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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

地ウサギはねる、マルタ騎士団の旗のもと(セゴビア6)

カスティーリャ・エ・レオン、セゴビア編、その14(2016年夏の旅)

周辺にある教会の方が気になってきたので、セゴビアじっくり、という計画を捨てた時点で、方向性が変わったのですが、ここだけは行っときたい、という教会が、もう一つだけありました。町からちょっと外れた場所なので、郊外に向かう前に、朝一で向かいましたが、時間が早すぎたため、すぐ近くにある教会を、見ておくことにしました。




サン・マルコス教会Iglesia de San Marcos。
とっても小さな一身廊の教会で、町の壁の入り口付近にあります。

お隣にある建物は、市壁の入り口にある、税関のようなもので、19世紀のもの。外から入ってくるあらゆる生活物資の検閲をしていたそうです。確かに、幹線道路に近い場所だからね。
でも、そのような要衝にある、この小さな教会は、もともとどういうもんだったんだろう。
ミサの時間が書いてあったので、今でも現役で頑張っているみたいで、要は、信者さんがついているんですね。
今残っている税関は19世紀のものだけど、昔からそういう場所で、そういう場所で働く人のために、簡易礼拝所的な教会だったのかもしれませんね。
町はずれとはいえ、市壁内は、今では住居が立て込んで、中心部まで途切れることがないような場所ですが、道路を挟んだ反対側は、いきなり何もない土地になっています。昔もきっと同じような土地だったんだろうと髣髴とさせるものです。

ということで、セゴビア最後の教会は、こちらとなります。




ベラ・クルス(真の十字架)教会Iglesia de Vera Cruz。
背景に見えるのがセゴビアの町で、アルカサルとなります。

形から明らかですが、エルサレムのサン・セポルクロ教会のスタイルで建造された、13世紀の教会です。

現在はマルタ騎士団の管理下にあり、入場料をとる観光地となっていますが、一応教会としても現役と思います。
観光地として、きちんと管理されているのはありがたいことなのですが、なんとオープンが10時半というスペイン時間で、これにはまいりました。夜も、19時クロースと結構早いので、戻りが遅れると入れない可能性があるため、仕方なく朝一番で行きました。
スペインの修行旅で辛いのは、このように、朝が遅いことですね。そのくせ、昼休みは2時間半ありますから、見学のためには、効率が悪いことと言ったら。

時間があるから立ち寄ったサン・マルコスも、ほんの3分ほどで見学が終わってしまうような規模だったため、オープンまで相当の時間をつぶす必要があり、周りをぐるぐると歩いてしまいました。

トップの写真の左側が、谷になっているのがわかるでしょうか。こんな様子。




アルカサルを正面に、右側にベラ・クルスがあるという位置関係ですが、この、結構広々とした谷を見下ろしながらぶらぶらしていたら、何か、ちょろちょろと目に入るんです。目を凝らすと、なんと。




すごい数のウサギが朝ごはん中でした。
野兎というよりは、誰かが飼育している風です。食用かしらねぇ。地鶏ならぬ地ウサギ…。

10時半に近づいたころ、散歩をやめて戻りましたが、誰も来ない。
仕方ないので、外観の見学から。




全体のスタイルはサン・セポルクロを模したらしい円形を基本にした八角形ですが、扉周りは、典型的なスペイン・ロマネスクですね。軒持ち送り。ギザギザのアーキボルト。13世紀ですが、12世紀ごろの風味が満載です。




こういったシンプルなギザギザは、市松モチーフとともに、結構好みの彫り装飾です。




ディテールを見ると、やはり時代が下っている様子はあります。軒持ち送りの彫り物も、あまり面白みはありません。いずれにしても、ここも傷みが激しいです。

サン・セポルクロと言っても、いわゆる円形ではなく、正面扉側は八角形の面になっているし、反対の、いわゆる後陣側は、円筒形のロマネスク・スタイルになっています。




こちら側は、崖が落ち込んでいるので、撮影もおっかなびっくり。いっそ、ウサギの谷間で降りてしまえばよかったのですが、下ったら登らないといけないのが嫌で、横着しました。

