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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

アンドレア・ペッレグリーノ教授の情熱(カサラーノ1)

2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その22

オートラントのサン・ピエトロをあきらめて向かったのは、カサラーノCasaranoという町です。

この一連の記事の最初の方で紹介した、今回の旅のよすがとした、数年前のプーリア修行の際にゲットしたプーリアの洞窟教会のビザンチンの冊子にも、写真入りで言及されていたモザイクがあったのですが、斜め読みばかりしているいい加減な私は、そのモザイクが、関連で言及されているラベンナのモザイクと思い込んでいて、この地に、そういったものがあるとは、夢にも考えていなかったのです。
幸いにも、今回の同行者が、この旅にジョインしてくださるにあたって、大きな興味を抱いてらしたということで、初めて冊子をちゃんと読んで、ありゃあ、ラベンナじゃないし~!と茫然とした次第。なんていい加減で間抜けなのか、と我ながら、深くあきれました。

ネットで調べたところ、週末は開いているようだ、ということになり、なんとしてでも行かねば、ということで向かった次第です。

町の様子がわからないので、停車できるところに車を置いて、徒歩でアクセスしました。
しばらく歩くと、広場の向こうに見えてきました。




サンタ・マリア・デッラ・クローチェ教会Chiesa di Santa Maria della Croce。
なんという地味な姿でしょう。
これは、後陣が東向きだとすると、北側の壁になります。今の入り口ですが、この辺りの建築は、かなり近代の鉄筋コンクリートですね。

後陣側に回っても、風情はありません。




創建はかなり古いものなので、もともと円筒形の後陣スタイルであったはずはないのですが、それにしても、構造的には、中世の面影はあまり感じられません。
ファサードは、入り口からは右の方に回り込みます。




素朴なバラ窓を取り囲んだ一部に、古い構造物の石組みの後を残しているようですが、全体は、後代のものとなっています。イメージは、ロマネスクのようにしていますが、原形はないと言ってもよい様子です。

そういう状況の中、よく、このバラ窓だけでも残されたものだ、と、ありがたさが感じられます。




素朴ながら浮彫が施され、相当古いものだと思われますし、これが置かれてしかるべきファサードだったのだ、と想像するよすがになりますから、あるとないでは、建物としての価値が、全然違うと思います。

さて、建物はともかくとして、教会に着いた時、扉は固く閉ざされていました。
事前に得た情報だと、土日の16/18時に開いているとあったのですが、ちょうどその時間に来ているのに、開いておりません。
あとから考えたら、確かに日曜日でしたが、イースターの日曜日なので、他の週末とは事情が違うのですが、自分の方は修行スイッチ入ってますから、そんな世間の事情と無縁状態。
なので、遠慮会釈もなく、記されている電話番号にかけてみたのです。

なんという幸運か、イースターのお休みだというのに、ちゃんと答えてくださる方がいたのですが、自分はカギを持っていないから、カギを持っている人に連絡してみる、と言ってくださいました。細かいやり取りは、すでに忘却の彼方なのですが、最終的には、カギを持っている方の名前と電話番号を教えていただき、自分で電話します、ということになったと思います。
この辺りでも、なお、傍若無人の私。迷わず電話したところ、ちょっともごもごした話し方の男性が応え、「今、教会前?では、10分くらいで行くから待っていてください」といううれしい対応だったのです。

そして、本当に10分足らずで、駆けつけてくださったのが、この方。




アンドレア・ペッレグリーノ教授Dott.Andrea Pellegrino、その人です。
と言ったところで、勿論有名でも何でもない方なんですけれど、おそらくこの教会を訪ねて、この方のガイドを受けられた人は多数いらっしゃると思います。そして、感銘を受けない人はいないと思います。
それほど、情熱と思いを込めて、ガイドしてくださる市井の研究者です。

この日も、おそらくこの時まで、イースターのランチを楽しみ、のんびりと過ごされていたと思うのですが、まさにそういった正装されていましたしね。でも、小さなフィアットを飛ばして、来てくださり、いきなり説明に力が入っています。

この正装を見て初めて、イースターの夕べに、電話で呼び出すとは、何事ぞ、と自分の行動にあきれたわけなのですが、彼に感謝する暇もなく、熱の入ったガイドに引きずり込まれる次第となりました。
この方、1931年生まれで、御年80歳を超えられて、だから、お電話ではちょっともごもごされていたのでしょうが、かくしゃくとされていて、しゃべりにもまったく問題なく、そのお年とは思えない素敵な紳士でした。




一緒に写真を撮りましょう、ということで、右隣で手をつないでいるのは、私ですが、寝、素敵な方…。
ガイド内容も素晴らしかったのに、ここでも、録音という手段を思いつかず、ほとんどのことは忘れてしまって、バカです、本当に。
また訪ねる機会はあるかもしれませんが、ペッレグリーノさんに会えるチャンスは…、と思うと、大後悔です。

この方にしても、カルピニャーノ・サレンティーノの友の会の方々にしても、また、モットラのマリアさんにしても、このときの旅では、こういった地元の宝を愛し、研究し、それを訪問者に知らせたい、伝えたい、という思いの強い人々に、これでもか、というような出会い方をして、そういう意味でも、本当に稀有な修行旅でした。
どれもが、学術的な研究という側面からは、あまり取り上げられていない傾向が強く、だけれども、実際は美術史上、とても重要なものばかりで、研究する価値が大いにあるものばかり。でも、世間の研究者は、勿論、どれにでも手を出すわけではないので、これらは、地元の人々の愛で、守られ、語られることがなければ、忘れられ、損壊し、という運命だったかもしれないんですよね。

というわけで、実は隠れ目的なオートラントの床モザイクだったのですが、正直言って、それ以外があまりにすごくて、オートラントの方が付け足しのようになってしまったんです。この日は、つくづくそう感じさせられました。

教会の美は、次回。

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  1. 2018/06/18(月) 01:22:45|
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コメント

No title

世の習いとは言え・・・・・・

御高齢の方が引退または永眠されて失われて行くのは残念な事ですね!
素敵な解説!本当に録音して置かなかったのが残念ですね?

御健在の内に再訪出来たら良いですね。
今度は忘れずに録音してね!
  1. 2018/06/17(日) 20:53:00 |
  2. URL |
  3. 古民家の田舎暮らし<山下亭> #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

教会で外見が地味だと実はとても素敵だったということはよくありますよね。
素敵な方~~!これからもガイドを続けてほしいなあ。
corsaさん、手が綺麗!
この絵画も気になります!
  1. 2018/06/17(日) 22:03:00 |
  2. URL |
  3. まーたん #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> 古民家の田舎暮らし<山下亭>さん
再訪の機会、あるといいのですが。でも元気そうだったから、まだまだ再会の可能性は高いかもしれません。そう祈ります。
こうやって好きなことを持ち、お元気にお過ごしの高齢者を見ると、嬉しくなります。明日は我が身、と言っても、自分は、この年になって、これほど元気でいられるとは思えません、笑。
  1. 2018/06/20(水) 21:48:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> まーたんさん
ご無沙汰です!
アンドレアさん、本当に魅力的な方でした。お年的には、間違いなくおじいさんですが、こういう方、およそおじいさんというのが、これほど合わない人もいないという紳士でした!こういう年の取り方をしている人は素敵ですよね。
手をほめていただいて、ありがとう~!手だけは自慢だったのですが、ケアしないので、もうボロボロです、笑。情けない。
絵は、次回紹介しますよ。
  1. 2018/06/20(水) 21:50:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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