2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その24
カサラーノCasarano、サンタ・マリア・デッラ・クローチェ教会Chiesa di Santa Maria della Croce続きです。
ビザンチンの遺構としては、モザイクに加えて、この教会には、フレスコ画も残されているのです。
カルピニャーノ・サレンティーノなど、同地域に遺されたビザンチンのフレスコ画と比較して、この教会に遺された、最も古い時代のフレスコ画は、10/11世紀に遡るとされています。
また、他の多くのビザンチン時代のフレスコ画のように、ここでも、発注者や制作時期が、署名のようにあるので、それで、多くのことがわかったりするようです。
ペッレグリーノ教授が、指さして、説明してくださっているところ。
この書き込みによって、この、角柱に描かれたフレスコ画(全体像は、トップの写真)が、サンタ・バルバラのお姿だということがわかります。
ビザンチン時代に描かれたフレスコ画では、聖人の実際に生きた時代にかかわらず、ビザンチン的な衣装で描かれます。バルバラさんも、宝石や縫い取りが施された豪華な衣装で、また、ビザンチンらしいキラキラのアクセサリー満載で描かれていますね。
お顔のアップ。
鼻輪?と思っちゃいましたが、鼻の下の溝っていうか、それを強調しているんでしょうね。顔の造作を、全体に強調するのがビザンチン風だと思うのですが、やはり東方が入っているから、目鼻立ちのはっきりした、西欧の白い人たちとは違う造作の人のイメージが強かったせいなんですかね?大体、眉毛とかも、すっごくクッキリですよね。目力も半端なし。
傷んじゃっている聖母子。
これも、角柱に描かれているものです。後代に、上塗りされてしまったのでしょうね。こうやって、小さく均等に傷つけるのは、漆喰のノリをよくするためのものだと聞いたことがあります。でも塗りこめられると、発見されれば、逆に保存状態が良いケースもあるのです。
マリアが幼顔を抑える様子や、ジェズの祝福の仕草が、ギリシャ式と。
ジェズのお顔が、幼顔には見えないのも、ビザンチン風でしょうか。
実は、ここでも、説明を伺うのに忙しくて、写真はあまり撮影していなくて、今更ながら、なんで~?という気持ちになっています。現地ではもちろん、現物を見ながら説明を伺うのが第一で、その幸運のために印象が強いのですが、時間を立つと威力を発揮するのが、写真です。それが、足りない…。
壁や天井には、もうちょっと時代の下るフレスコ画が見られます。
おそらく、創建当時から10/11世紀ごろまでは、内陣部分はモザイクで、それ以外の場所は、フレスコ画で、全体が覆われていたのでしょう。その後、モザイクはそのままに、柱のフレスコ画は、後代のフレスコ画で、上塗りされてしまったのかもしれません。
天井部分は、かなりのものが、戦前までは残っていたのだそうですよ。
ペッレグリーノさんが、子供の頃は、全体にフレスコ画があったということですが、戦争で建物が壊されたりして、多くの部分が剥落してしまったということ。残念ですね。
12世紀から14世紀にかけて、描かれたもので、異なるストーリーが見られるようです。上の写真でも、下段は、最後の晩餐のようですから、聖書のストーリーですが、上段は、別の聖人のお話が描かれているようです。
相当色あせていますが、オリジナルは、かなりヴィヴィッドな色彩だったのではないでしょうか。時代が12世紀以降になっても、ビザンチン的な表現で、リンゴのほっぺたがかわいらしい聖人たち。
上段には、この時代に大変信仰されていたサンタ・カテリーナとサンタマルゲリータの殉教のお話が描かれているようです。
サンタ・カテリーナが拷問されている様子が見えます。痛々しい。
マルゲリータさんが、ひっとらえられた場面。
絵の中に、ちゃんと重要人物の名前が記されているのは、ビザンチンの影響なんでしょうかね?
確か、マルゲリータさんは、意に染まない結婚を強いられて、それを断ったがために首を落とされて、殉教したというような話を、ペッレグリーノさんに伺ったと思います。走り書きのメモも、走り書きすぎて、書いた本人が、解読不能です!
ともかくも、そういった殉教のお話が、聖人昇天の場面まで、自分が子供の頃にはあったんだ、ということは、大変印象的に伺いました。
千年の間保存されていたものが、近代の戦争で、一瞬にして失われてしまうむなしさ。
個人的には戦争は絶対に反対。ですから、憲法の改正にも疑問を持っております。そういう立場を置いといても、千年保たれたものを、何の正当な理由もなく壊すようなことは、やはり正しいとは思えないですね。
自然で朽ちていくもの、朽ちてしまうものは仕方ないし、ここだって、地元の人々の継続的なケアがなければ、戦争を待たずとも朽ちていた可能性が高いのです。それなのに、ケアがあって、千年大切にされてきたものを、壊す行為は、やはり正しくない。
現代の生き証人のようなガイドさんに出会い、そして、その情熱や愛を感じて、本当に素晴らしい、得難い訪問となりました、カサラーノ。
ペッレグリーノさんのガイド、是非多くの人に経験してほしいし、自分も、また帰りたいです。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2018/06/25(月) 05:29:07|
- プーリア・ロマネスク
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| コメント:10
私も憲法改正には疑問があります。自力で防衛するために憲法改正しなくてもいくらでも道はあるような気がします。
破壊された部分を見ても本当にもったいないですね。破壊されなかった部分を必死で残そうとされた方々がこのフレスコ画に対する愛情を伝えてくれているのだと思うと人の力の大きさを改めて感じます。
- 2018/06/26(火) 07:10:00 |
- URL |
- まーたん #79D/WHSg
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地元の教会を大切に守っている方たちの
おかげで美しいものに出会えて良い旅でしたね!
