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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

パナソニックと京都伝統工芸コラボ(フオリサローネ4)

前回頭出しした、パナソニックです。




Panasonic-Electronics Meets Craft
Panasonic Design and GO ON
Design Shuichi Furumi

この、ブレラ大学の小さな中庭にしつらえられた黒テントのような建物から、見学コースが始まります。




案内のコンパニオンは、男性女性含め、かなりの数が配置されていて、どの人も、最低バイリンガル、人によってはトリリンガル(イタリア語、英語、日本語)という力の入れようです。

一度に入るのは、20人程度でしょうか。平日だからよかったですが、これ、週末には、大変な行列になったのではないかと想像します。

全員が入ると、一面に張り巡らされたスクリーンに、様々ないイメージが映し出されます。




二年前のミラノ万博の日本館を思い出すような、プロジェクションマッピング的な。
スクリーンの前には、池が置かれていて、映像が池に反射する効果なども狙ったようなんですが、それは、ちょっと考えすぎだったような。




細長いスペースで、見学者は、スクリーンに張り付いちゃうので、なんか全体見えないし、もったいない感じでした。スクリーンから離れてみるような作りにすればよかったのにな~。




エレクトロニクスと伝統工芸のコラボという発想らしいので、それらしい映像が続きますが、迫力あるし、美しいです。
そして、このスクリーンになっている白い布も、伝統的な織物だったようです。




映像の白い部分がうねうねしていますが、それが地の布の模様なんです。
これは、でも、ちょっといらなかったかも。スクリーンは、ツルツルの布の方が、映像がきれいだった気がするし、織物を使うなら、その説明をした方がよかったような。

約10分ほどで映像が終わり、次の会場にぞろぞろと移ります。今度は、地下室。ここは、初めてアクセスしました。




階段を降りると、かなり暗い部屋で、片隅にうっすらとともる明かりに照らされた展示品のある場所に、自然と吸い寄せられるように、見学者が集まります。




そこには、超小型のお風呂のようなものが…。
なぜお風呂かというと、ヒノキの香がして、中ではお湯が沸いているからなんです。
台に、電磁調理器みたいなものが仕掛けられているもののようです。

見学者がこの一点に集まると、すべての明かりが消えて、え?と思うと、その一瞬後に、この桶に集中していた人々の後ろに、明かりがさ~っと灯されるのです。




うわ~!と歓声が起こる演出でした。写真がうまくありませんが、かなり細長いスペースで、明かりの効果もあるのでしょうが、すごく奥行き感があるんです。
それも、皆、ここにこれほどのスペースがあって、これだけの人々がいるなど、思いもよらないのですから、本当にどよめきました。

この長いテーブルに、エレクトロニクスとクラフトのコラボ作品が並べられており、それぞれに数人のコンパニオンが付き、詳細な説明をしてくれるんです。

竹をポイントに、樹脂で形を整えて、LEDの明かりをうまく拡散させる素材を張ったランプ。




ちょっと細かい説明すべては覚えてないんだけど、中にLEDの豆ランプみたいのが入っ
ているというような話だったはず。ポイントは、明かりを柔らかく全体に拡散させるような構造と素材だったと思います。
本当にとても柔らかい光で、自然な感じ。
ケーブル状になったLEDを竹に沿わせてランプにしているタイプもありました。
竹細工は、京都の伝統工芸で、Kohochosai Kosugaという会社とあります。1898年から活動しているらしいので、伝統ある会社ですね~。
そういえば、200年を超す活動をしている会社が最も多い国は、日本とフランスだと聞いたことがありますが、こういう伝統工芸の会社で、今も形を変えながら生きている会社というのは、そういうタイプの会社なんでしょうねぇ。




手のひらサイズの香炉。
手に取ると、その熱を感じて、香りが立つ仕組みになっているようでした。
お部屋のためではなく、個人が自分一人で楽しむための香炉、という発想だそうです。
そして、この、金網の細工が、伝統工芸。一つ一つ手作りなんだそうです。ペンチで、くりくりってやるんでしょうか。もらった冊子にある写真を見ると、手で編んでいるようなんですけれど、この正確なデザインを形作るのは、相当の熟練が必要なんでしょうね。
材料は、なんとチタンということですから、相当高価な品物です。

これも京都の会社で、Kanaami-tsuji。Tsuji Kenichiさんという職人さんがやっていらっしゃるようで、www.kanaamitsuji.netというサイト・アドレスが出ていました。

お話を聞くのが楽しく、あまり写真を撮っていなかったことに、今気づいて、ちょっと残念です。
普通にあったら、結構地味なプロダクツばかりだし、これほど興味は持てないように思うのですが、日本語・英語・イタリア語で、どの製品についても、非常にきちんと説明するスタイルが、成功しています。

おお、これは見るからに楽しいです。




小さな仁丹のような粒粒が、ぎっしりと詰まっていて、アンフォラ型のガラス瓶に入っているのは、お酒という想定です。触ってみると、遠慮せず、粒粒に手を突っ込んでください、というので、突っ込むと、ほんのり冷たい!
こっちもぜひ、と勧め垂れたお隣のは、ほんのり暖かい!

