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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

落語的な出会い(ペラージョス・デラロージョ)

カスティーリャ・エ・レオン、セゴビア編、その5(2016年夏の旅)

前回のソトサルボスからは、車で5分ほどの至近距離にある村に移動します。
村には、簡単にたどり着きましたが、教会の場所が、すぐにはわからず、さて、どうしようと思ったところで、家の前に怒鳴っているおやじに気が付きました。他に、尋ねる人もいないので、恐る恐るという感じで、近づき、おずおずと教会を尋ねると、意外にもにっこりとされて、あっちあっち、と指さしで教えてくれました。
直後に、家に向かってまた怒鳴りだしました…。どうやら、激しい夫婦喧嘩の最中だったようです。なんか、落語の世界だったな~。




ペラージョス・デラロージョPelayos del Arroyo、サン・ビセンテ教会Iglesia de San Vicente。

一見、パッとしない外観で、あ、またか~、その上開いてないのか~、とがっかりしかけたのですが、なんと、カギを持ったおやじがやってきたんです。
まさか、開けてくれるの?と感激して、聞いてみると、普段は開いてないんだけど、夏休み期間は、開けることになっているということでした。
そういえば、ネットで見た時も、7月から8月にかけての一か月くらいはオープン、と書いてある教会がいくつかありました。開いている確率が高まるのは、7月後半から8月後半にかけてですよ。

さて、見学開始です。
まず、後陣側。




後陣と反対側、西側にファサードと一体型になっているタイプの鐘楼と同じタイプのものが、ここでは、後陣から飛び出るような変な形でそびえたっています。
脇には、円筒形の構造物がありますが、内部に、鐘にアクセスするらせん階段を収納しています。




最初にたどり着いて、ちょっとうろうろしたとき、この階段塔の扉が半開きになっていたので、ちょっと押してみたら、ちゃんと開いたんです。中は暗くてかなり崩壊が激しい様子でしたが、でも、階段はあるし、ついつい入り込んで登りたくなっちゃうような、そういう様相で、(私のような病気の人には)これは危ないな、と思いました。怪我でもしたらえらいことなので、我慢しましたけれど、「入って見ろ」誘惑、相当強かったです。

軒持ち送りに、いくつか装飾的な彫り物が見られました。




軒持ち送りの間に置かれた、装飾的な浅浮彫彫り物が良い感じですね。組紐的な、古いモチーフです。




側壁の上の方にも軒持ち送り装飾がありましたが、かなり傷んでいて、形が残っているのはわずかでした。いずれにしても、肉眼レベルで確認できるのは、後陣部分だけです。

では、本堂への扉へ移動します。




やけに白い上に、相当掃除をしちゃっている感じです。オリジナルはこういう感じだったのかもしれませんが、教会の外の部分との整合性がなくなっている感じもあって、ちょっと違和感ありました。




アーキボルトは、連続植物モチーフで、なんだか、ちょっとロマネスクっぽくないんですが、時代はそうらしいです。
後陣の装飾も含めて、文様へのこだわりが感じられる石工さんだな、って印象です。




中に入ります。
最初に目に飛び込んできたのは、スペインらしいギラギラの祭壇。




せっかく入れたのに、これ~?と一瞬がっかり感に襲われそうになりましたが、続いて目に入ったのが、これ。




変則な勝利のアーチの位置となるんでしょうか。アーチの根元に、立派な柱頭があります。
特に左側に置かれたこいつは、彩色されていた様子と言い、ストーリー性のある様子と言い、いきなり違う石工さんの作品に感じられますね。




壁にも、美しいアーチが施されていて、そのアーチの根元には、やはり立派な柱頭があります。
一身廊の小さな教会ですが、脇の身廊を作れない代わりに、こういったアーチ装飾を施したのでしょうかね。




身体をタイトにしならせた肉食動物スタイルは、一見カベスタニー系ですが、顔の表情が、何ともプルートー…。




右側は、また全然違うタイプのモチーフになっています。




勝利のアーチの柱頭は、右が動物モチーフで、左に人々がたくさんいるストーリー的な柱頭。信者席では、右にストーリー柱頭で、左に動物モチーフ。やっぱりわざとそういう配置にしているんでしょうかね。




