ロンゴバルド・フューチャーのパヴィア散歩、その5
前回訪ねたサン・ジョバンニ・ドムナルムから、今度はかなり近い場所にある大学施設に向かいました。パヴィアの大学は、古い歴史を誇っており、一部専門課程のレベルはかなり高いようで、ミラノで働くこの大学出身者も多いのです。
何があるかというと、この入り口がそうなんですが、なんと、今、勉強室となっている場所に、ロンゴバルドのクリプタが隠されているのです。
といっても、上の写真でもわかるように、もともと修道院だったところが、大学に転用されているので、イタリアのように歴史が集積している土地では、さほど驚くべきことでもないんですけどね。
修道院の施設というのは、使いやすいんでしょうかね。そういえば、ミラノ大学も、修道院の建物を活用していますね。
そう考えると、石の文化というのは、ある意味効率が良かったりもするのかな。数百年前の建物を、現代に転用できちゃうんだから。でも、当然、老朽化していますから、不具合も多いとは思いますけれども、でも、無駄がないよね。
もちろん、地震が少ないから可能なことではありますが。
でも、入場してびっくり。
サン・フェリーチェ教会跡Chiesa di San Felice。
そのまんま、学習室。自分がどういうものを見に来ているのか、わかっていないので、この眺めには、戸惑いました。
そして、いきなり、目の前に穴が開いているので、びっくりしました。
ちょうど、一階分地下、というレベルに、このようにぼこぼこと、ロンゴバルド時代の石棺がむき出しに展示してあります。
ここは、「女王の修道院」と呼ばれる8世紀に創建された修道院があった場所だそうです。ロンゴバルド最後の王デジデリオの妻、つまり女王アンサによる修道院。
その後、ロマネスクに当たる時代に、栄えたようなのですが、名残は、トップの写真にある、もともと教会の南壁だった部分のみ。そこさえ、勿論後代の修復がしっかりと施されているため、古び感は、まったくありませんけれど。
あ、一つ見つけました。
内部の壁の一部に、この柱だけ、ポツンと。
この高さは何だろう。この低さから、ヴォルトが出ていたのかしら。とすると、まるでクリプタのように背が低い建物になりますね。
さて、最初に目についた、石棺の観察に戻ります。
パッと見、とっても地味で、え、これだけ?とがっかりしたのですが、よく見ると、何とも興味深い絵が、石棺の中に見えるのです。
右の石棺の奥、わかりますでしょうか。素敵にロンゴバルド的な装飾的十字架。
アップにしてみます。
オリジナルは、きっとかなり鮮やかな色だったのではないでしょうか。
女王が創建しただけあって、ここは、女子修道院だったようなのですが、その修道院長であったアリペルガという女性の墓だそうです。アリペルガ、またまた名前萌えしちゃいそうな響。
なんと発見されたのは、1996年と、かなり最近なんですね。それまでは、学生さんたちの机の下で、ずっと千年以上、閉ざされていたんですね。ふぅ。
石棺ですから、勿論埋葬されていた骨も見つかっています。この十字架は、足元の方で東向きだそうです朝日に足を向けているのか。ふーん。
頭の方には、オークルの縁取りで背景がエジプト・ブルーの円の中に、手が描かれています。これは、祝福する神の手。
そして脇には、何とも不思議な、まるで落書きのようなごちゃごちゃした絵があります。
福音書や福音書家の名前の碑文が描かれています。
細かいところはわからないのですが、マルコとかマッテオとかは、私でもわかりました。
色がすごくきれいで、モチーフも面白いんですが、いかんせん見にくい!
上から見下ろしているのですが、石棺のフォルムが、上部がちょっと狭まっているので、逆斜めって感じで、相当ひしゃげた感じでしか見えないし、一部は見えないし、比較的最近、見学用に作るなら、もうちょっと何とかできなかったかね?と、若干逆切れの気分になりました。少しでも視線を下げて、石棺を覗き込むように見たり、撮影するために、ほぼ、腹ばい状態にはいつくばってしまいましたよ。
あちこちに散らばって描かれている花の絵が、この春にプーリアの洞窟教会で見た、花の絵と、雰囲気が似ていて、あれ?と思いました。あっちはビザンチン起源なので、直接的な文化的共通項はないはずですが、そこここに、素朴な赤い花が咲き乱れていた風景は共通するのかもね~。
さて、この教会には、もう一つ見るべきものが。
といって、全然わかっていなかったのですが、クリプタとうたっているからには、石棺を上から眺めるだけ、ということはなかろう、とは思っていたのです。そしたら、隅っこの方に、下に降りる階段、ありました。
こちらこそ、クリプタですね。何があるんだろう、とワクワクでおりました。
まさかの石棺!それも、超立派な巨大棺、三個並べ!
説明を読んだら、石棺ではなく、聖遺物入れだと。なるほど。現場では、石棺と思い込んでいたものの、どうも、構造が不思議で、悩みながら、細部を確認していたんです。
この扉が、どうにも不思議で。だって、棺を中に入れるにしては、小さすぎだし、のぞくと、内部にも、箱が組み込まれている様子が見えるんですよ。だから、そもそも、この扉の意味は、分からないな。中のものが、出し入れできるような、秘密のからくりでもない限りは。
それにしても、立派。これは、カロリング時代のもので、大理石製なんだそうです。表面に、いろいろな形が逆エンボスになっているんだけど、ここには、色エナメルや、金銀宝石が、はめ込まれて、燦然と光り輝くものだったようです。そうだと思ったよ~!
このクリプタ、この、聖遺物入れにピッタリな大きさになっているので、こちらが先にありき、という場所のように思われます。誰の聖遺物が入っていたのかね。これだけの大きさに、髪の毛だけとか、指一本とかは許されない気がするので、なんか、すごいもんが納められいたんだろうね。
いやはや、面白かった。
ここで学習する学生さんたちは、たまには、ほぉ、とか思ったりするのかな。クリプタは、いつも開いているとは思えないから、まったく知らない人もいるんだろうな。
なんかすごいことですよね。千年以上前の墓の上で、ITの勉強とかしちゃってたりするっていうのは、なんかすごい。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2017/09/26(火) 04:45:47|
- ロンバルディア・ロマネスク
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| コメント:4
山下さんのお好きな古代遺跡に比べると、ずいぶんと新しいものとなりますが、でも、雰囲気が良いですよね。それに、大学の施設として現役の場所にあるというギャップも、イタリアらしくて、面白いかも。
- 2017/09/27(水) 21:44:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> Atsukoさん
パヴィアは、ミラノから1時間程度の距離なので、スイスからも、割と気軽に訪問できる位置だと思います。
いつか是非。
- 2017/10/03(火) 22:27:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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