2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その3
前回の記事は、ちょっと思わせぶりになってしまったんですが、あるものが素晴らしく、ガイドさんの説明も素晴らしく、でも、一方で、自分の写真がしょぼい上に、きちんと勉強していないから、ブログにアップするにしても、その素晴らしい現実を反映できそうもない、という恐れから、どうしても、躊躇が先にたってしまって…。
この旅で巡ったビザンチンのフレスコ画は、本当に素晴らしいものばかりなのですが、とにかく自分の知識はついて行けない上に、ガイドをビデオ等で撮影しておけばよかったのに、このときはそういう頭がほとんどなかったもので、直後に、忘れないように、とメモしたわずかな記述しか残っておらず、時間の経過とともに忘却の彼方、というありさまなんですよねぇ。
必ずしも、誰にも興味があるものではないかもしれないし、誰もが簡単にアクセスできる場所でもないのですが、でも、ここは強力にお勧めしたい場所でもあり、とにかく頑張って見ることにします。
マリアさんガイドによるモットラの洞窟教会巡りの最初は、サンタ・マルゲリータ教会です。彼女的には、ここが一押し、ということでしたが、実物見学の後、気持ちが十分伝わってきました。
わたし的にも、ロケーションの特別さ、そして、フレスコ画の印象から、ここは一押しです。
車を路肩にうっちゃって、野の花の咲く美しい土地を、のんびりと10分弱して、たどり着くのが、グラヴィーナの渓谷への崖道です。
緑の草原の脇を、渓谷へ向かって、10段ほど、そして、渓谷の断崖に張り付くように施された階段を同じくらい降りると、この教会への入り口となります。マリアさんはカギを持っているので、問題なく開けて入ることができますが、入り口でもたもたしているのが怖いくらい、背後は急激な渓谷です。
鉄柵の前のわずかなスペースが、唯一普通に立っていられる場所ですが、この後ろは、激しい断崖絶壁で、高所恐怖症の人は、いるだけでぶるぶるしてくるような場所です。
この入り口に下る前は、草原が広がっていて、その向こう側、かなり遠いところにアッピア街道の支流みたいのがあるようだったんですが、それにしても、相当外れた場所です。
古代ローマ起源のアッピア街道は、エルサレムへの巡礼路として、中世にも盛んに活用されていたようですが、そこから相当外れた何もない場所、それも、わざわざ渓谷に降りるような危険な場所です。今は、少なくとも、手すりなどが設けられていますけれど、ただ、階段状のものだあるだけだったとしたら、相当怖い場所です。
右下にある木の柵状のものが、洞窟入り口への階段の手すりになっていますが、その手すりの向こうは、このような断崖絶壁なんです。
そういうロケーションにもかかわらず、中世時代の巡礼の目的地となっていたらしいんですよ。危険さも驚くし、このようにわかりにくい場所だったのに、巡礼地として認知されていた、という事実にも、驚嘆します。
今に残っている、細かい巡礼の記録は少ないですけれど、往時は、それなりの記録が、それなりに流通していた、ということなのかな、と思うと、それはそれで、ちょっと楽しくなります。
要は、トリップ・アドバイザーのようなものが、あったということだと思うんですよね。こんな洞窟、実際に行った人による口コミ情報とかなければ、絶対にアクセスできない場所ですからね。中世の人たちも、すごいな、と感心します。
さて、どこから紹介したものだか。
洞窟の中は、教会で言えば、クリプタのような体裁に整えられています。
ただ、掘って作られたスペースですので、形はゆがんでおり、一定ではありません。資料によれば、幅、というより、奥行きは6.28メートル、最大の長さは9.7メートル、高さは2.5メートルとなっています。
一応教会の体裁は整えており、不ぞろいながら角柱が天井を支える構造となっており、アーチを形作って、後陣を擁する二つの身廊を形作るようになっているようです。
上の写真にある中央左寄りにあるのが、その後陣の一つと思われます。
洞窟に入ってすぐ、左手にあるフレスコ画。
これは聖ニコラウスの逸話が描かれたもので、マリアさんのお話をよく記憶しています。三人の娘の父親が、生活苦から娘たちを娼館に売ろうとしたが、聖ニコラウスが、内緒でお金を置いていったというエピソードらしいです。
この教会は、マルゲリータに捧げられたものです。そのため、洞窟内には、マルゲリータがたくさん描かれています。というか、だから、サンタ・マルゲリータ、というようになったということだと思うんですけれどね。
入って最初に目に留まるマルゲリータ。
マルゲリータは、西側の伝統的な名前に従えば、オリジナルは、サンタ・マリーナとなり、妊婦の守護神なのだそうです。
これは、ビザンチンの伝統的なモチーフで飾られた衣装に身を包んだ、マルゲリータ。
ビザンチンの装束の、なんと豪華なこと。マントの縁取りは真珠だそうですよ。
頭上に置かれた冠もまた、宝石のちりばめられた豪奢なものです。
右手には殉教のシンボルである、掲げられた十字架、そして、左手は胸の上で、手のひらをこちらに向けています。これは、邪神、邪教、悪魔などを拒絶するという意味だそうです。
マリアさんのサイトや、このときのガイド、そして、この場所以外で伺ったお話を断片的にメモしたものを、記していますが、不勉強なもので、間違いも多々あると思います。どうぞ、それは違う、ということがあれば、ご教示願えれば、とてもありがたいことです。
それにしても、ビザンチンの高貴な方の装束の豪華さというのはすごいものですね。ビザンチンと言えば、私の中でのイメージは、ラベンナのモザイクにみる人々の姿なので、このマルゲリータの装束は、大変しっくりとしました。
マルゲリータの描かれた柱のお国も、たくさんのフレスコ画が見られます。
それなりに傷んでもいますが、時代を考えると、ずいぶんとよく残っているものだという感じもします。左手にあるのは、白馬に乗った勇ましいサン・ジョルジョのようですよ。
ドラゴンを、やりで串刺しにしている姿のようです。
かなり傷んでいる中でも、いかにもビザンチン風の顔の表情や、きらびやかな装束は、しっかりと残っていますね。
