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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

これほどポップとは!ぶっ飛びすぎ(オートラント1)

2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その19




サルデーニャに行っても、アストゥリアスに行っても、土地の売りである海に近寄るチャンスは、ほとんどの場合なく、このプーリアの旅でも、唯一海に近づいたのは、ここ、オートラントでした。

美しい青のバリエーション。
そういうものを楽しむバカンスって、長い間してないなぁ、としばしうっとりです。

そう、いつか絶対に行きたい、と長年焦がれていたオートラントのカテドラル、とうとう訪ねる時が来たのです。




オートラント大聖堂Cattedrale di Otranto。

意気込みの割には、がっかりするようなファサードです。
でも、この、のっぺりと改築されてしまったファサードをくぐると、お宝に出会えます。
しかし、入場しても、正直、まず押し寄せるのは、がっかり感。




知ってはいましたが、ここまで訪問者を拒否する状態に置かれているとは、純粋に驚きます。本堂のほとんどの面を覆うようにして、椅子がびっしりと並べられており、スペースを取った中央身廊にも、足を踏み入れることはできません。

両端の狭い通路を通りながら、このような椅子の合間にかろうじて見えるモザイクを、無理やり鑑賞するというスタイル。




これはひどいですね。モザイクが大切なら、そもそも椅子は取り外すべきですよね。一体何を優先しているのか、まったく不明です。世界遺産なんだから、もっと、例えば北部のアクイレイアのように、床モザイク鑑賞のために、思い切った博物館化をすべきなんではないか、と憤る状態です。
これが、寒村で、ほとんど人も来ないような土地なら、やはり土地の宗教観を大切にするからかなぁ、とか素直にうなずけますが、ここは、海のリゾート地であるため、イースター時でも、すでに多くの観光客でにぎわっていて、このカテドラルへの訪問者も、半端な数ではないのです。
それが、狭い通路を、満員電車状態で、うろうろしているというのは、解せない状態です。
まずは、入場料を徴収することから始めるべきだと思いますけどね~。

なんせイタリアはバチカンのおひざ元のせいか、入場料徴収、博物館化、が非常に少ないです。必ずしもそれを推進する派ではないのですが、これほどの遺構を持ち、守るためには、ある程度の博物館化は当然と思うんですよね。
やはり南だから、というのがあるのでしょうかねぇ。




といったようなことは、おそらく素人玄人関係なく、多くの人が言っていることではないかと思いますが、それでも、相変わらずこういう状態なのは、本当に理解不能です。

それはともかく、この床モザイク
本堂全体の床面を使って、ライフ・ツリー、Albero della Vitaを展開しているものです。




12世紀半ばの約二年ほど(1163-1165)に制作されたモザイク。
当時流行りのモチーフを使いまくって、テッセラを張りまくったすごい規模の作品です。
多くの人物が、名前入りで表されているのも、面白いです。




実在や想像上の動物たちがひしめいていたり。




12の円の中に、月々の農作業と時期の星座を表したフィギュアがあったり。




旧約聖書のエピソード(カインとアベル)。
ゴルフ的ですが、笑。




殺人事件前のエピソードもあります。




ちなみに4枚目のモザイクは、アレクサンダー大王ですよ。
解説には、中世期には、アレクサンダー大王の逸話は、最も普及し、よく表されたもの、とありますが、他で見たことがあったでしょうか?思いつきません。

それにしても、どうですか?




どれも面白いんですが、めちゃくちゃ下手!激下手!ヘタウマ極まれり!
じゃないですか?

もともと写真など見ていて、勿論こういうものだと知っていたですが、それにしても、この下手さと、奔放さは、想像以上のものです。
12世紀だし、ここはビザンチンもたくさんいた場所なのに、明らかにビザンチン無関係な代物っていうか。ビザンチンにしたら、あ、あのモザイクは勘弁してくれ!あれ、俺たち無関係だから、そこんとこヨロシク!と知らん顔するだろうっていうか。




大胆と言えば、あまりに大胆なデッサンや構図。でたらめな縮尺や、大雑把な植物等のモチーフ。
この間抜け面の表現力は、明らかに中世ロマネスク時代のモザイク…。




こういった表現は北部のモザイクでも見たことある、知っているタイプですよね~。
それが、ビザンチンのいた地域にあるって、考えたら驚きなんですよね。
ビザンチンの職人技に感銘を受けた地元の職人さんが、我も我も、という感じで、よくわからないままに作っちゃった、みたいなもんなんでしょうか?




オリジナリティは、半端ないです。それはもう、ロマネスクに通じまくりです。
これなんて、もう傑作というしかないです。




象なんでしょうけど、赤ちゃんらしいのは、どう見ても恐竜のちっさいの、笑。
そしてちりばめられた円は?モダンすぎ。
職人さんの意図もわからないし、表現力、アバンギャルドすぎ。

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  1. 2018/06/11(月) 02:27:02|
  2. プーリア・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

No title

現役の教会のようで、、、
信者の為の椅子があってせっかくのモザイクが見難くて
残念ですね!
せっかくの憧れの教会の様子がこの状態では
博物館にしてもらいたいとも思うのは当然ですが、、、
土地の人達は自分達の教会は、観光客にみせる目的でつくられていないとか思うのでしょうか?

モザイクの劣化とかがあれば、博物館にするかもですね!
ナイス・ポチ!

検索して椅子の置いていない状態の全体の様子の写真を
見ました。
海洋貿易の地だったので、キリスト教徒以外にも
ユダヤ人、モスレムなど沢山の宗教の違う人達の住んでいた
土地だったのですね!
ビザンチンのモザイク職人が作っていたとすれば
もっと上手な出来上がりになっていたように
思いますが、、、
旧約聖書の時代から延々と中央の大きな木の両側に
人物や動物が表されているのですね!
  1. 2018/06/11(月) 11:06:00 |
  2. URL |
  3. Atsuko #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

去年私が行ったときも全く同じ状態でした。作ったのは修道士ともビザンツ人修行者ともいわれるパンタレオン。
今春北ギリシャマケドニアのイタリアルネサンスを準備したともいえる素晴らしいい壁画をみて(ホームぺージアップはもうすぐ)もうロマネスクには戻れないかも、なんて思いましたが、矢張りロマネスクかわいい。明後日からかわいくないアルザス・ラインロマネスクの旅です。
  1. 2018/06/12(火) 11:55:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> Atsukoさん
現役の教会の方が好きですけれど、何もここまですき間を残さずにびっしり椅子を並べることはないと思います、はい。いじわるとしか思えない。っていうか、ミサでも、これだけの椅子が埋まるとは、ちょっと思えないもんですからね~。
ビザンチンの職人だったら、このデッサンは怒ると思います、笑。素人並みです。または、超芸術家。
  1. 2018/06/13(水) 21:39:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> ykさん
アルザスですか~!
最近、インスタのお友達がアップされている写真をいくつか見て、地味だけと、楽しい柱頭が結構あるようなので、きっと気に入られるのでは。
マケドニアは、ビザンチンですか?
幅広く、攻めていらっしゃいますね~。HP楽しみにしています。
  1. 2018/06/13(水) 21:41:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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