ナイス・ポチ!
イコンのばわいですと必ずインスクリプション
(名前を書き入れる)を
キリル文字で入れる約束になっています。
お顔などをかくときは、濃い色のベースから少しずつ
明るい色に7回塗っていきます。
闇から光りへということですが目の周りは
ベースの濃い色のまま残しますので輪郭がハッキリしていますね!
髪の毛なども金髪はありえないのですが目もブルーは使いません
髪の毛は焦げ茶がベースで茶色と黄色のスジを入れますので
見た目には焦げ茶に見えますね!老人にはグレイや白の色を
入れます。
服装はビザンチン風にかきます殆どの女性は被り物をしています。
- 2018/06/27(水) 10:04:00 |
- URL |
- Atsuko #79D/WHSg
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> まーたんさん
土地に生きることは、必ずしも、国という概念とは結び付いていないかもしれませんが、それで当たり前なんですよね。島国の日本では、考えにくいことなのかと思います。
大切なものは大切なのだ、と思える心が、いつまでも失われないことを祈ります。
- 2018/07/01(日) 22:14:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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> Atsukoさん
さすが、実際的な知識がお詳しくて、勉強になりますね。
絵画にまつわるいろいろを、きちんと書き込むというのは、面白いですよね。発注者さんが、やはり、俺が!という自負を知らしめたいという文化だったんでしょうか。ビザンチンも、いい加減長く続いたと思いますが、どの時期にも、そうやって、関係者の名前が記されたのでしょうか?
- 2018/07/01(日) 22:16:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
- [ 編集 ]
約束上では、イコン作家の名前はかきいれません
修道者がイコン作家のことが多くてその時期には
名前はいれていないはずです。
壁画もイコンもかいている人間の手腕によるものではなく
神の手をお借りしてかかせていただくという考えです。
発注者は、恐れ多いのでごくごく小さい人物を書き込みますが
教会に寄付したい人が名前を入れていると思います。
最近の傾向では古いイコンのようにしつらえて
板を焼いたりして、高く売るとかがありますので
イコンの裏側に作者名をいれるようにしています。
時代がわかるようにしています。
- 2018/07/01(日) 23:29:00 |
- URL |
- Atsuko #79D/WHSg
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> Atsukoさん
そうなのですか。まるで、現代のカタログのように、関係者に言及されると伺ったので、作家の名前も必ず入るものと理解していました。
発注者は、確かに寄付しているわけですから、そういうことなのですね。
時代にもよるのですね。
- 2018/07/04(水) 18:59:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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本来はビザンチン式のイコンや壁画には形式がありますので
自分はこのようにかきあらわしたいなどという考えを持つ人には
伝統的なものをかくのは無理です!
一度アメリカ女性が研修に参加しましたが
『私はこれをかきたい、この色を使いたい」と
大騒ぎをしていて、、、先生が「研修費はお返ししますから
もう研修には来ないでください」とお引取り願いました!
こういうかたには3人ほど出会ったことがあります。
自分の画才を見せたいとか特に自己顕示欲の強い人には
無理な仕事です。基本を覚えてから少しは自分でアレンジできるようにはなりますが、、、お習字などもはじめに基本をしっかり
覚えないと、くずし文字なども書けませんね!
イコンも壁画も祈りの形ですので、謙虚な気持ちで黙想しながら
かいていきます。
- 2018/07/04(水) 22:31:00 |
- URL |
- Atsuko #79D/WHSg
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> Atsukoさん
イコン風の絵、とイコンでは、大きな違いがあるということなんでしょうね。
西洋絵画は、宗教画から出発して、現代まで来ていると思うのですが、宗教画については、信仰に根差しているというところは変わらないということですかね。
- 2018/07/08(日) 17:17:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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そうです!
イタリアでルネッサンスが始まって
人間回復で西欧ではイコンを止めて人間の人体の美しさに目覚めましたね!
東欧では少しはイタリア絵画の影響を受けることもありましたが
伝統的なイコンの形式を守りました!
イタリアには移行期の絵画も沢山ありますので嬉しいことですね!
- 2018/07/08(日) 17:47:00 |
- URL |
- Atsuko #79D/WHSg
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> Atsukoさん
せっかくたくさんあっても、もうほとんど興味がなくなっちゃって、笑。
もったいないみたいですよね。
かつては、辛気臭い、と振り向きもしなかった宗教画の方が興味あるなんて、面白いもんです。
- 2018/07/08(日) 18:02:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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