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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

家の中で大雨、あこがれのグルジア

ベネチア・ビエンナーレ・アルテ2017 その12

アルセナーレ会場Arsenaleの見学、続きです。
この会場は、本当に長くて、どこまでも尽きない感じ。その上、年々、展示スペースが拡大しています。狭いベネチア本島ですが、この辺りは、かなりの敷地が、もともと軍関係の造船設備に使われていたせいだと思うのですが、おそらく、結構余裕があるんですね。廃墟化した建物を再利用していますが、私がコンスタントに通うようになったこの10年ほどの間にも、廃屋が次々と展示会場に模様替えされています。




多分、Square by Liu Jianhua(中国、1962年生)
一見、ちょっと目が惹かれる大型の作品ですが、あまり面白みは感じなかったのです。
これよりも、その先にあった、やはり四角い作品の方に、大いに興味をそそられました。




WeltenLinie (One in a Time) by Alicja Kwade(ポーランド―ベルリン、1979生)

これは、何とも面白かった。パッと見あると、ただ、家の基礎みたいな、メタルの骨組みがあるだけなんだけど、近づいた時、向こう側に、あるはずのない扉があり、え?また、新しいスペースができたの?とそちらに向かったところで、ふっと消えたんです。

多分こういう感じだった。




奥の方に、扉があると思うじゃないですか。
実はこれ、骨組みの一部は、実際に骨組みだけなんだけど、ところどころに鏡がはまっている構造なんです。でも、一見しただけでは絶対にわからないの。
あ、ちなみに、上の写真には、私が写ってます~!

実にうまく展示会場を利用した作品で、これは感心しました。骨組みの間をうろうろしても、にわかには素通しなのか、鏡面入りなのかわからず、骨組みを通り抜けるのに、ドキドキしちゃいました。見ていると、多くの見学者が、仕組みに気付いて、控えめに、あ!って驚いている様子なのが、面白かったですね。

実は、この辺りで12時回っています。
9時半過ぎにホテルを出てから、ひたすら歩いていますので、そろそろ疲れも出てきたところで、これは目が覚めるような作品でした。

次のスペースも、おお!でした。




Werken by Bernardo Oyarzun
チリ・パヴィリオンChile Pavilion

奇をてらった作品ではないのですが、見せ方がうまいです。様々な仮面が、ただ並んでいるだけで、醸し出す空気があり、それをうまくとらえたな、というのかな。




見せ方が、作品そのものを生かしも殺しもする、そういう会場でもあるのだろうな、と思います。だから、作品に加えて、どう展示するのか、どう見せるのか、というところに、キュレーターの腕が問われるのかも。作家自身の腕もですけれど。

いくつかつまらない展示を通過して、これも、よかったですね~!




Georgia Pavilion
Living Dog among Dead Lions by Vajiko Chachkhiani

グルジア…!
昔、グルジアの映画を見て以来、グルジアという国にはあこがれているのですが、行ったことはありません。グルジア・アートの作品を見るのも、初めてかも。
奇しくも、まるで映画のような作品でした。

いきなり木造の古い古い家です。かなり高くなっていて、身長160センチの私では、地面のレベルからは中がほとんど見えません。表玄関には、階段があり、そこを上ると、窓から中を見ることができます。上の写真で、赤パンツのおやじがいるところです。

で、中がどうなっているかというと、水浸しなんです。家の中で雨が降っている状態。でも、表側からは、ほんの少ししか見えないんです。家は、明らかに奥の方にまでちゃんと構造物があるのに。
ぐるりと回って、反対側に行くと、こちらは、表の、ちゃんとした階段とは全く違って、近所のいたずら小僧が、のぞき見用に置いた、というような様子のブロックが置いてありました。いたずら小僧、または出歯亀がやったわけはありませんから、やはりこれも演出なんでしょうね。よっこらしょ、とぐらぐらするブロックに乗ったら、カーテンの隙間から、ちゃんと中が見えるようになっていました。




