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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ゴジラの小さいのまで、各地の技術をてんこ盛り?(プエンタ・ラ・レイナ1)

2015.07.スペインの旅、ナヴァラNavarra編、その18

地味な土地から脱して、いよいよ、ナヴァラ地方の有名ロマネスクに突撃です。
このあたりの有名どころは、以前一度訪ねているので、あまり新鮮味がないかな、とも思っていたのですが、とんでもなかったです。
なんせ、以前と言っても、すでに10年以上は前のことなので、ほとんど正確な記憶がないうえに、当時は、ロマネスクのために訪ねたというより、旅の途上で出会ってしまったというパターンだったので、気合も見学の手順も、まったく違うものだったんですよね。

というわけで、向かったのは、プエンタ・ラ・レイナPuente la Reinaです。


 

この立派な橋は、さすがによく覚えています。橋のたもとの、この緑の憩いの場所も。


 

私もあそこに腰かけて、休憩しながら、この後の旅のことを考えていたような気がするなぁ、と思いながら、巡礼の旅をしている様子のおじさんをぼっと眺めてしまいました。
そういえば、この町で、フランス発の複数の巡礼路が、交わるんだったような気がします。だから、巡礼の人たちが、常にたくさん。

そして、皆、この千年以上の歴史を持つ橋を渡って、先へ急ぐんですね。


 

さて、私が到着したのは、この橋とは正反対の側で、そして、到着と同時に、道の路肩に駐車することができました。すっごくラッキー。十数年前に訪ねた時は、まだ運転経験も未熟で、駐車場所を発見するカンみたいなものもなかったし、本当にあちこちで苦労したものです。

さて、最初に訪ねたのは、旧市街の外にあるこちら。


 

クルシフィホ教会Iglesia del Crucifijo(キリストの十字架教会、とでもいう意味になります)。
一瞬、見事にまったく記憶にないので、結構焦りましたが、旧市街の外にあるので、昔は来てないと思います。ほっ。いや、本当に忘れているだけ、という可能性はあるんですが。

ここでまず見るべきは、というか、ロマネスク的には、ほぼそこだけなのですが、扉口装飾となります。
旧市街の方から訪ねると、こういう構造になっています。


 

塔は17世紀のものですが、その側が教会で、向かい側はなんだかよくわかりませんが、つながっているのは、もちろん後代の構造物です。扉は、この渡し屋根みたいな場所の下にあります。


 

文化財としての扉装飾を守ろうということではなくて、ここ、ずっと現役教会であるようなので、扉口前に屋根があると便利、的な発想で、こういう構造が作られたのではないか、とにらんでいます。
さて、扉口。


 

溶けちゃってます!
で、相当再建が混じっています。


 

柱の表面にまで装飾文様を彫りだすなんて、とても高度で根気のいる仕事がされているのに、これほど溶けちゃうと、残念です。
でも、これだけ傷むということは、やはり屋根はずいぶん近代になって以降のものなんでしょうね。
相当白いので、修復やお掃除もかなり最近実施されたのでしょう。


 

とっても素敵なモチーフ。再建なのかどうかわかりませんですが、そうだとしても、もちろんオリジナルのテーマに忠実なものと思います。

アーキボルトに並ぶ彫り物も、とっても面白くてチャーミング。


 

これ、ちょっと洗いすぎじゃないですかね?ちょっと汚れがあって、陰影が出た方が、雰囲気もあるし、見やすいような気がしますが、ここまで真っ白にされちゃうと、かえって彫りがわかりにくいです。


 

かなり細かい彫です。爪を立ててアーチをつかんでいるライオン系の獣の足は、かすかにカベスタニーが入っているような雰囲気があったり、毛並みや鳥の羽根の細かさなどは、シロスの石工を髣髴としたり。12世紀後半だから、各地の技術が見られてもおかしくないように思います。
ビザンチンの影響もあると、説明版にはありました。その装飾の細かさやモチーフの内容から、明らかに、と。

それにしても、左端のキメラ風の動物、いや、ゴジラの小型ともいえるような頭部なんですが、黒目が入っているのが、驚きです。お尻の方には、彩色の名残のような様子も見られますね。


 

この、人物フィギュアの細かさも、また脅威です。


 

動物専門石工さんと、人物石工さんは、違う気がしますね。タッチも、表現する方向性も、違います。
その中で、植物モチーフは、結構王道的な内容だと思いました。


 

柱への彫りこみも含め、植物系幾何学系のデザインはすごいし、王道石工さんのレベルは高かったような気がします。

裏は、畑になっているので、私有地のような気もしたのですが、一応後陣もチェックして、一つだけ、目に留まったのが、この軒持ち送り君。


 

内部は、二身廊という変則です。


 

薄暗くて、雰囲気はありますが、ほぼ新しい様子がわかり、興ざめです。仕方ないですね。

もう一回、扉口をなめるように眺めて、辞去。


 

うーん、やっぱり洗いすぎだと思います。あと10年くらいしてから行くと、いい感じに薄汚れているかもね。笑。

もう一つの、もっとおなじみの教会へ移動します。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
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  1. 2017/05/18(木) 06:10:05|
  2. ナヴァッラ・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

No title

すごく素敵な橋に彫り物ですね。
私いつも思うのですが「ライオン」がライオンに見えない…(; ̄ェ ̄)。なんか未確認生物みたいに見えるんですけど、あれがよくライオンだと判断できると考古学者を尊敬して笑われました(≧∇≦)。
石工さんの名前はどこの建物も基本分からないのでしょうか。
素晴らしい作品ですね。白いのは残念でした。
これを掘るのにどのくらい時間をかけたのかなあ。人間の技術って素晴らしいですね。
  1. 2017/05/17(水) 22:55:00 |
  2. URL |
  3. まーたん #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> まーたんさん
ライオンは、バリエがすごくて、なかなかわかりにくいですわ。石工さんの想像力や癖や、いろいろありますからね。石工さんは、ほとんどわかりません。時々、工房の棟梁の名前がわかっている作品はありますけれど、少数派です。村の石工さんなんかは、無名の人が無名のまま仕事をしていたと思いますし。
でも、そんな感じの仕事に、結構好きなものがあります。
  1. 2017/05/21(日) 18:27:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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