これ、伝統的な木樽ですが、下部にやはり電磁器が仕込まれているらしいんです。で、冷やしたり、温めたり。人肌の日本酒ぬる燗には、最適のお燗システムだと思います。
アンフォラ型のガラス徳利も、このために作ったということで、感心しました。

Nakagawa Mokkougei Hirakoubouという、これは滋賀にある会社。樽を作れる職人さんは世界中から姿を消しつつあり、イタリアではすでに樽作りをやっていないはず(ほとんどフランスから輸入している)。日本でも、樽の製造者は減る一方のようですから、このような美しいフォルムの樽を作れる技術は、大変貴重なものではないかと思います。
この樽の職人さんも、現場にいらっしゃったようなのですが、私の見学のときは、たまたまいなくて、残念でした。




あんまりじっくりとお話を聞きながら見ていたので、結局、電気が消えて、次のグループが入ってきて、電気がついて、というのを、三度ほどリピートしてしまいました。どのグループも、明るくなった時に、同じようにどよめいて、面白かったです。

これは、お茶筒。




中に、茶筒にピッタリのスピーカーが仕込まれています。
ちょっとした振動(空気に触れるだけレベルの振動)で音が出るような仕組みになっているんだそうです。で、蓋を開けると、音がなりますが、占めると、ぴたっと音がやみます。
というのも、茶筒は、すき間なくぴったりと閉まるようになっているので、ほとんど真空状態に近い状態を得ることができる、つまり空気の振動すらなくなるため、音がしないということなんだろうですよ。
それだけの茶筒を作るのも、やはり長年培われた職人技。

Kaikadoという、世界最古、1875年創業の京都の茶筒製造会社。茶筒は、ロンドンのビクトリア・アンド・アルバート博物館にも収められているとか。すごいなぁ。
ちなみに、蓋、するりと開きます。それでいて、きっちり閉まるんだから、やはり職人技はすごいなぁ、と心底感心しました。

長くなりましたが、こういう展示でした。
今後、これらプロトタイプをもとにして、何かが商品として世に出ることがあるのだとしたら、なんか楽しいですね。
パナソニックと言えども、こうやって、日々、何かを生み出そうと頑張っているということも、企業の力を見る感じで、頼もしい気がしました。頑張ってほしいです。

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  1. 2017/04/12(水) 05:40:51|
  2. ミラノ・フオリサローネ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

No title

金網細工は京都に有名な専門店のお店が在ります。
固定してすべては手編みなんですよ!

多くの人々に愛用されて居る金網細工は・・・・・・

湯豆腐の掬い網でしょうね?
小さい丸い掬い網は見た事があると思いますが、京都のこの老舗の物では無いと思います。

樽も知って居ます。
此処では日本酒の冷酒の飾りの様ですね?

此の方も関西在住の作家さんですね。

皆さん若手の伝統工芸士で有名な方たちですよ!
  1. 2017/04/12(水) 06:15:00 |
  2. URL |
  3. 古道具屋<山下亭> #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

素敵な企画ですね!
伝統の技術って、、、ビックリ、、、凄いですね!

ナイス・ポチ!
  1. 2017/04/12(水) 14:12:00 |
  2. URL |
  3. Atsuko #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> 古道具屋さん
もぉ~、どなたかと思いました~!
それにしても、さすがよくご存じですね。金網細工、確かに湯豆腐の掬い網とか作っている職人さんみたいですよ。
職人さんの技は、東西を問わず、素晴らしいものですね。改めて感心しました。京都に行かずして、ミラノで、こういものに接する機会を持てて、幸せでしたよ。
  1. 2017/04/13(木) 20:41:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> Atsukoさん
生活に余裕があれば、ほしいものばかりでした。まだ、商品化はしていませんが、ヨーロッパの金持ちには売れそうな気がします。パナソニックのような大手企業も、大小、いろいろな企画を温めているものですね。
伝統と、現代デザインと、そして、電磁気などの技術の融合で、この家具店サローネは面白くなる一方です。
  1. 2017/04/13(木) 20:44:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

おはよございます

日本の工芸も職人さんがこの人で終わりとか
もう居ないとか・・・この15年毎年のように聞きます

素晴らしい人の存在で、わくわくします。
  1. 2017/04/19(水) 00:29:00 |
  2. URL |
  3. poetryfish9 #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> poetryfish9さん
職人さんって、素晴らしいですよね。職人技というのは、失われてほしくないものの一つです。かといって、それを支えるために、作品を購入できるかというと、高価で難しいのが、困ったもんですが。
こういう企業とのコラボというのは、一つの活路かもしれません。
  1. 2017/04/20(木) 22:01:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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