塔もかなり新しそうだし、軒持ち送りの彫り物は、見事になくなっています。もともとないのではなく、なくなっているのではないかと思いましたが、本当のところは、わかりません。

一体いつ来るんだろう、と心配になってきたころ、10時45分に、人がやってきて、扉を開けたものの、すぐに出てきて、旗を揚げだしました。




私、待ってるんだけどな~。本当に余裕あるっていうか、自己中っていうか、ストレスないよねぇ、15分も遅れているのにさ。

2ユーロなりを払って、やっと入場したのは、10時48分。




いきなり、漆喰ぬりぬりの、マルタ騎士団の、という感じで、戸惑いますが、これは、外側の通路部分。
どういう構造になっているかというと、やはり円形なんです。




上の旗のある壁は、図で言うと9番とかのあたり。
構造物の真ん中に、まるで別の建物のような構造物が、種のような感じで、そびえたっているという二重構造になっているんです。
その種の部分は二階建て。




階段にいざなわれるように上に上ると、がらんとした礼拝堂のようになっています。




ちょっと秘密基地みたいな面白さがあり、ワクワクします。単に二重になっている、というだけの構造なのに、妙に複雑なもののように感じられてしまいますね。




中央に置かれた祭壇は、ムデハル様式の装飾になっていると。




このギザギザがそうなんだとすると、前回記事にしたサン・ミジャンの柱頭のギザギザも、ムデハルなのかもね。天井も、サン・ミジャンと同じとあるので、あそこと同時代の石工さんが、ここでも働いた様子です。
調度、角っこにあるアーチが、そこだけ馬蹄形になっているのが、興味深いです。

階段のところも、ムデハルと言ってよさそうな浅浮彫装飾。




種の部分の地上階は、床面が、ちょっと古びていて、好感度高し。




切り石で十字架模様にしているようです。十字に入り口があるため、外からの光が入ると、十字が浮かび上がります。

今の入り口近辺の壁に、フレスコ画。




ちょっと詩か残ってないけど、この足、好きかも。しかし、渡された英語の説明版は、旗に関してはびっくりするくらい細かい説明があるのに、こういうものに関しては、「この辺り古い壁」、とかそれでおしまいってどういうこと?
マルタ騎士団の矜持が全開って様子です。




この、真ん中の構造物がなかったら、すっごくつまらない建物だったかもね。
セゴビアで中世というと、おそらくまずはこのベラ・クルスが上がってくると思うんですが、それほどのもんじゃないです。この上のと、この、下の「古い壁」だけですからね、内部で見るべきは。




正直、ちょっと期待外れではありました。

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  1. 2017/12/06(水) 06:43:59|
  2. カスティーリャ・エ・レオン
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

No title

おはようございます!
なんだかこの構造はキャラバン・セライを思いおこしました!
キャラバン・セライは中央にメスキット(チャペル)を置く造りに
なっています。
トルコのコンヤ近辺とキプロスの北ニコシアで
見ただけですが、、、
スペインにキャラバン・セライがあったのかどうかは
知りませんが、もしかしたら、そういうものの再利用とか
あったのかしら?
  1. 2017/12/06(水) 07:52:00 |
  2. URL |
  3. Atsuko #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> Atsukoさん
返信遅れてすみません。コメントありがとうございます。
キャラバン・セライ(サライと思っていましたが?)とは、旅人宿ですか?トルコとか、マグレブで見た気がしますね。でもチャペルを置く構造というのは、知りませんでした。場所によって、そういう特殊性があるのでしょうか。
ここは、もともと教会なので、そういうものではなさそうですよ。エルサレムのサン・セポルクロは、円形教会なので、それに準拠しているということだと思います。
  1. 2017/12/11(月) 22:29:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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