2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その23
カサラーノCasarano、サンタ・マリア・デッラ・クローチェ教会Chiesa di Santa Maria della Croce続きです。
前回紹介したペッレグリーノ教授にいざなわれて、いざ、内部のお宝とのご対面です!
まずは、やはり、後陣の筒型ヴォルト部分に残っている、素晴らしい中世のモザイク。
これ、すごいです。こうやって小さい写真で見ると、衝撃が伝わりにくいかもしれませんが、そして実際に、さほど大きいものじゃないですが、色の鮮やかさ、細かいテッセラ、そして複雑な幾何学模様の迫力は、まさに息をのむという表現がぴったりのモザイクです。オートラントの床モザイクのおおらかさに、ある意味あきれた直後ですから、その繊細さには、さらに打たれました。これこそ、ビザンチンの技術を使ったモザイク。
こういう形で残されています。
遠目には、絵にしか見えない細かさ、繊細さですが、フレスコ画だったら、ここまで鮮明に残ることはありえないので、よくぞモザイクだった!と感動します。
ラベンナのモザイクもそうですが、ビザンチンのモザイクは、装飾性が高く、中心のフィギュアを囲む額縁のような役割の帯装飾や、メインのフィギュアの背景などが、最も面白く、魅力的だと、個人的には思っています。
ここのモザイクは、まさにその典型というか、見事としか言いようがないですね。
幾何学的な装飾は、奇をてらったものではありませんが、どれも色遣いが独特で素晴らしいです。上の、組紐模様の、グラデーションでもない、異なる色の組み合わせ。
この辺り一帯で、最も古い時代のモザイクとされています。
モザイクは、建物と同時に作られるので、そういう考えから、このモザイクは、5/6世紀のものとされています。ラベンナの、有名なガッラ・プラチディア霊廟と同時代。
この部分しか残されていないのが、つくづく残念です。おそらく、古い時代の建物は、この部分だけの小さな礼拝堂的な建物で、ガラ・プラチディアのように、全体がモザイクで覆われていた可能性があります。
もちろん、これだけでも残ってくれたから、そういう想像もできるわけですが、いやはや、全体にこういうすごいものがあったとしたら、なんて色彩にあふれる派手やかな内部だったことでしょう。
薄暗いところを、照らしだすような、そういう明るいモザイクですから、訪れた人々は、目がくらむような思いで、天上を見上げたのではないでしょうか。
材料は、白や赤など色石、ガラスが混じっているようです。赤い石は、ナイル奥地から、また、美しい水色のトルコ石はシリアからもたらされたそうです。レンガのかけらなども使われているそうで、それは、早くとも5世紀以降であることの証拠になるそうです。
図像は、ヴォルト全体を撮影した写真でわかるように、左右対称となっています。どちらも、メインのフィギュアは、動物たちなのが、楽しいです。
鳥のフィギュアなどは、ラベンナで見られるモザイクとも酷似していると思います。ということは、ビザンチンのモザイク職人がかかわっていると考えられますよね。直接か、または教えを受けた現地の職人さんの作品か、そのあたりはわかりませんが、素晴らしい技術の持ち主だったことは確かです。また、ビザンチン世界の図像にも忠実だったのでしょう。
左上の果物は、確かイチジクとおっしゃっていたように記憶します。
この写真の、上の方にある野菜は、そら豆だと。前の日に、宿泊したアグリツーリズモの夕食で、そら豆をお腹いっぱい食べたばかりだったので、納得です。ずっと昔から、ここにはそら豆があったということですよね。そら豆、もしかすると、ビザンチン世界からもたらされた野菜なのかな。
そういう卑近な素材が描かれたかと思うと、やはり同じ上の写真の、額縁部分の、組紐の内側に並んでいる四角いハンコのようなモチーフは、なんと彗星を図像化したものだというんです。
確かに、背景は紺色で、星がちりばめられている様子です。
それにしても、なんて独創的な、そして不思議に現代的なデザインでしょうか。驚嘆しました。全体で見ると、すごく鮮やかですが、一つ一つは抑えた色合いで、それぞれの組み合わせも独創的ですよね。
波型文様は、海に近い土地で、よく使われるモチーフで、浮彫でもよく見られます。それを、こんなはっきりとした紅白という色であらわしてしまうって、すごい大胆です。
一方で、宝石が並べられた帯は、宝石のわりに、規則的で意外と地味な様子が、面白いですね。
この筒形ヴォルトモザイクの、ちょっと本堂寄りに、クーポラが持ち上げられていて、そこには、また趣の違う絵があります。
これを見たら、天上全体が、同じようなモザイクでびっしり覆われていたであろうことが、想像できますよね。手前の方が、クーポラになります。
このクーポラの真下に、現在使われている何の変哲もない祭壇があるのですが、ペッレグリーノさんが、カメラをここに(指で正確に置く場所を示してくれて)上向きにおいて、シャッターを押してごらんなさい、というので、最初、何をおっしゃっているのかわからなかったんですが、クーポラ全体を、ぶれる心配なく撮る技術を伝授してくださったんです。
その通りに撮影したら、見事に、全体が撮れました。
こちらは、青の美しさが印象的です。
ペッレグリーノさんの説明によれば、外周は、虹の七色、そして、濃い青の層、薄い青の層、が 置かれて、全体で円が九層になっています。真ん中に置かれた黄金の十字架が天井で、天井までは九層の天を超えていかなければならないという教えを表したものだということでした。
説明を読むと、青が三層あって、それが三位一体を表すものだ、とありました。確かに、濃い青と水色の間に、灰色っぽく、もしかしたら変色した色があります。
天井を取り囲むのは、宝石の帯と、植物の帯。
これは、やはり地上との境目を表しているのでしょうね。
それにしても、なんという仕事。これだけのテッセラを作ること、はめ込んでいく作業を考えると、気が遠くなるような作品です。そして、どれだけの時間がかかったのかを考えてもまた、気が遠くなりそうな忍耐力ですね。昔の職人さんってすごいなぁ。
コスト・パフォーマンス、無関係ではないとはいえ、現代と比べたら、無関係と言えるくらいのレベルでしょうから、こういうことができたってことなんでしょうね。
写真を見直して、改めて感動しました。
また行きたくなってきました。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2018/06/21(木) 05:42:03|
- プーリア・ロマネスク
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| コメント:6
> 古代遺跡めぐり<山下亭>さん
説明で、さらに楽しくなりますが、説明がなくても、すごいモザイクでした。
- 2018/06/24(日) 21:31:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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> Atsukoさん
そうなのですね。では、かなりビザンチンの図像に忠実な表現が施されているのですね。それにしても、このような小さな村の小さな教会に、たいしたものがつくられたものです。そして、今こうして残っているものもすごくて、本当に信じがたい教会です。
- 2018/06/24(日) 21:32:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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カサラーノいいですよね。去年の南イタリア旅でとても立ち去りがたかった教会の一つ。天井を撮るのに私の📷は液晶画面が動かせるのでレンズは上を向けて画面を動かし斜め下を向いた姿勢て撮れるので重宝しています。床に置いた方が手振れしないし距離もとれるのでより広く写せていいですね。ビザンティンの旅では床に置いてタイマーをセットして撮っている方もいらっしゃいました。
- 2018/06/26(火) 16:58:00 |
- URL |
- yk #79D/WHSg
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> ykさん
ここは、写真の撮り方の指導も含めて、笑、ペッレグリーノさん抜きには語れない教会です。
グループで行かれているので、お会いされてないのでしょうね。残念です。
- 2018/07/01(日) 22:22:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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