ベネチア・ビエンナーレ・アルテ2017 その16
アルセナーレ会場Arsenaleの見学、続きです。
本会場脇にある別館、思いの外、充実したスペースとなっています。
Turkey Pavilion
Cin by Cevdet Erek
でも、大規模だから面白いか、というと、そういうことはないんですよね。これは、バスケットボールのコートのような感じで、町角にこういう施設がありそうな雰囲気なんだけど、なんか周囲を歩くんです。
奥にある階段の先に並んでいるのは、フラットな形のスピーカーで、耳を近づけると、かすかに、いろんな音、雑音的な音が聞こえてきます。でも、だからなに?の典型かもね。
そんなものより、こんな小品の方が、ずっと楽しかったりします。
Peru Pavilion
Land of Tomorrow by Juan Javier Salazar
ここは、大変地味な作品ばかりでしたが、でも、好みでした。
今更、絵画作品って、陳腐で面白みがないって、特にビエンナーレの会場では、いつも思ってしまうのですが、時として、あ、絵もいいよな、と思うときがあります。この人の絵は、そういう絵でした。
これが欲しいか、家に飾りたいか、というと、違うんですけれど、何か感じさせるものがあるというのか、目が引き寄せられるものがあるっていうのか、そういう感じ。
こちらは、ちょっと面白かった作品。
Republic of Macedonia Pavilion
Red Carnival by Tome Adzievski
パヴィリオンと言っても、スペースのほんの一角を使った小さなものです。その上、マケドニア共和国なんて言っても、日本人にはピンとこないかもしれませんね。
イタリアに住みだした頃、お隣のバルカン半島では大騒ぎがあり、結果としてユーゴスラヴィアが崩壊し、もともとばらばらの国が、ばらばらに戻ったわけですが、その一つがマケドニア。
ミラノに来る前に、イタリア語を学んでいたペルージャでは、スロベニアの人も、クロアチアの人も、マケドニアの人もセルビアの人もいたのですが、ここにいれば、いがみ合うこともないけれど、でも、国に帰れば、どうしてもなじめない、理解しあえない気持ちになると言っていたクロアチア人の友人がいました。無理やり、ユーゴという国に統一されたものの、結局、文化も教育も統合され交わることもなく、人々はばらばらのまま、生活していたということなんでしょうね。
昨今、スペインでカタルーニャが大騒ぎしていますが、ことほど左様に、ヨーロッパの民族問題とは、難しく複雑で、島国の日本では、いろいろな意味で分かりにくいものだと、改めて思いました。
あ、話それましたが、これは、そういうこととは、関係なくて。いや、関係ないのかどうか、わかりませんが、この車は、ジェームス・ボンドのボンド・カーです。
ね。
脇に立っている見学者の視線の先には、ビデオ作品があります。
車の周りに若者が押し寄せて、みんなしてポスターをべたべた貼っていく、というパフォーマンスをするビデオ。その結果が、この車、という作品です。
べたべた貼られているポスターが、映画のものだったり、政治的スローガンみたいなものだったりするところに、意図が隠されているというとこでしょうか。
Mexico Pavilion
The Life in the Folds by Carlos Amorales
これは、最初、この、テーブルにずらずら並べられた不規則な形の物体が何だかわからなくて、???だったんですが、コンセプトが面白かったです。
多分、この形一つ一つが伝達手段となっていて、音符にもなれば、文字にもなるっていうようなことなのではないか、と思います。
流れているビデオのキャプションも、これで書かれているし、新聞状の冊子が積まれていたのでもらってきましたが、文も絵も、すべてこの記号的なもので、表されていて、面白いんです。私の好きな、かなり壮大な無駄な作品に近いですね。
ただ、展示が地味なのと、訴えるインパクトが小さくて、評価はいまひとつかな。
さて、やっとここまで来ました。
