fc2ブログ

イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

鉄パイプがんじがらめの教会の迷路にて(チェッラーテ)

2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その15

ずいぶんと間が開いてしまいましたが、再び、昨年のイースターに訪ねた、プーリアに戻ることとします。
マテラでの洞窟教会見学を終えてから、南下して向かったのは、こちらです。




チェッラーテの、サンタ・マリア修道院Abbazia di Santa Maria di Cerrateです。
なんと地味な入り口なことか。でも、何はともあれ、開いている様子なので、状態を気にすることなく、門に駆け込みました。
というのも、事前情報で、18時までのオープンであることがわかっていましたし、到着したのは、もう17時半過ぎだったからです。

しかし、門を入って、愕然。




ぎょへ~!
奇声が出るような大修理中でしたよ~!

それでも、あとから説明版を見て、実はすごくラッキーだったことがわかります。
この修道院、FAI(Fondo Ambiente Italiano)という文化遺産保護団体の管轄下にあります。FAIは、寄贈などを受けた文化財を多く管理する団体で、修復や、その後の公開プロジェクトや管理を業務としています。場合によって、レストランやショップを作ったり、管理する一帯をアミューズメント的な文化施設にするなんて言うことをやって、観光収入を得るなど、この団体の管理下に置かれると、非常にしっかりとした修復が施され、その後の公開についても安心できる、という仕事をしているんです。

で、ここに関しては、長年の修復が、2016年12月に、修復の第一弾が終了し、2016年早々から、第二弾が始まりました。その段階で、2017年3月25日から、修復工事中の状態で、見学者を受け入れることになったようなんです。我々が訪ねたのは4月ですから、再オープンして間もない時だったわけです。

いずれにしても、最も見るべき場所の片鱗は確認できたので、満足ではありました。
その一つが、このファサードの扉周りの装飾です。




道徳な装飾の配置です。タンパン部分にも、オリジナルは何か彫り物があったかもしれませんが、現在の状態で最も目が惹かれるのは、アーキボルトに並べられた、かなりサイズの大きい浮彫です。




これだけでかいものを、どかどかと並べているのって、珍しいように思います。
教会は、11世紀創建と古いものですが、この彫り物も同様なのかどうかは不明です。見た感じ、11世紀よりは下っているようにも感じられますが、どこのものにも似ていないような、不思議な手です。




これ、洗礼の図ですかね?一寸法師なんですけど。
こういう小さい人も、特にかわいいという様子もなく、なんだか、変に生真面目なんです。

これは、やはりマリアでしょうかね。




左の方に、小さく、牛と馬に見守られている誕生直後のジェズがいるようです。
これは、エリザベツ訪問と見えますが、傷みがひどいです。




この部分も、おそらくこれから修復に入ると思いますので、数年後訪ねたら、まったく違う様子になっている可能性もありますね。
こういったディテールも、どうなっていくのか。




いつか再訪してみたいと思います。

さて、この修道院教会、イタリアでは珍しく、ポルティカーダがある構造です。




この図、わかりやすいと思います。
もともと、マッセリア、つまりこの地域に多く作られた農園の構造を利用したものらしいんですよね。マッセリアの建物を、修道院に転用して、中に教会を作ったということなのかな。
それにしても、ポルティカーダ、それもここまで立派な構造のものは、本当にスペインを髣髴とさせるものです。
もう、エルサレムに渡る船が出る港も近い場所ですから、いろいろな職人さんの行き来も激しくあった可能性はあり、何らかの経緯で、そういう技術を持った職人さんが住み着いたのか、流れ着いたのか、または、スペインなどに行ったことのある人が戻ってきたのか。なんか、そういうのを考えるのは、とても好きです。

残念ながら、そのポルティカーダ部分は、足場が組まれていて、肝心の柱頭を見るのが大変なことになっていました。




でも、身体をひねったり折り曲げたり、無理な姿勢をしてでも、きちんと見る価値のある柱頭が並んでいるんですよ。




右の人、おっぱいですか?
なんだろう…。
それにしても、柱の傷み、すっごく激しいですよね。砂岩っぽいですが、このまま放置されたら、崩れて溶けてしまいそうな状態。修復されて、よかった、としみじみ思います。

これもなんだかおもしろい。




鳥というより怪物的なものたちです。
この鳥の羽の彫り方とか、ちょっとどこかの手を髣髴とさせるような気がするんですが、シロスでしたか?こういう彫り方してませんでしたかね?
ポルティカーダで、スペインに引きずられて、勝手に思い込んでいるかな。

柱は、つまらないものに付け替えられてしまったものもあるようですが、上のような状態で傷んでいたら、崩れるよりはその方がいいですね。




柱頭、どれも面白いですが、現場では、近寄ることもできず、日差しのコントラストもあり、詳細はわからなかったんです。今、こうやって写真で確認する方が、よくわかります。
これ、絶対修復で、よみがえりますね。

一瞬、有翼のマルコにも見えますが、どうやら、ライオンの背中に鳥が乗っているようです。




この翼の彫り方、やはりシロスっぽい。ちょっと稚拙だけど、笑。

ポルティカーダの扉から、内部に入れますが、中はさらに鉄パイプががんじがらめ状態でした。




フレスコ画は、相当時代が下る様子です。
これ、中央身廊です。西側のファサードに向かう図。この状態で、公開してくださる、というのがすごいです。




正確な時代は不明ですが、かなりビザンチンっぽいフレスコ画も一部ありました。




今後、周囲の修道院に使用されていた建物や、さらに外に広がる土地も含めて、修復プラスアミューズメント化が計画されているようでした。と言っても、結構人里離れた場所なので、どういう風に開発していくのかわかりませんが、ミラノ郊外にある古い修道院のように、レストランでも併設する可能性もありですね。
いずれにしても、ディテールが面白いので、修復が終わった暁には、是非再訪したいと思っています。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
スポンサーサイト



  1. 2018/05/17(木) 05:56:58|
  2. プーリア・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<違法な不法侵入。そして、合法的な不法侵入(ポッジャルド) | ホーム | 古いミラノと新しいミラノのコントラスト>>

コメント

No title

彫刻写真の最期、持っているのが杖にみえるが、糸巻きとも見え、そうなるとマリア、左側はガブリエルと考えると一連は生誕場面、ということになり、洗礼?とお考えの場面はどうみてもお爺さんに見えるが イエスに産湯をつかわせている場面、とみたくなるのですが、どうでしょう? 左下の小さく杖を持って腰掛けている人物をヨセフと考えると、弧帯全体として 話がまとまると思いますが、、、。
  1. 2018/05/19(土) 00:29:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> ykさん
こんにちは、ご無沙汰です。
確かに生誕場面と思います~!
産湯のわりに、ジェズの宇宙人顔は、何とも異質ですけどね~。
ここの手は、ちょっと独特ですよね?時代が下るからでしょうかね?
全体は好きなんですけど、石工さんのテイストは、今一つ好きになれない…。
  1. 2018/05/20(日) 22:52:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
https://notaromanica.blog.fc2.com/tb.php/1908-12ac094c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)