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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

みっちりぎっしりフィギュアとすごむ牛(ル・ピュイ・アン・ヴレその6)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その6




ル・ピュイ・アン・ヴレLe Puy en Velayの、とんでもない場所に建っている礼拝堂サン・ミッシェル・デギユChapelle Saint Michel d'Aguilhe、続きです。
前回は、興奮しつつ、内部をご案内しましたが、外側も。

上の写真を見ても、このロケーションの特異さがよくわかりますよね。
こんな場所に、小さいとはいえこれほどの建築をしてしまう、信仰の力、恐るべしです。

外側の装飾は、やはりファサード部分となります。




こてこてだけどかわいいのは、小さいからかと思いましたが、それもあるとはいえ、この、一部激しく装飾的な割には、この一部を除くと、あとは灰色の切り石積み、という地味さが、嫌味を消しているんですね、多分。同じような装飾が、外壁前部にあったとしたら、やはり、好きになれないような気がします。

それにしても、愛らしいのは、この、クローバー型のおかげもありそう。




そして、どの隙間も、みっちりと彫り物が詰め込まれていて、一所懸命見てしまう。

クローバーの左側。




そして右側。同じ構図ですね。マギかと思いましたが、両方あるので違いますね。




真ん中には子羊がいます。両脇にいるのは、福音書家でしょうか。




子羊の背景には、素敵なパステルグリーンが残っているので、全体、彩色されていた可能性が考えられます。過酷な坂を上ってきて、出会うというシチュエーションだけでも、天上のイメージにピッタリな上に、キラキラとしたファサードが待っているわけですから、往時訪ねた人々は、恍惚としたのではなかろうか、と想像します。

それにしても、これだけぎっしりなのですから、人魚の上の、今は漆喰塗りつぶし状態の部分も、本来は何か彫り物があったと考える方が自然ですよね。どこかに持ち去られてしまったのでしょうか。




オリジナルでは、何が彫られていたのでしょうか。アーモンドのキリスト?
しかし、神の子羊の真下で、誘惑のシンボルであるはずの人魚が、それも二人も、お風呂中(?)という構図も、大変不思議です。

最上部には、人物フィギュアがずらり。




いつだって、わかりやすい鍵番のピエトロさんには、どうしても親近感を覚えてしまいます。このピエトロさんは、なんとなくイメージにしっくりするお顔をしています。
その左にいるのは、大天使ミカエルみたいですね。
ここでも彩色のあとが、わずかに残っています。




割と普通の人っぽいキリスト像は、手の大きさが半端ないです。そして、すでにして胸像状態というのが、珍しい表現に感じます。
背景のアーチの赤、相当鮮やかにぬられていたのでしょうね。

もう一回クローバー部分、全体を見ると、気になる穴があります。




装飾も施されているし、後付けで開けられたようにも見えないのですが、シンメトリーの真ん中でもなく、微妙にずれた位置にあるので、不思議なんです。
春分に、ここからの光が、内部のどこかを照らすとか、そういう目的があったりするのか、単に明り取りなのか。

再びプランを取り出して、この穴の場所を考えて見ました。以下で、赤で印をつけた場所が、穴になると思います。




今は、10世紀の部分の、上の図で言えば、右側が祭壇となっていますが、もしかして、その上部がオリジナルの祭壇とすると、この穴からの光が、祭壇に届く可能性大かも。

現場では、そんなことまで考えもしなかったんですが、今年の春訪ねたプーリアの洞窟教会で、そういった穴を見たことから、今更、思いを馳せる次第です。現場で気付いたら、もうちょっと検証できたのに、残念です。
色々と忘却も激しいですが、多くの異なる場所を回ることで手に入る注目ポイント、というのはあるかもしれないですね。

でも、今撮影した写真を見ていると、どうやら、前回の記事で紹介した、ステンドグラスのはまった丸い穴が、これなのかもしれません。とすると、どうやっても祭壇には届きそうにない。単なる明り取りかな。

あ、ファサードでは、これも特異。




何でしょうか、このリアルティ。怖いよ。完全にすごんでますよね。牛のくせに。
この妙な史実性、他の彫り物に比べると、唐突感、ぬぐえません。

去りがたい場所でしたが、いつまでもいるわけにもいきません。
一段下がった場所をぐるりと回って、意外とつまらない後陣側もしっかりと見て。




転げ落ちそうな階段を、慎重に降りました。




私が見学を終えたころから、登ってくる人が増えて、狭い階段を譲り合い。前夜同宿だったフランス人とも再会してしまいました。やっぱり一番に来て正解でした。

そろそろ次の町に移動したいところですが、もうちょっと続きます。ル・ピュイ、盛りだくさんだったなぁ、と今更驚いています。

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  1. 2017/09/07(木) 05:54:27|
  2. オーベルニュ 03-63-15-43
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

No title

どうやって建てたのか?こういうのを見たのがはじめてでしたから、心底 驚きました。まだフィルムカメラの時代で、カメラも技術もなく枚数にも制限があっていい写真がないのです。毎朝くいいるように貴blog拝見してます。ここへの階段当時は走るようにかけあがれたのですよ!正面からの写真がとりにくくて少し斜めしかありません。グリーンマンが面白いとおもっていました。盃らしきものを持った人物が左右4人ずつ。冠も竪琴もありませんが黙示録の24長老を8人だけ描いたのかな?という気がしました。再訪したいけれど、あの階段もうのぼれないかもしれません。当時もバスで待っていた方がいらっしゃいましたから。
  1. 2017/09/07(木) 00:54:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> ykさん
これに対面する驚き、喜びは、すごいものがありますよね。こういう印象的な場所に出会うと、まだ出会っていない人がうらやましくなります。再訪がかなうとしても、二度目は、やっぱり二度目ですもんね。
この人物、私も黙示録かと思いました。とすると、もしかして、今はのっぺらぼうの部分に、続きがあるのかも、とか。
そういう余白を残しているところも、憎いですよね~!
  1. 2017/09/07(木) 21:40:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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