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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

地元愛にあふれた、いかつい顔のおじいさんと食虫植物(ラ・クエスタ)

カスティーリャ・エ・レオン、セゴビア編、その6(2016年夏の旅)

次に訪ねた教会は、何とも印象的なたたずまいでした。
村はずれの丘に、一人佇んでいるんです。




その名も、坂を意味するラ・クエスタLa Cuestaという村にある、サン・クリストバル教会Iglesia de San Cristobal。

遠目にも、扉がバーンと開いているのがわかりましたので、まずは、中に入ることにしました。




外同様に、内部もかなり開放的な構造になっています。ほとんどの部分に後代の手が入ってしまっていて、まるで体育館のように広々としています。

なにより驚いたのは、大音響のラジオがガンガンにかかっていて、おじさんが、何か仕事をしていたことです。扉ももともと開け放してあるし、私が入ってきたことにも気づかないおじさんに、声もかけづらくて、手持無沙汰にうろうろしてしまいました。

内陣の反対側の薄暗い隅っこに安置されている洗礼盤を、まずはチェック。




数少ない、教会創建当時のロマネスク・アイテムです。
前回記事の教会にあった洗礼盤と、まったく同じスタイル。洗礼盤がよく残っているスペインですが、同地域のものは、たいてい同じスタイルのものになっている気がします。地域で活躍する、洗礼盤専門石工さんがいたっていうことなのかな。

この辺りで、おじさんが気付いてくれて、そうしたら、ぱちぱちと灯りを付けてくれて、この薄暗い一角も、いきなり明るくなりました。おかげで、洗礼盤の装飾彫り物を、よく見ることができました。




縁に、聖人らしいフィギュアが、横になって彫られているという珍しいスタイル。
ちなみに、向こう側にちらりと写り込んでしまった、ベレー帽の、雰囲気のあるのが、おじさんです。




のけぞっちゃっている感じの、すごい写真ですが、カギを持っているところから、これはサン・ピエトロでしょうね。ということは、使徒の人たちが横たわっているのか。12人分のスペースはありませんけれど。

おじさん、結構熱心に説明をしてくれます。
壁の一部に、ほんのわずかに残っているフレスコ画。識別可能なこの人は、おそらくサン・クリストバルであるというような話だったと思います。




祭壇には、ここも黄金ギラギラだったであろう飾りが残っていますから、それなりの教会であった歴史があるのだと思います。




内陣と信者スペースの境目にある、これも勝利のアーチとなるんでしょうけれど、その柱頭は、結構ちゃんと彫り物が残っています。




副柱頭は、再建ぽいけれど、続いている帯装飾の彫り物はみな同じだから、再建というより修復なのかな。なかなか美しいですよね。
柱頭は、ハーピーっぽいモチーフで、もうゴシックに片足かかっているテイストです。右側にはアーカンサス。




今は、大きなアーチ構造で、身廊を区切るような構造になっていますけれど、おそらくオリジナルは、柱のある構造だったんじゃないでしょうか。スペースを考えると、結構大きな柱があったと思われますし、とすると、柱頭も立派で、面白い彫りがあった可能性が高いですね。
これだけきれいさっぱり体育館になっちゃっていると、逆に想像の余地しかなくて、残念感が薄れます。

おじさんにいざなわれて、外観見学へ。




今使用されている入り口。小さくて地味ですが、町の方に向いているし、北壁とはいえ、メイン扉としての違和感ありません。柱頭も含め、それなりの装飾も施されています。





この、副柱頭と一体化した帯装飾の彫り物、ちょっと面白いですよね。イメージとしては、食虫植物です。組紐系の中に置かれた二枚葉が、なんか、クワッと口を開けて、獲物を待っている感じします。

アーキボルトにも、組紐系と植物を合わせたような彫り物が連続して彫られています。




ここの植物も、なんとなく動物的なイメージを受けてしまいますけれど、なんででしょうね。

軒送り部分は、もうゴシック時代にかかった装飾のようでした。




明らかに、ロマネスクの可愛さが薄れていますよね、いろんな意味で。




後陣側をぐるりと回って、村と反対側、つまり南側に回り込みます。軒送りの装飾はありますけれど、楽器を奏でる動物も、やっぱりなんか可愛さに欠けます。




で、回り込んだ南側は墓地になっているのですが、おじさんによれば、こちら側に、元来扉があったんだと。その名残が、どうやらこれ。




確かに、扉上部に軒送りがあるし、本来はこのスタイルの方がそれらしいですね。
朽ち果ててはいますが、柱頭の彫り物も、なんとなくこっちの方が、それらしい感はあります。




扉上の軒送りを見ると、明らかにこれが入り口だった、とわかりますね。




ここだけでなく、南側は、壁上部の軒送り彫り物も、やはり北面よりは、かなり充実しています。




内容は、基本的に朽ち方が激しく、会えてうれしい、ということもないのですが、何もないよりは、やっぱりうれしいかなってところでしょうか。




高台からの眺めをしばし堪能して。




おじさんと別れました。




あまりにっこりとかできないタイプの顔のおじさんだったけど、地元愛にあふれる説明が、好感度高かったです。こういう人に出会うと、何でもない教会に対しても、なんだか愛着を感じてしまうものです。
そして、こういう教会は、たいしたものがなくても、確実に記憶に残ります。

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  1. 2017/11/22(水) 07:06:39|
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