フィギュア・スケート世界選手権(ミラノ)
前回書いたように、試合観戦は、トリノで開催された世界選手権以来。もっと前かと思っていましたが、2010年、8年前のことなんですね。
当時は、フィギュアスケートをライブで観戦する、という発想がなくて、滑り込みでチケットを買ったため、リンクからは果てしなく遠いアルプス席のような端っこでの観戦でした。
でも、今思うと、滑り込みでも席が買えたし、今ほど、日本からのお客さんもいなくて、もっとずっとアットホームな感じでした。
それが今や、世界中のどの大会でも、日本人や日本企業のスポンサーなしでは語れなくなっているので、フィギュアの世界では、この8年、いや、おそらくもっと前から熱くフォローしているフィギュアファンにとっては、隔世の感があることでしょう。
女子フリーで、最初に登場した日本人は、樋口新葉選手。
いきなり繰り広げられた日の丸の羅列に、一瞬絶句しました。
リンクに一番近い最前列のほとんどが、日本人のファンに占拠されていて、リンクをぐるりと取り巻く日の丸。そして、リンクに面しては、日本人向けに日本語で書かれたスポンサーのロゴ。
すでに、この世界では当たり前の光景なのでしょうが、なんせライブ観戦8年ぶりの私には目新しく、たまげました。周囲のイタリア人の多くも、ざわついていました。
テレビだと、選手がリンクに登場すると、選手にカメラが行きますから、こういう風景って、見えないんですよね。
この、かぶりつきの席は、会期中通しで全試合観戦できるパッケージ・チケットでしか買えないことになっています。もちろん、地元で買う人もいるのでしょうが、普通に生活している以上、1週間通しで観戦できる人は限られますから、ほとんどが、海外発の観戦パッケージ旅行のために、買い占められるのでしょう。海外初と言っても、ほとんどは日本でしょうね。
シングル・チケットの発売は11月に入ってからで、発売開始当日に購入しても、最前列で9列目でした。
三つの試合を見ましたが、同じような顔が周囲に散見されたので、多くの人が、同じようなタイミングで買っていたのでしょう。
それにしても、日本人の排他的な様子は、ちょっと気になりました。
男子フリーは、朝10時からでしたが、9時過ぎに入場すると、最後の組の練習時間でした。
最前列の日本人の多くは、見事にずらりと席についています。それ以外の場所は、ガラガラですけどね。
そして、黙々と練習風景を動画に撮影している人がほとんど。
他の観客に混じって、最前列まで降りて、宇野昌磨選手を撮影しようとしたら、最前列に座って、撮影している日本人の女性に、まるで犬猫を追い出すような動作をされてしまいました。それも、マジ、怒り顔。
怖かったですね~!
その時、その場所にいることは、禁止されていることではないはずなのに、「VIP席の私の撮影を邪魔するとは許せん!」という無言の圧力。
みんな、楽しく応援に来ているのに、何を殺伐と…。怖いので、黙って引き下がりましたけれど、なんですかね~。
なんかもっとこう、楽しく、選手も頑張ってるんだから、みんなで頑張って応援しよう!みたいなムードになれないもんでしょうかね。観客がすさんでどうする?と思うんですけれど。
日本人以外にも、在住、旅行者を問わず、多国籍な観客でしたが、誰もがもっと応援を楽しむ的な様子だったと思うんですけど。
フランスのかわいいベレーのおばさんとか、下の写真の人たちなんて、英語をしゃべっていたのでイタリア人ではなかったのですが、いろんな国の旗を持っていて、どの旗を広げる時も、応援を楽しんでいる様子でした。どっちも毎回ご近所さんでした。
男子フリーのときのお隣さんは、スペイン人だったのですが、なんとミーシャの大ファンで、巨大垂れ幕を広げて、私の視界を遮ってくれたんですが、笑、そのためにカメラが来て、なんと全世界放映のテレビ出演しちゃいました!