アーチで区切られた奥の方のスペースにも、フレスコ画がありますが、こちらは、時代がより古いもので、明らかに手も違います。
マルゲリータの一生が描かれている絵巻物的なフレスコ画です。
手は違うながら、やはり衣装には真珠のようなキラキラの装飾がほどこされているようで、やはりビザンチン。
ガイドを聞きながらも、目が移ろってしまう、そういう場所です。
だってもう、その特異なロケーションからして、全身で、特異さを感じるとともに、どのディテールも見たいという気持ちが先走り、収集のつかないことになっているんです。絵の細かい内容もすっごく興味があるし、同時に、どれもこれも写真に収めたいし、あれもこれも聞いてみたいし、同時に、ついイタリア語に走ってしまうので、同行者のためにも適宜通訳もしなければ、等々、本当に様々な気持ちが重層的にアワアワして、なんだか落ち着きなさマキシマム、という状態でした。
ここでは、12世紀から14世紀ごろのフレスコ画が、混ざって描かれています。というか、おそらく重層的に描かれたものが、結果的に、そのいくつかが今残っているという状況で、壁ごとに、時代が異なったりするようです。
そういえば、どちらで耳にしたんだったか、ビザンチンのイコンは、発注者と表現者(つまりアーティスト)の名前がちゃんと残されているとか、そういう話だったような。
これなどは、わざわざ写真を撮ったくらいですから、そういうものが記されている部分だったか。もう、こういう重要な点も、かなり忘却の彼方で~!
全身で情熱を混めて、語ってくださったマリアさん。不勉強な見学者で、今更ながら申し訳ない気持ちになります。
情熱をもって紹介したい、けれども、自分の知識が、紹介できるだけのレベルにないという葛藤、わかってもらえますでしょうか。関係各位に申し訳ない気持ちなんです。
ただ、このように隠されたお宝が、今でも、ちゃんと隠されながらも、私ごときでも、ちょっとだけ頑張れば、ガイドツアーで訪ねることができるというのは、実に素晴らしく、ありがたいことで、もっと多くの人に訪ねてほしい、と切に思っているんです。特にビザンチンに興味がある人には、ある意味、まだ知られざる、的な要素も残っているだけに、お勧めなんですよ。
続きますが、尻つぼみにならないように、頑張ります。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2018/01/30(火) 07:09:31|
- プーリア・ロマネスク
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| コメント:6
サン・ニコラの次の聖マルガリータはビザンチン式ですと
キリル文字になりますが、
ここは既にラテン文字でかかれていますね!
ビザンチンの聖マリーナは王冠は被っていません!
ビザンチンで王冠を被っている女性は、
コンスタンチヌス皇帝の母親の聖ヘレナ后
そしてアレクサンドリアの聖カテリーナぐらいです
色彩の施されていないパントクラトール(全能のキリスト)は
キリル文字のインスクリプションになっていますね!
その次の祭壇の後ろにかかれているのは
デエシス(お取次ぎ)のイコンのようです。
中央にキリスト、左に聖母ですから
右は洗礼者ヨハネがかかれていると思います。
一番最後の写真は聖ドミトリウスで聖ジョージのように
馬に乗っています。
実物をみたいですね!
というか、、、修復作業をしてみたくなります!
写真にナイス・ポチ!
- 2018/01/30(火) 00:02:00 |
- URL |
- Atsuko #79D/WHSg
- [ 編集 ]
ガイドさんの写っている写真
左から聖ニコラのお話、次は多分大天使ミカエルのようです
持ち物が見えないのでハッキリしませんが正面を向いているので
おそらくそうだと思います。
次は聖母(テオトコス)、聖マルガリータ、一番右は
なんとなく聖バルナバに似ていると思います。
- 2018/01/30(火) 00:16:00 |
- URL |
- Atsuko #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> Atsukoさん
さすが、お詳しいですね~。
ありがとうございます。私も、一応解説と写真を突き合わせて、確認はしましたが、難しいです~。
図像の説明は、本当に面白かったのですが、この一発目の教会では、まだちょっと上の空というか、集中できていなくて、多くの説明を忘れてしまったのが、残念ん。というか、ビデオで、解説だけでも録音しとけばよかった、と後悔しきりです。
- 2018/02/02(金) 23:24:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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サン・二コラが娼家に売られようとしたとき、お金をおいて、、この時お金が靴下の中におちたことから🎄に靴下をつるすようになった、と北イタリア、ノヴァレーゼのエル・ドラド・エ・サン・ニコラ礼拝堂で説明されました。サン・二コラはサンタクロースですよね。私はいつもツアーなので説明付きですが、書くと写真が撮れない。以前はvideoを回しっぱなしにしていましたが、重くて最近はもっていかないので、忘れていること多くて困っています。
- 2018/02/03(土) 00:22:00 |
- URL |
- yk #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> ykさん
ガイドって、その場では、うんうん、とわかった気になるのですが、すぐ忘れちゃうんですよね。イタリア語や英語だと、ますます、「わかった気になる」度が、高いと感じます、笑。これからは、映像というよりガイドの話を録音することを考えたいと、つくづく思いました。
- 2018/02/03(土) 20:26:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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