久しぶりにロング・ドライブをしたくて、パルマの南にあるターロ川周辺のロマネスクを回ってきました。教会そのものは、後代に結構手が入っていて、様式も変わっていたりするようですが、ポルタイユの装飾とか、柱頭にある、いかにもロマネスクの彫刻が、前から気になっていたのです。
朝一番にミラノを出て、Fornovo di Taro、Collecchio、Vicofertile、San Pancrazioと、なんと四つもの教会を回ってしまいました。どこも、全体としては今ひとつなのですが、気になっていた彫刻などのディテールが、大変すばらしいものでした。特に印象深いのは、Vicofertile。超有名な洗礼盤、そしてかわいらしい数々の柱頭。建物も、特に内部は、古い状態で残されていて、とても感じのよいものでした。それにしてもロケーションが、逆説的に印象的だったのです。
コッレッキオから来て、Vicofertileの標識があった途端、目の前の四つ角のかどっこにあるのです。外見は、ゴシック風になっていますし、これ?こんな簡単に見つかっちゃっていいの?いや、違うだろう。でも町の中心部はどこなんだろう?って感じで逡巡しつつ、教会に近寄ると、まさに探していたものでした。パルマとかエミリア街道に通じる道の交差点ですから、車は行きかうものの、歩いている人はいないし、これが町の中心なの?という感じの場所です。
それに、教会も、開いている気配もないのです。そっと扉を押してみたら、あいていたんですけど。しかし、いざ中に入ると、別世界。いきなり山奥のロマネスク教会にトリップです。
コッレッキオでは、ちょうどミサの時間にあたってしまい、30分以上、お相伴(?)する羽目になりました。久しぶりに教会のミサに触れました。やっぱり肌に合わないな、と。しかし驚いたのは、高校生くらいの若者もいっぱい参加していたこと。やはり田舎は違います。教会が、ミーティング・ポイントなんですよね。日曜日、じゃぁ、ミサのあと、バールに行こうぜ、とかそういうノリを感じました。
ずっといてしまったので、仕方なく献金もして、隣人と仲良く、というお約束のシーンでは、周りから差し出された手を拒むわけにも行かず…。ロマネスク行脚も、容易ではないな、と思った瞬間でした。がんばってミサに付き合ったおかげで、そのあと、柱頭にある二股人魚を拝むことができましたけど、でもミサが終わると、あっという間に灯りが落とされるので、残念ながら、写真のできは今ひとつでした。
Fornovoでは、夏祭りのようで、祭りの準備で町中が浮かれている感じでした。中世の衣装(派手なタイツなど)を身に着けているおにいちゃんたちがうろうろしていたので、何か行事もあったのでしょうが、わたしは先を急ぐ旅だったので、何も見ずに町をあとにしました。
サン・パンクラツィオは、街道沿いにある、外観のほとんどはすでにロマネスクの匂いを残していない大変醜い教会です。本当に、哀しいくらい醜くて、ひるみました。でも、プレロマネスクの時代のものとされるフレスコ画がほんのちょっと残っていて、それがとてもかわいらしくて、それをみられただけでも、しまる時間ぎりぎりでしたけど、無理やりいってみてよかったです。本当にかわいらしいんですから。
そういえば、普通ロマネスクの教会がある町って、町そのものが、美術品のようにかわいらしいところが多いのですが、今回訊ねた土地は、本当にどこも、何もないただの田舎町でした。
Author:Notaromanica
ミラノ在住で、ロマネスクが大好きで、主にイタリア、フランス、スペインを回っています。