モットラ、最後の洞窟教会(モットラ5)
2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その7
大変なご無沙汰となってしまいました。
東京からは、とっくの昔に戻っているのですが、短期間に一時帰国が二回も続いたせいで、生活のリズムがなかなか元に戻らない状態のまま、すっかりさぼり癖がついてしまったようです。
一度長くさぼると、復帰がさらに億劫になってしまう上に、最近アップしていたプーリア編は、結構書きたいことがたくさんあるもので、億劫感が半端なし、笑。
でも、是非ここで紹介したい場所がたくさんあるので、何とか頑張ってみようと思います。
とは言いながら、次の週末は、フィギュアスケートの世界大会、そして次の週末はイースター、その先はすぐフオリサローネの時期となりますし、三月末は仕事も激務となりますので、どうなりますことやら。
前回まで触りを紹介したプーリアの洞窟教会、その一日目、モットラのガイドツアー最後の教会からの再開となります。
素晴らしい現地ガイド、マリアさん先導のモットラ洞窟教会ツアー、最後に訪れたのは、サン・グレゴリオ教会Chiesa rupestre di San Gregorioです。
実は、この前に訪ねたサン・ニコラで、すでに17時ごろでした。15時に始まって、ちょっとした移動はあるとはいえ、ほとんどが至近距離の教会三つを見て、すでに2時間が経過していたこととなります。当初のお約束が、大体2時間くらいで、ということでした。この後、マテラまで移動する必要があったので、仲間と、最後の教会は端折ろうか、という話になり、マリアさんにその旨伝えたのです。
でも、サン・グレゴリオはすぐそこだし、見学の時間もさほどかからないから、せっかくだから見ていってほしい、と懇願され、結局見学することになったのです。
ガイドさんの料金は変わらないわけですから、職業としてやっていれば、拘束時間が短い方がいいに決まっていますが、彼女はそうではなく、心からこの場所を見てほしい、という気持ちでガイドをやっていらっしゃるんですね。ちょっと感動してしまいました。
さて、サン・ニコラからサン・グレゴリオまでは、ほんの15分程度。幹線道路沿いに、遺跡状態のたたずまいで広がっています。
道路から地面までは、結構な高低差がありますが、この2メートルほどの高低差が、千年の時間の視覚化ということですね。
教会の地面は、表に出ている岩の部分から、さらに下に降りた場所となります。
岩を彫りだした構造なので、当時からこういう半地下状態だったと思われます。
それにしても、この教会は、この日見た、他のどの教会とも違うたたずまいで、入ってすぐに目に入る石のたたずまいの迫力に、息をのみました。
このスケールを表すような写真は撮影できずです。
その場に立つと、天井がかなり高いので、圧倒的な迫力があります。扉からの光しかないため、暗闇がまた、イメージを重々しいものにしているということもありますが、いっそ神秘的な雰囲気というのか、これまでの教会とは、まったく違うコンセプトを感じました。
そういう教会ですが、ここにもフレスコ画があります。
教会の右側身廊に当たる部分に描かれた聖母子。14世紀ごろの作品ということで、図像的には、ビザンチン風味は少ないようです。
右側にいるのは、聖バルトロメオらしいです。
そして、中央後陣には、祝福のキリスト。
キリストのお顔にライトがあてられているので、光っていますが、これ、サポートの明かりがなければ、かなりの暗闇状態です。この時点で、外に日も、相当傾いていますからね。
このフレスコ画は、12世紀のものとされているようですが、すごく明瞭で漫画的で、個人的には後代の手がかなり入っちゃってるんじゃないの?と感じてしまうのですが、どうでしょうか。
図像的には、モンレアーレの金ぴかキラキラのカテドラルにある金色モザイクのキリストとの相似性から、ギリシャ出身の職人さんによる作品とも言われているそうです。
図像学的に注目すべきは、この中央後陣部分は、デイシスが描かれるケースがほとんどなので、全能者としてのキリストの図像が描かれることはまれで、実際に、その例としては、ここを含めて二例しかないということらしいです。
後代の手が入っているとはいっても、保存状態は比較的良好ですね。とすると、他の場所には、フレスコがなかったのかな、とか、ちょっと不思議な気もします。
なによりも、この教会では、数少なくて、その上、自然光ではほとんど見ることのできないフレスコ画より、石彫りへの注目が圧倒的でありました。
この、全能のキリストよりも、その手前の天井にある、こういう彫りこみの方が、興味を誘われました。
こういった彫りこみは、全体を掘り出して作られた構造物だからこそで、以前の記事で、エトルリアなどの古代文明との関連に言及しましたが、ここでは、掘りだしの様子が、この日見学したどこよりも激しく感じられる遺構であっただけに、ますます、強く感じられました。
やっぱり、建築として、無から建てられる建築構造物とは違うんですよね、この石のむき出しの構造物は。
でも、古代構造物には、同様の装飾がほどこされていたわけですから、それを真似したとしても、まったく不思議ではないと思います。
これなどは、エトルリア遺跡が多く見られるラツィオ州で目にした、エトルリアの古代墳墓の天井装飾にそっくりです。
もちろん、岩を掘り出して作り出す装飾に、さほどのバラエティがあったとは思えませんけれども、でも、これをパッと見たら、中世というよりは古代、というイメージではないでしょうか。
それにしても、これだけの建物構造を、掘りだして作ってしまうとは。この時代の人々の熱意にはただ感心してしまうのみ。
そして、辞退したにも関わらず、かなり強硬にガイドを主張したマリアさんには感謝のみです。というのも、旅の最後で、ここと似た意向を見学するチャンスがあり、ここを見ていると見ていないでは、受け取り方に大いに違いがあったろうと思ったからです。
この旅の最初のどでかいイベント、これにて終了。
実に素晴らしいガイド・ツアーでした。ご興味のある向きには、是非。マリアさんは、英語も大丈夫です。ここ、ガイドがあるとないとでは、面白さがまったく違います。
というわけで、まったくの無関係者ではありますが、今一度、ガイドさんの件、記しておきますね。
Ms.Maria Grottola
関連サイト
モットラ洞窟教会紹介のサイト 関連メール・アドレス info@visitmottola.com
サイトは、ビデオも含め、大変良くできた内容なので、ご興味があれば是非、訪問してみてください。
次は、マテラに移動します。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2018/03/20(火) 06:08:58|
- プーリア・ロマネスク
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| コメント:1
はーいい!
ご連絡、お待ちしておりますよ~!これ以上はないっていう夏休み最盛期ですね。私、ミラノにいるかなぁ。
- 2018/03/20(火) 22:34:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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