ロンゴバルド・フューチャーのパヴィア散歩、その9
パヴィアに来たら、絶対に訪ねるべき教会は、前回までに記事にしたサン・ミケーレBasilica di San Micheleに加えて、もう一つ。
サン・ピエトロ・イン・チエルドーロ教会Basilica di San Pietro in Ciel d'oroです。 黄金の空に浮かぶサンピエトロ教会、という、とても詩的で美しい名前を持つ教会です。 ここもまた、起源の古い教会で、この教会にあった装飾的な彫り物の多くが、今は、市営博物館に保管されています。もちろん、ファサードの彫り物など、外せないものは、ちゃんと現場に残されています。
ファサードは、レンガを使っている点を別にすれば、構造的には、サン・ミケーレと同じスタイルとなっています。だまし回廊と、たくさん開けられた開口部、そして、三身廊を反映しない、連続山型など。
扉周りの彫り物満載状態も、サン・ミケーレと同じ傾向です。そして、同じようなモチーフが見られます。 同じ町にある同時代の教会では、同じモチーフが使われているケースが、結構あるように思います。
でも、モチーフは似ていても、やはり手は違うように思われますので、石工さんは違う人と考えられますね。時代がずれている可能性もあります。真似なのか、同じ町だから、同じように、という統一感を優先したのか。 発注者は、それぞれ違うと思いますので、発注者の感覚としては、やはり他と同じ彫り物は避けたいと思うのですが、どうなんでしょうか。
なんとなくですが、サン・ミケーレよりは、時代が下るのではないか、というゴシック臭を感じるので、もしかすると、製作年に相当の差があるのかも。とすると、単純に懐古的な感じで、トレースしたのかな。
ここも、側柱の浮彫は、かなり行っちゃってます。
溶けてるっていうのが、ピッタリですね。組紐モチーフが、溶けて土台との段差もわずかで、穴がぽつぽつ、みたいな。でも、モチーフが古いので、やはりロンゴバルド起源の彫り物のようです。
ここでうれしいのは、アーキボルトの彫り物が、よく残っていること。
石が違うのでしょうか、蔓の中の動物たちも、生き生きと元気です。
動物フィギュアの連続ガジガジは、大好きなモチーフです。ガジガジしてますよ~。 そして、実に様々なフィギュアが、取り込まれていて、宝探しの楽しみがありますね。もしかするとサムソンかもしれないけど、金太郎的な子とか、どう見てもETだろう、という子とか。
柱頭の彫り物より、ここの部分の方が、石工さんの遊び心満載という感じで、楽しいです。
内部に入ると、全体の雰囲気は、かなり新しくすっきり、明るくて、ちょっとロマネスク臭が薄いです(実際は、もうちょっと薄暗いですが、撮影すると、変わりますね)。
サン・ミケーレに比べると、天上も低く、小ぶりです。 でも、柱頭の面白さは、こちらもなかなかです。
ケンタウロスがいて、グリフォンが他の動物をガジガジしています。
こちらは悪魔くんかな。それにしても、ほんのわずかな余白も無駄にしないこの石工さんの表現力と技術、なかなかです。 こちらも、ガジガジ系。
まるでバラのような植物モチーフの連続技も、なんだかすごいです。かなり粘着質な石工さんかも。
いろんなモチーフ全体が、あとの時代のものになってしまっている内陣部分ですが、こんなもんもありました。
ほんの小さなサイズのモザイクですが、これがあるということは、この教会でも、かつてはサン・ミケーレ同様、内陣部分はモザイクで覆われていたのではないでしょうか。 右後陣に、その証拠ともいえるモザイクがあります。
保存状態はよくない上、かなり小さなサイズしか残っていないのですが、ロマネスク時代のモザイクです。いかにものヘタウマが、いかにもロマネスク時代ですねぇ。サン・ミケーレの、完成されたモチーフ、技術からは、かなり見劣りしますけれど、テッセラはかなり細かくて、頑張ったな、というのは、感じられます、笑。 なにより、間抜けな表情の動物たちが、かわいい。
カタルーニャのジローナにあるタペストリーの動物たちを髣髴とさせるフィギュアたちですね。
というわけで、若干駆け足になってしまいましたが、久しぶりにパヴィア、堪能しました。展覧会のおかげです。 実は先日、別目的でブレーシャを、これまた久しぶりに訪ねたのですが、考えたら、あそこもロンゴバルドの町で、一部、ロンゴバルドに再会してきました。そちらも、主目的が期限付きの件なので、紹介していきたいと思います。
ではどうぞ、チャンスがあったら、パヴィア、訪ねてみてくださいね。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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2017/11/04(土) 03:16:33 |
ロンバルディア・ロマネスク
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