生活用品そのままで、ひたすらびしょぬれ。
すっごくストーリー性を感じます。灯りの様子もぴったり。そしてノスタルジーなアメリカンな空気。ただれた、やるせない空気。
こういう壮大な無駄的な作品は、いいね。なかなか見ることができない規模だけに、ビエンナーレに来た甲斐を感じます。

さて、この辺は、アルセナーレ会場も、かなり奥まってきているので、見学者の数も、かなり減るのです。ここでも、裏側のブロックを発見したときは、一人でした。いい感じです。

奥まった会場の最後には、ニュージーランド館もありました。




New Zealand Pavilion
Emissaries by Lisa Reihana

超横長のスクリーンに、一瞬期待しましたが、グルジアの強烈な作品の後では、お国紹介的なスクリーンの内容に、引けました。これは、万博とかにお国紹介で置くならいいけど、アートのくくりでは、きついな。

で、やっと突端の港に出たところ。




Pars pro Toto by Aljcia Kwade

これも、先ほどのメタル骨組みの作家Aljcia Kwadeさんの作品。本物の石を使った、惑星っぽいオブジェが並んでいます。もしかして太陽系なのかなぁ。この人の作品、好きみたいです。
日によって、ここでパフォーマンスもあったようです。

その先に、すでに記事にした日本チームによる家型筏。




The Play have a House – Arsenale Zig Zag

ベネチアの海でも、流れてみたようで、この家の中に、流れているときの映像が流されていました。能天気な内装の船内で、小さな椅子に腰かけて、ちょっとだけ映像を見ましたけれど、揺れる筏で、「あ~!ぶつかるぶつかる!」とか、至近距離の大騒ぎ映像で、なんだかなぁ、という感じではありました。




アルセナーレ、深奥のドッグ。とても好きな場所。今回は久しぶりに、ドッグにも展示があるということで、楽しみしていました。かなり昔にここで見た展示、素敵なのがあったのですが、最近は使われてなかったので。




でも、超わかりにくい。




Law of Situation by Kishio Suga

なんと、Kishio Sugaさんの作品だったのですね。去年、我が家の近所で、イタリア初という個展が開催されていて、初めて作品にお目にかかった作家さんです。
でもこれは、どう見ても、わかりにくい、というより、見えにくくて、もうちょっと岸に寄せるとか、なんかできなかったのかなぁ。横からでも、正面からでも、建物の壁が水に映るのもあり、作品が見えにくいので、どう判断してよいのやら、というところでした。




これが、正しいあり方なんでしょうけれど、ちょっと物足りない…。

さて、日帰りのいつもなら、そろそろ帰りの列車の時間も気になりだす場所ですが、今回は、一泊だったために、朝からアルセナーレに来られて、まだまだ時間に余裕があります。
だから、いつもなら、相当端折り気味になるこの辺りも、ゆっくりじっくりと見ることができるのは、嬉しかったです。

で、確か前回あたりから始まった、対岸の会場にも、足を延ばせることとなりました。




ドッグの脇にイタリア館がありますが、そちらは後回しにして、対岸への船着き場へ。新しい会場、ワクワクです。

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  1. 2017/10/19(木) 05:51:17|
  2. ヴェネチア・ビエンナーレ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

No title

紹介のしかたが面白くて
「貴女の好みがやはりわたしも同感」ってなります!
次回の日本の部分のキュレータに立候補してください!
って、、、そういうことの募集とかありません?
イタリア在住のこの展示会に詳しい人をって
私が主催者だったら募集しますけれど、、、

ナイス・ポチ!
  1. 2017/10/18(水) 22:08:00 |
  2. URL |
  3. Atsuko #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> Atsukoさん
おほめいただき(で、いいのかな)、ありがとうございます。自分の感じた勝手なことを勝手に書くのって、楽しいもんですね~。ブログって、いろんな意味でカタルシス、笑。
現代美術はわけわからないから嫌い、と思っている人が、ちょっとでも面白いと思ってくれないかなぁ、と思っているんですが、現代美術嫌いの人は、そもそもこんな記事、読まないですね?てへ。
  1. 2017/10/19(木) 22:09:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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