2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その6
洞窟教会ツアー、サン・ニコラ教会、続きです。
ガイドのマリアさんによる、熱の入ったガイドが続き、我々もついていこうと必至。熱量が高まるばかりです。
前回は、かつては聖職者たちだけがアクセスすることのできた、イコノスタシスの内部の後陣部分に、いきなり迫りましたが、イコノスタシスのこっち側、つまり、入り口に近い一般信者向けのスペースにも、かなりたくさんのフレスコ画が残されています。
こちらが入ってすぐの右壁です。
あ、フレスコ画に行く前に、この写真に写っている、小さな開口部について、ちょっと触れておきたいと思います。
上の写真の、右よりに開いている穴のことです。
これはマリアさんが、私の説だけど、と説明してくれたことで、真相はわからない、ということです。
こういう穴って、普通は、後代に、明り取りとして、唐突に開けられるケースが多く、多くの場合、フレスコ画なども気にせず、明かりを優先して開けられたりしますが、彼女は、これは、もともと開けられていたと思うというのです。
この穴を通る丸い光は、春分の頃に、後陣に描かれた聖人の姿や、中央後陣の祭壇にも、ぴったりと到達するので、そういう効果を計算して、教会と同時代に、開けられたものだというのです。
研究者の多くは、後代に開けられた明り取りまたは空気穴とみなしているそうですが、そんな穴からの光が、偶然、後陣に到達するというのは、納得できないので、自説を確信しているそうです。
実際、彼女ほど頻繁に現場を訪問している人はいないと思います。あらゆる季節や時間に来ているからこその説だと思うので、それはきっと正しいのだと思います。
私は、次々と新しい場所を訪ねて、勉強も何も間に合わない、というのを繰り返して、研究は老後の楽しみ、とかうそぶいていますが、そうやって一つの場所、一つの教会について、深く深く掘り下げるというのも、非常に有意義で面白いアプローチだと思いました。
さて、フレスコ画に戻りましょう。
最初の写真は、右壁、つまり右身廊部分と、身廊を区切る柱のフレスコ画になります。
13世紀終わりから14世紀にかけての、比較的新しいフレスコ画になるようです。
騎乗のサン・ジョルジョ。ドラゴンから娘を救ったという伝説の人ですが、洞窟教会の図像では、大変好まれたフィギュアだそうです。
彼もまた、赤いマントで、縁取りの付いた光背を背負っていますね。光背縁取り付き、お約束みたいです。どこまでも装飾的なのが、ビザンチンらしいと思います。
ビザンチンのお約束として、発注者又は製作者の名前が記されています。
そのお隣は、サン・ピエトロと、法王サン・レオーネが仲良く並んで、一つの額縁内に描かれています。
これは、全体の雰囲気からは、さほど古いものには見えないのですが、もともとは11世紀ごろの作品とされているようです。ただし、13/14世紀に加筆されているので、なんかちょっと、私が苦手とするにおいが感じられるのですね、笑。
このお二方の光背も、キラキラ縁取り付きです。
サン・レオーネは、トンスラみたいですが、トンスラは、ビザンチンの図像では珍しいそうです。この絵も、足元に、発注者の名前が記されています。
上の写真では、手前の柱の陰になってしまって、その部分が見えないんですけれど、法王の右側に、小さな絵があります。
これは、中世の衣装を着て、灯されたろうそくを持つ二人の女性の姿で、当時、深い信仰を表すフィギュアとして描かれたものだとか。これにも、当然発注者がいたということなのでしょうね。
ちなみに上部のアップでは、右側の法王と、左側のサン・ピエトロの足元がよく見えますが、使徒は通常はだしで描かれ、聖職者は、ちゃんと高価そうなスリッパをはいているんだろうですね。そんな細かいところまで、毎回見ているわけではないので、今回ガイドツアーで、次回からはきちんと確認しよう、という注意ポイントのヒントをたくさんいただいたように思います。
と言って、次回まで覚えていられるかというと、心もとありませんが。
その左には、やはり二人仲良く、の一枚で、サンタ・エレナと司教。サンタ・エレナは、例の黄金伝説の人ですね。さすがに豪華な王冠を付けています。
右側の人物は、印から司教と判別可能だけれども、名前までは不明なんです。ちょっと不思議ですよね。
それにしても、手、でかいな。
さらにその左、後陣に一番近くには、またもやサン・ジョルジョ。
左側の壁。
写真で、奥の方が、入り口の脇となります。つまり、後陣側から見た様子です。
写真で、一番手前にいるのが、どうやらサン・ニコラ。サン・ニコラって、バーリにそのレリックがある、例の二コラさんですね。
正面からは、こういう感じになります。
真ん中は、聖母。ビザンチン風ですが、「永遠の救いの聖母」と呼ばれる図像なんだそうですよ。難しい、図像学…。
その左側に見えるのは、サン・バジリオ。カッパドキア生まれで、強烈なカトリック推進者だった方なんだそうですね。
後陣の方から見た写真の正面に、聖母子がうっすら見えるかもしれませんが、そのお隣のアーチの根元部分に、サンタ・ルチアがいます。
王冠をいただき、刺繍が施された豪華な衣装に身を包んでいます。右手に十字架、左手は広げて胸に置いていますが、これは殉教のシンボル。
サンタ・ルチアは、両目をくりぬかれたことから、両目を入れた容器とともに描かれることも多い聖女。この絵では、美しい目をしていますね。
こちらでは、サンタ・ルチアと言えば、一年で昼が最も短い日のことですが、目の伝説によるのでしょう。
女性では、もうお一方、素敵なフレスコ画があります。
