。
結構修復してるんですけど。これなら、ここに置いておく選択肢はなかったのかなぁ。
で、驚いたのが、これ。
キリスト降架の図像のようなのですが、これは、ここに来る前に立ち寄ったコンシリオの教会のフレスコ画でした。確かに、その教会で出会ったおじさんに、フレスコ画のオリジナルがハカの博物館にあるよ、と言われていました。
コンシリオの教会は、早朝に、近所のおじさんが丁寧に掃除をしているような、そういう今でも生きて、大切に使われている教会です。フレスコ画がそのまま置かれても、絶対に大丈夫だし、地域の人にとっては、オリジナルがあることが、重要だと思うんですけどね~。スペインの、たぶん70年代の文化財保護政策、本当に残念。
フレスコ画引っぺがしは、しかしこれらは序の口。
総ざらえ!
サラゴサ県ZaragozaバゲスBaguesのサントス・フリアン・イ・バジリサ教区教会Iglesia Parroquial de los Santos Julian y Basilisa。
これは、古いもので、11世紀後半のフレスコのようです。ボイ谷と同じくらいの時期なのかな。
すっごいですよ、色も、表現力も。イタリアのヴァッレダオスタのノヴァレーゼのフレスコ画を、ちょっと思い出しました。あれと、同じような時代になるのかもしれません。
ウンブリアのフェレンティッロも、思い出します。
いろいろと髣髴としながら、どうしても、引っぺがされてしまったことに気持ちが向いてしまって、残念に思う気持ちを払しょくできなくて、素晴らしい芸術品に対して、薄ら寂しいような、そういう気持ちでした。
フレスコ画の博物館展示は、難しいです。この素晴らしい絵に、現地で出会えたら、ただただ興奮するはずですけれども…。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2017/02/26(日) 03:38:41|
- アラゴン・ロマネスク
-
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-
| コメント:4
言葉もありませんが!
昨年バロセロナに行った時に、念願の
Museu Nacional d,Art de Catalunyaで
ロマネスク美術を観てきました
壊れた教会から壁画を剥がしてきた壁画が沢山あります。
教会の修復が難しいからでしょうが、、、
修復された教会に複製でも壁画が描かれるようになると良いですね!
遠くの僻地まで訪問できない私には博物館でロマネスク美術が
観れて嬉しかったのですが、、、
例えばエジプトのものを大量に英仏の博物館にもってきていますが
そのままエジプトに残しておいたらどうなっていたか?
わかりませんね!イラクなどでは戦乱で人類の宝が失われて
しまいましたし、、、
難しい問題だと思います!
ナイス・ポチ!
- 2017/02/26(日) 09:52:00 |
- URL |
- Atsuko #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> Atsukoさん
悩ましいことなんですよ、確かに。
個人的には、博物館には複製を展示して、なるべく現地にオリジナルを残してほしい、というのが望みです。スペインのボイ谷など、複製を残していますが、薄っぺらな感じで、非常に悲しいことになっていますよね。
バルセロナの博物館は、過去に二度ほど行きましたが、どうしてもなじめず、バルセロナに行っても、もう行かなくなりました。
政変などで破壊される恐れがあることを思えば、確かに博物館に入れることは、結果として正解だったケースも多々あると思いますが、失われてしまっても、もうどうしようもないのかな、と思います。実際、教会美術も、結構早い時期から、様式の変更等で簡単に破壊されてきているわけですし。
ただ、現在あちこちで実際に行われている宗教的美術品破壊行為を映像で見ると、本当に涙が出そうになりますけれど…。でも、繰り返しに過ぎないのかと思う気持ちもあります。
- 2017/02/26(日) 23:02:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
- [ 編集 ]
確かに難しい問題。ボイ谷のあの栄光のキリストだって、現地で観る複製とCatalonia美術館で観るのと全くく雰囲気が違いますものね。研究者は近くでみられていいかもしれません。堀田善衛氏もリポールの教会の前で、こんな寒いふきっさらしのところで長い間見られるはずはない、研究者は写真か何かで仔細にみているに違いない、なんてかいていましたっけ。ただ彫刻が風化して何が何だかわからなくなっているのも 、、。 まあ時の流れはいたしかたないと言ってしまえばそれまでですが。
- 2017/02/27(月) 09:56:00 |
- URL |
- yk #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> ykさん
本当に難しい問題ですけれど、もう今は引っぺがしは、やってないと思います。あれは、引っぺがしの技法が確立されたことによる、研究者の自己満足的な、一時のはやり的なものではなかったか、とも思っています。
引っぺがしでも何でも、もちろん、破壊されたり盗難にあったりするよりはいいわけですが、でもね~。
まぁ、これからは、きっと、引っぺがしする予算もつかず、かといって、現地での管理もできない、ということで、閉ざされる場所が増える一方かもしれない、などと若干悲観的なことも思ったりします。
だって、カギを借りられるところでも、カギを預かってくれているのは、たいてい地元のお年寄りですもんねぇ。
- 2017/02/27(月) 23:12:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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