ミーシャの演技中の動画にも、ばっちり写ってしまいましたよ。いい記念になります。
こういう熱い応援ならいいんですけれど、自分が独占的な熱さは、ちょっと苦手です。
わたしなんて、本当にミーハーなんで、選手よりも、こっちにキャー、なんて言っちゃう口なんで…。
ランビ様。王子様タイプのデニス君とのキス・アンド・クライ。さすがランビ・コーチ、躍らせますよね。
なんて、ミーハーぶりなんですが、今回、フィギュアスケートの観戦における志向、とでも言ったことを考えてしまいました。
というのは、女子フリーのとき、お隣にいたイタリア人が、おそらく何らかの形でフィギュアにかかわっている男性だったんです。あの衣装はほしいわね、なんて話している、知り合いらしい若い女の子たちも近くにいたので、ちょっとしたスケート教室のコーチとか、そういう人ではないかと思われました。
彼、演技観戦中、真剣そのもので、素人目にはうまく降りたようにしか見えないジャンプでも、「残念」とか、逆に、「完璧だ」とかつぶやき続けていました。カロの演技のあとに話して、彼がエキスパートであることがわかったんですが(最初のジャンプは回転不足で、その次は云々、と、流れるように解説してくれた)、やっている人とか、競技をよく知っている人は、もしかして、そういう目で見てしまうのか!ということに気付いたんです。
そんなの当たり前だろう?と言われてしまいますかね。
でも、たとえ、回転不足でも、美しいものは美しい。演技全体を通した振り付け、表現力が素晴らしければ、満足できるときもあると思うんです。もちろん、回転不足では、点が伸びないわけですが。
でも、彼の観戦態度、というのか、志向というのか、それはもう審査員的な見方なんですね。そうなっちゃうんだったら、ちょっと寂しい。
どうせ、回転数どころか、ジャンプの見分けすら、一生できないと思うし、負け惜しみになっちゃうかもだけど、審査は審査員に任せて、私はやっぱりミーハー志向でいいな、って思いました。
ただ同時に、フィギュアスケートという「スポーツ」の特異さ、というのは、改めて感じました。
ジャンプは、四回転以上は行かないと思うし、行ってほしくないと思うし、美しさの観点から行くと、三回転の方が絶対に美しいし、個人的には、フリー中の四回転は2個まで、とか、そういう制限をしてほしいくらいです。
スポーツとしての競い合いがなくなるのはつまらないけれど、今回のネーサン・チェンのように、四回転が決まれば、とんでもない点が出る、というルールは、なんか、納得しかねます。フィギュアスケートの本質的な部分が、抜け落ちているような。
それだったら、ジャンプだけの部門を作ればいいのでは、と思ってしまいます。昔、コンパルソリーがあったように。
今回、女子で優勝したオズモンド選手。ご近所さんのエキスパートによれば、想像通りでしたが、すべてのエレメントが完璧であると。だけれども、全体としての面白みはなくて、わたし的には、女版パトリック・チャン、と思いました。
彼らのようなタイプが、点を伸ばすのは、今回、よくわかりましたが、みんながチャンやオズモンドになったら、きっとこのスポーツはつまらなくなります。
そういった意味で、フィギュアスケートの本質を唯一守っているのが、アイスダンスだと思うのですが、そこにも、カナダ系技術完璧志向が入り込みつつあり…。アイスダンスまで、技術中心になってしまったら、おしまいです。
やっぱり、北米系が、そういう志向が強いんですかねぇ。日本人は、絶対そうはならないし、欧州系も、やはりしっとりプログラムで見せる志向が強いですよね。
というようなことを、つらつらと考えていました。
とにかく、生はいい。
ライブで見たからこそ分かったことが、たくさんあるように思います。
例えば、衣装の色にしても、テレビ写りって、結構違うようです。
それに何より、静かな音楽の時に聞こえるエッジの音って、ゾクゾクします。選手がノリノリのときは、身体から何かが発散しているのが目に見えるようだし、逆に疲れてきた時の重力も、視覚化される感じ。
下位選手とトップ選手の差が、そんなところに見え隠れするんですね。
多くの選手について、今後の進退がはっきりしないですが、まだまだライブで見てみたい人たち、たくさんいますから、どうぞ、また次の機会がありますように、と祈るばかりです。
では、次回からは、通常のロマネスク営業に戻ります。お付き合い、ありがとうございました。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2018/03/27(火) 05:45:58|
- ミラノ徒然
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| コメント:4
この様時はテレビが無いのが残念です。
家内が好きなので私も良く見て居たのですが・・・・・・
競技と名が付けば・・・・・
採点方法はいろいろある様ですね?
私もジャンプの種類は判らないタイプです。
- 2018/03/27(火) 10:42:00 |
- URL |
- 古民家の田舎暮らし<山下亭> #79D/WHSg
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あら~~たしかに恐そうなイメージがありましたがやっぱそうなんだ。歌舞伎でもなんでもなんかこう、よそ者あっち行け的な観客が結構いらっしゃって、相撲もそうなんだけど何でこう、排他的なんですかねえ。
フィギュアスケートの評論も、選手には厳しい意見だとものすごい勢いで叩かれたり炎上したりするんだよと聞いたことはありましたけどね。
でも実際に見たら美しいんだろうな。
そうそう、表現力は技術より大事!だから私安藤美姫さんが引退されたのは残念でした。素晴らしい選手が産後も活躍できる世界になって欲しいな。
アイスダンス、排他的な空気に負けずいつか見にいきたいなあ(≧∀≦)。
- 2018/04/01(日) 03:19:00 |
- URL |
- まーたん #79D/WHSg
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> 古民家の田舎暮らし<山下亭>さん
ジャンプの種類、わかりませんよねぇ!ほっとします、そういうの、笑!
- 2018/04/01(日) 20:34:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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> まーたんさん
本当に、なんか、変わったファンも多いようで、閉口しますね。競技として、アートとして、もっと全体に応援していこうよ、と思うんだけど、特定の選手の追っかけ、それも、やりすぎ的なレベルっていうのは、やり切れませんわ~!
ライブは、いいですよ。美しさ、違います。アイスダンスは、芸術面が強いので、特に楽しめます。いつか是非、ライブ、足を運んでもらいたいです!
- 2018/04/01(日) 20:36:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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