サンタ・パラシェヴェという名前は、聞いたことのないものです。西側では、ヴェネルディアと呼ばれるそうですが、それすらも、聞いたことありません。
彼女も、右手に十字架、左手は開いて胸に置いていますから、やはり殉教した人なのでしょう。
豊かなキリスト教徒の家庭に生まれましたが、その資産をさっさと売り払って、貧者に恵み、そのキリスト教徒的な行為を非難されて拷問され、最後は首を落とされて殉教したというのが、彼女のストーリー。パラシェヴェというのは、金曜日という意味なんだそうです。なぜそう呼ばれるかというと、彼女が、聖金曜日、つまり、イースター前の金曜日に当たるんですかね、その日に生まれたという伝説があるそうです。
ここで、注目しておきたいのが、唇の描き方。
解説では、燕のしっぽのような、とか、掛け金のような、とあったのですが、何とも独特ですよね。これがさらに不思議な形になっている唇を、この後訪ねたマテラの洞窟で、見ることになるんです。
マテラでは、全体に絵が大きくて、唇などという細かいところまで気付き、変だな、と思ったのですが、ここでは、見るべきものが多すぎ、聞くべき話が多すぎ、という状況もあったのですが、同時に、絵のスケールが小さいため、そこまでは気づきませんでした。
今、写真を見ながら、共通性を感じて、なるほど、と思った次第です。
もっともっと写真を撮ったつもりでしたが、意外と少なくて、なんで、ここ撮ってないんだよ!という絵が多数あったようです。
でも、いずれにしても、解説を見ながら、写真を確認して、という作業は、かなり大変で、これが限界。
興味のある向きは、是非是非、現地を訪ねてほしいです。
旅は、まだまだ続くのですが、ここで、しばらく中断します。
明日より、再び一時帰国で東京なので、2週間強、お休みです。
半端なところで中断は申し訳ありませんが、どうぞ、次回をお楽しみに、よろしくお願いします。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2018/02/16(金) 07:08:28|
- プーリア・ロマネスク
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聖ピエール(ペトロ)の足を見ていただくと
甲の所に紐が見えますね!これは簡易サンダルの紐なのです。
使徒は普通簡易サンダルを履いています。
これは使徒の足を洗うというイコンや壁画をみますと
使徒達が履いているサンダルを脱いでいますので裸足でかかれては
いないということがわかります。
司祭や聖職者は立派な靴を履いています。
聖母子の壁画ですが聖母子には大まかにわけて4つのタイプがあります。これはどちらかというと「お慰めの聖母子」ですね
永遠のお救いの聖母子は両脇に天使がかかれて天使たちは
磔刑につかわれる道具を持っていて幼子イエスはサンダルの片方が
脱げた状態なのでしてこれはそののち起こることにOKをしている
ということになります。ユダヤ人の常識として商談などが
成立した時にサンダルや靴を脱ぐということがあったからだそうです。
- 2018/02/16(金) 10:26:00 |
- URL |
- Atsuko #79D/WHSg
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キプロス島に聖女Paraskeviに捧げられた教会があり訪問してきました
彼女の殉教の日7月26日にお祝いされています。
2世紀にローマで生まれて母親からの影響でキリスト教徒になりましたが、20歳の時に両親が亡くなり財産をすべて貧しい人達に施して修道者になりましたがマルキュス・オレリウス・アントニウス
皇帝(161年~180年)に棄教しませんでしたので殉教しています。私の訪問した教会には地下に泉があって目の病気を治せるとかでしたが、現在は閉鎖されています。かなりあちこちの聖地で
目の悪い人を癒すという伝説の泉を見ましたが、、、当時は
目医者もなかったでしょうし、目の悪い人が沢山いたのだろうと
推量いたします。この前のイコンの研修の時にこの聖女のイコンを
書いている人がいていろいろ謂れをききましたが、PCで調べられると思います。
- 2018/02/16(金) 10:54:00 |
- URL |
- Atsuko #79D/WHSg
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壁画の口ですけれど正面画になりますと
私もこのようなかきかたになります。
イコンの口は小さくかかれますがこれは
食べる必要が無い為です。
光臨は聖人、殉教者、天使には必ずかかれます。
赤でふちを塗っているのは時間を越えた空間をあらわしていて
あの窓枠のあちらから私達を見てくださるということで
私達がみているわけではありません
偶にあると思いますが逆遠近法でかかれていて
主役はあちらだということをあらわしています。
- 2018/02/16(金) 11:01:00 |
- URL |
- Atsuko #79D/WHSg
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Atsukoさん
色々と興味深いコメントをいただいていたのに、お返事できてなくてすみません。
やっと再開するエネルギーが出てきたので、今週から頑張ります。図像学、もっと勉強しないと、ですね。また、よろしくお願いします。
- 2018/03/18(日) 19:01:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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