柱頭以外にも、薄いので、見逃しそうになるフレスコ画も注目です。




一部だけ、修復に成功した、という様子ですが、もともとは壁面全部がフレスコ画で覆われていたものと思われますね。
教会が捧げられているサン・ビセンテの一生のストーリーが描かれているようですが、もしかすると未完成フレスコ画なんでしょうか。または、色が失われたということなのか。




若干時代が下るのかな、という印象も受けますが、なんか、色あせた様子も含めて、結構好みでした。かわいい。




この四角い絵の周りには、もっと後の時代のものと思われる、もっと下書き風のフレスコ画がいくつか認められました。




ここでも、忘れてはならないのは、洗礼盤。
お菓子のシャルロット、またはカボチャスタイルですね。
洗礼盤は、祭壇と反対側の正面に置かれていることが多いです。西側に扉があることが少ないせいかな。オリジナルも、その場所なのかは、わかりませんが。

もう一つ、芸術的な碑文も、チェックですね。




これは時代についても、何も書かれておらず、不明です。それにしても芸術的なカリグラフィーですよね。カリグラフィーを趣味とされる方には、おそらく参考になるものなのでは、と思われます。

帰りがけに気付いた入り口付近の彫り物。




身体はくるりんですが、ここも、顔はプルートー的なんで、なんか微笑ましい。

いや~、カギ番さんのおかげ。ありがたかったです。




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  1. 2017/11/21(火) 07:26:26|
  2. カスティーリャ・エ・レオン
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  4. | コメント:4
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No title

教会の階段の中央の凹み、歴史を感じますね!

始めて暮らしたパリの屋根裏へ続く石の階段を思い出しました。

パリの古いアパートは石の階段の中央の凹みに、歴史を感じた物でした。それ以来ですね!
  1. 2017/11/21(火) 08:39:00 |
  2. URL |
  3. 古道具屋<山下亭> #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> 古道具屋<山下亭>さん
パリのアパルトマン!
石の文化は、そういったちょっとしたとこに、歴史を感じますよね。その伝で言えば、私にはピサの斜塔の石段が、忘れられません。すり減り方も、傾いた角度ですり減っているんですよ。なんで、よろよろ歩いちゃうのかな、と思って、傾斜を感じました。建った直後から傾いているということが、実感された瞬間でした!
  1. 2017/11/21(火) 23:11:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

やりはじめたら、ますますのめり込むことが実感されました!
ナイス・ポチ!

日本にも行きましたので、本屋に直行して30冊ぐらい買いましたが普通の駅の本屋さんでも取り寄せ注文ができましたので、、、少し参考書を買ってきました。もうちょっと専門的な本にしたほうが良かったかもですが、かなり荷物が増えてスーツケースを買いました。読了した本10冊は置いてきましたが、何時もは飛行機持込の軽いケースなのに今回は20キロにもなって持ち上げられなくて大変でした、、、自宅にもどる時は、10冊ぐらいは別にして18キロが持ち上げる限度でした。

参考書ってロマネスクですよ!なんかのめりこみそうで怖いです。(笑)
  1. 2017/11/26(日) 11:05:00 |
  2. URL |
  3. Atsuko #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> Atsukoさん
お~!病気仲間が増えつつあるのか~!
この病は、はまるとかなりやばいです。どうしても現地に行く必要がありますし、欧州在住だと、行けてしまう以上行かずにおれなくなっちゃうし!
海外レンタカーが怖くなっていた私も、これのおかげで、バンバンに走り回っていますから、恐るべしです。
ちなみに、ロマネスク関係は、やはり欧州の方が参考書は多いと思いますし、フランス語ができると、よい本がたくさん見つかるように思います。イタリア語はあまりないんですよね。
ほほほ、今後を楽しみにしております(笑)。
  1. 2017/11/27(月) 22:50:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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