カスティーリャ・エ・レオン、セゴビア編、その30、そして最終回(2016年夏の旅)
すっかり長丁場になってしまったこのシリーズ、いよいよ最終回となります。マドリッドの空港に向かう前、最後の時間を利用して立ち寄ったのは、ドゥラトンDuratonという村。
幹線から、ちょっと入ると、小さな集落がありました。車を停めて見渡しても、教会らしき姿はないし、探しようもないくらいに、奥行きのない村だったんです。
やっと目についた人に尋ねると、教会なら、そっちの道を行くとあるわよ、ということでした。たいした距離じゃないというので、それなら、と車はうっちゃって、歩いてアクセスすることに。
なんかすごい田舎道。こんな道が延々と続くなら、車の方がよさそうだな、と思いながら歩いて数分。前方に石橋らしき姿が。
せいぜい2,3分だったと思いますが、先がどうなっているかわからないときって、人は不安になるもんです。近づくと、確かに石橋。オリジナルは、おそらく結構古いものなのではないでしょうか。
こういうアクセスなら、やはり徒歩の方が感動があります。
そして、石橋の途中から、教会の姿を認め、ますます嬉しくなりました。
ど田舎の風景ですよね。こういう場所に、徒歩でアクセスできる喜び。これはもう遠目でも素晴らしさがわかる、というか、遠目で見るからこそ、周囲の風景とともに愛でることのできる喜び。
例によって、走り寄りたい気持ちと、なんか近づくのが惜しいような気持ちにさいなまれつつも、やはり自然と小走り状態になってしまうのでしたよ。
しかし!
奥ゆかしいというのか、かなり近づいても、木々の陰になって、全貌が見えないというジレンマ…。
ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・アスンシオン教会Iglesia de Nuestra Senora de la Asuncion。
美しすぎるポルティカーダの全貌。
言葉を失いました。まさに、旅の最後に訪ねるにふさわしい堂々たるポルティカーダです。
なんかもう、素敵すぎて、どこから見たらいいのか、とアワアワしたのを思い出します。
背が低くて、ずんぐりしているのに、同時に、装飾があっさりしているせいか、ダサさのないポルティカーダの扉口。
このときだってそうですけれど、遮るものが何一つない荒野みたいなロケーションですから、おひさまさんさんで、彫り物は相当朽ちているのですが、もはや、その朽ちた乾いた様子すら、魅力に変じています。
構造物の修復は、結構行き届いています。
床なども、ちょっと残念になるくらい、きれいに修復してあって、風情が若干消えています。
本堂への入り口。
外壁は、漆喰ぬりまくりでツルツル。これはちょっとやりすぎですよね。まぁ、オリジナルの石が持つでしょうけれど。
扉脇の柱頭。
本堂はクローズでした。村の誰かがカギを持っているのでしょうけれど、ここでは、外観ですっかり満足してしまって、カギを探そうとは、一瞬たりと考えなかったです。
説明版には、西ゴート時代の墓所があった場所とありましたけれど、この修復ぶりでは、おそらく、その時代のものが残っていることはないと思いましたし。
ここは、ロケーション全体を楽しむ教会と思います。
そして、見るべきディテールは、ポルティカーダの柱頭、側壁や後陣の軒持ち送り、ポルティカーダの軒持ち送りと、その下部にある彫り物、各扉口の彫り物です。
朽ちている彫り物も多いのですが、とにかく数が多いし、バラエティーにも富んでいて、面白いですよ。
ここだけで、100枚くらいの写真を撮ってしまいましたからね。
人魚と言えば二股が多いですが、ここらは普通に一本尾っぽの人魚が流行ったんですかね。
ハーピーや、得体のしれない幻獣、エロティック系のフィギュアから、月のシンボルなのか、農作業をしている農民の姿まで。
農作業の人たちの場所に、突然サムソンらしき人がいるから、驚いちゃったりね。
ポルティカーダの柱頭は、可能なものについては、かなり修復がされている様子で、細かいところまで美しくなっています。
キリがないですよね。
ということで、ここは、本当に立ち去りがたい教会でした。
かなり訪ねやすい場所なのに、誰一人来ないのも不思議なくらいでしたし。今思えば、これで中に入れていたら、まさに有終の美でしたけれど、もうこれらたたずまいだけで、大満足で、あとに思いを残すことなく、空港に向かうことができました。
ということで、長々とお付き合いありがとうございました。
カスティーリャのソリア地区から始まって、セゴビア地区まで、想像以上に素晴らしいロマネスクの連続で、過酷な部分もありましたけれど、その甲斐があったというところです。
特にセゴビアでは、あまり知られていないマイナーな場所に、はっとするほど素晴らしい町村や教会があり、いつか再訪したい土地の一つとなりました。
こうやって、実際に分け入って歩き回ると、地図を見る目が変わりますよね。それが、旅のあとの楽しみの一つでもあります。
一連の記事がどなたかの興味を喚起し、実際に訪ねる方がいたら、これ以上の喜びはありません。
長らくフランスやスペインの記事ばかり続いたので、ちょっとイタリアに戻ろうかと思っています。
何が出てくるか、お楽しみに。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2018/01/26(金) 06:30:42|
- カスティーリャ・エ・レオン
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| コメント:6
ブラボー、ナイスエンディング。楽しませていただきました。ご苦労様でした。次は何処になるのかな???
- 2018/01/26(金) 01:55:00 |
- URL |
- otebox #79D/WHSg
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楽しませていただきました!
ナイス・ポチ!
まだまだ先のことになりますが
5月に北スペインのサンジャック・コンポステラのツワーに
行くことにしました。
時々5,6キロの徒歩の日があります。
他の旅行会社のツワーは16キロとか20キロとかの徒歩が多くて
フランスのものとスペインのものがありましたが
歩くのが目的ではありませんし、無理をして疲れたくない
そしてこれでキリスト教の3大巡礼旅行を終えることができる
少しはロマネスクの教会も見学できるかと思っています。
- 2018/01/26(金) 08:59:00 |
- URL |
- Atsuko #79D/WHSg
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> oteboxさん
今日から新シリーズ。地味な土地ですが、お好きかもしれません。また違う興味が出ちゃって、行きたい場所が増えるかもしれませんよ、笑。
- 2018/01/27(土) 18:43:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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> ガビィさん
教会宗教はあまり好まないのですが、こういう美しいたたずまいの教会に出会うと、信仰の力や美しさを感じます。ここは、本当に素敵な教会でしたよ。
2016年夏。ずいぶんと時間がたってしまいましたが、あの興奮は、鮮明に覚えています。
- 2018/01/27(土) 18:44:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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> Atsukoさん
巡礼ですか、いいですね!
私も、ちょこちょこと巡礼路をかすっていますが、なかなか巡礼路をたどることがないので、うらやましいですね。
先日、ミラノのあるお店で、四国の巡礼をしたのよ、といううら若きイタリア人のお嬢さんに会いました。巡礼は、世界的ブームなんですかね。それにしてもお遍路さんとは。
- 2018/01/27(土) 18:46:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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