この他に、いくつか、見学したものの、記事からは省いた展示もあります。それにしても、宿泊しただけあって、いつもの日帰りからは想像もつかないくらいにゆっくりじっくり見ることができ、満足です。
実は、二日目は、アルセナーレだけでは、絶対に時間が余るので、久しぶりに、グッゲンハイムや、プンタ・デッラ・ドガーナに立ち寄ってもいいな、と考えていたのですが、結局アルセナーレの見学は、10時過ぎから、20分強ランチ時間を割いた以外は、ずっと見学し続けて、終了は、15時ちょっと前。驚きました。
帰りに汽車の時間の関係で、16時過ぎには、ホテルに荷物を取りに戻りたかったので、他の美術館に立ち寄る時間は無くなりました。
ぶらぶらと歩きながら、ホテルに向かう途中で、気付いた展示会場。
Fondazione Lous Vuitton – Espace Louis Vuitton Venezia
Pierre Huyghe
この道は、何度か行き来したものの、この手前の赤い看板しか見えていませんでした。よく見ると、その後ろに、地味な白い看板が出ていたんですね。なんと、ルイ・ヴィトンの展示スペースも、ビエンナーレに協賛していました。
いつもは、駅とジャルディーニを結ぶコースを歩くだけなので、いつから、ルイ・ヴィトンが参加しているのか、まったく知らないのですが、考えたら、彼らは、パリに財団経営の、素晴らしい現代美術館を持っていますね。フランク・ゲイリー設計の美術館は、いつか絶対訪ねてみたい場所です。そんなブランドが、参加してないわけもないですよね。
イタリアのブランドで、最も美術にお金を使っているのは、プラダだと思っていますが(ミラノ市内に美術館を二つ、ベネチアにも一つ持っています)、ルイ・ヴィトンはそのフランス版になるのかな。逆か。
というわけで、立ち寄ってみることに。
展示スペースは、勿論店舗のあるビル。看板の建てられた角から裏道に入ります。華やかなショーウィンドウのある表通りから、一歩入っただけですが、こんな小路で、あまりの落差にびっくりしますよね。これがベネチアの不思議なところ。
鉄道駅から、リアルト橋やサン・マルコ広場へ向かう道は、人一人歩くのがやっと、というような小路も含めて常に大混雑で、歩くのも大変なのに、そういう幹線から一歩外れると、人っ子一人いない小路や広場に出会うことができるんです。どんな時でも。
だから、いつか、ベネチアに滞在して、時間に追われずに、さまよってみたいと、いつも思っています。
おっと、すぐ話がそれます。
展示会場は、この小路にある、ヴィトンの会社ビルの最上階にありました。受付もいない入り口を勝手に入り、エレベーターで会場まで。
広いオープンスペースで、ビデオを流しているだけの作品でした。南極だか北極だかのペンギン風景。ペンがいるのは南極ですかね。
椅子も何もないスペースで、数人が床に座り込んで、ぼーっと見ていました。疲れていたら、ちょうどいいよね。場所も超繁華街で、お休みどころ。笑。
もう一つも、同じような作品だったと思います。ほとんど通り過ぎただけで、出てしまいました。私の苦手とするビデオだったし、面白さも見いだせず、また、ゆっくり過ごす時間もなかったことですし。
会場を出るには、自動的に店の方の階段を降りることになり、めったに入ることのない、というより、ベネチアでこんなお店、入ったことも入ろうと思ったこともない高級仕様かつ現代アート仕様の内装に、目を奪われました。
ビエンナーレ組と、本来のヴィトンのお客様と、客層が、あまりにも分かれているのが、結構面白かったです。お店が偉いと思ったのは、ビエンナーレ組に対しても、大変丁寧で、にっこり笑顔の店員さんばかりだったことです。勘違いする店員さんもいっぱいいますからね。
ちなみに、フライヤーも、とても素敵でした。
もうちょっとだけ、続きます。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2017/10/26(木) 05:49:05|
- ヴェネチア・ビエンナーレ
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