2016.08.オーヴェルニュの旅 その26
次に訪ねるのは、オーベルニュの数あるロマネスクの中でも、超有名教会の一つです。
イソワールIssoire、サン・オーストモアン教会Eglise Saint Austemoine。 オーゾンの後、立ち寄り可能な小さな教会がいくつかあったのですが、もうキリがない、と思い、好き嫌い関係なく、オーベルニュに来たら絶対に訪ねなければならないこのイソワールを目指しました。 本当は、小さな田舎の教会が好きなので、そっちに時間を割きたい気持ちが強いのですが、経験上、「見るべきものは見ておかねばならない」のは、間違いないので。
で、事前に調べといた住所をナビに入力して走ったら、なんといきなり町に入り込み、いきなり、教会の後陣側にある駐車場にたどり着いてしまって、愕然でした。 上の絵地図の、中央下にあるのが目的の教会で、そのすぐ下のPが駐車場です。 イソワールは、決して小さな町ではなく、交通量も人も行きかっている場所ですから、本当にびっくりでした。
というわけで、車を降りた途端に、この壮大な後陣を見上げることとなりました。
ブレスルでもそうでしたが、もうこの大きさで、ひるんでしまいます。これは本能的な好き嫌いなので、どうしようもないことです。 でも、美術史上、建築史上、避けて通れないから、見ます(なんか、変に悲壮ですみません)。
連続するブラインド・アーチとつけ柱の側壁。これは、スタイルとしては、好きなものです。大きさが苦手なだけで。 翼廊に当たる壁。
上の方に、やはり小さなアーチが並んでいて、真ん中のは三つ葉でかわいいです。その下に、軒持ち送りがありますが、オーベルニュに典型的な鉋屑が、これでもか、と並んでします。この執拗さが、山の民というか、辺境の民というか、なんかそういうカルチャーを感じさせます。側壁の方も、延々と鉋屑。
でも、この多様な石色は美しいですね。 お天気が悪い日は、ちょっと気が滅入るタイプの暗い系ですが、バリエがいいです。この辺りでは、こういう石が取れるのでしょうか。
下の方に、浮彫がはめ込まれています。かなりでかいものです。
こんな場所で雨風にさらされているだけあって、相当痛んでしまっています。感じとしては、ちょっと時代が下るものでしょうか。
これでは溶けすぎで、テーマもよくわからないですね。
実はこうやってなめるように眺めて、自分が親しみやすい何かを探していました。アプローチする段階で、気持ちを入れないと、なんか辛いんで。 ぐるりと回ってたどり着いたファサード。
後ろからは塔に見えた高い部分は、こういう構造になっていたのですね。 何とも地味で、私には魅力的に感じられないファサードです。言いたい放題ですね。 入場します。
おお、これは、ポワトーの方によくあった、柱まで色付き手かけすぎタイプの内装教会です。色がなかったら、がらんとしたただの背の高い構造物という印象なのかな。構造的な面白さが感じられなそうです。 かといって、彩色が、よりよく見せているかというと…。 これも好みの問題ですが、おそらくフランス人は、こういう色合いとか彩色が、割と好きなんでしょうね。なんかちょっとプロヴァンス風な色合いというのか…。
どひゃぁ。
ちょっと、心の準備が…。 ということで、一旦地下に避難です。クリプトがあります。
今、写真で見ていても、ほっとする空間だったことがわかります。 ツルツルにきれいにしすぎていますが、太くて装飾性のない円柱の林は、味わいがあります。このクリプト部分は、相当時代が古いものなのではないでしょうか。オリジナルは、天井の石がむき出しとかそういう構造だった可能性も感じます。背も低いし、このしっかりした円柱は、やはりこれだけの支えが必要だったという時代の技術なのではないでしょうか。
このがっしり感は、魅力的です。
この質実剛健な円柱に守られて、ここには聖遺物入れが鎮座しているのです。教会が捧げられて聖人の何かがあるようです。
美しい青と水色です。
いや、ここはよかったです。 目も休まりましたので、いざ、色彩に対峙します。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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2018/09/01(土) 02:40:02 |
オーベルニュ 03-63-15-43
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| コメント:5
ブリテン諸島最北端、シェットランド本島で見た教会の内部もこんな感じでした。大きさと空間に驚いた記憶が在ります。
お国や時代により教会もいろいろ違いが在るのですね。
今気が付きました。
知らずの内に私も信仰心は無いのですが・・・・・・・
多くの教会を見て居る事に気が付きました。
最初はフランス!シテ島易いシャルトルが印象的でした。
次がドイツ、ブルージェ、イタリア、ロシア、英国、スコットランド、エジンバラ、など今思えば結構、教会を見て来て居るのですね?
眺めて通り過ぎて来ただけですが・・・・・・
2018/08/31(金) 20:57:00 |
URL |
古民家の田舎暮らし<山下亭> #79D/WHSg
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彫刻のテーマ、色付けに関して「フランスロマネス散策」というhome pageを見つけました。リンクをはったらこの欄からはねられてしまったので検索してみてください。ここのところ2回に渡ってドイツロマネスクの旅をしてRomanesqueは大地にうずくまるような小さな鄙びた小教会、というイメージは変えなければいけない、ということです。ドイツロマネスクはひとことで言えば大きくがっしり最初はなかなか違和感がぬぐえませんでしたが、振り返ってみると、これまでみた教会でも ドイツロマネスクの影響によるものではないか、思うものが多々あります。この西正面もドイツの西構えの影響が感じられます。
2018/09/01(土) 02:43:00 |
URL |
yk #79D/WHSg
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字数オーバーになりそうなので、一度切りました。
このあたりでドイツロマネスク旅もなさっては、と老婆心<文字通りの老婆ですが>ながら提案いたします。
そうは言っても田舎の風景に溶け込んだロマネスクの小教会にはいまだ心ひかれていますが、、。
2018/09/01(土) 02:47:00 |
URL |
yk #79D/WHSg
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> 古民家の田舎暮らし<山下亭>さん
欧州では、教会は町村の基本だったりするし、観光地の一つでもあるし、あちこちいかれていれば、当たり前のように訪ねてしまう場所に一つだったりしますね。おそらく、ご自分で認識されている以上に、多くの教会を訪ねられていることだと思います。
でも、なんとなく見て終わりってなっちゃいますよね。ロマネスクにはまる前は、どちらかと言えば、教会はいいや、ビールにしよう、というタイプでした~、笑。
2018/09/02(日) 17:16:00 |
URL |
corsa #79D/WHSg
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> ykさん
すごいサイトをご紹介くださり、ありがとうございます。マメな方って、いらっしゃいますね。
それにしても、あちこちいらっしゃって、ストイックに探究していられるご様子、すごいです。YKさんは、どちらかというと、学術的ですよね。私は、どちらかと言わずとも、ミーハー的、笑。
ただ、思うのは、ロマネスクというのは、後代に後代の人たちが勝手にくくった様式ですから、そこにこだわることはないのではないかということです。どれが本流とか源流とか、そういうのも、どっちかというと後代の研究者の考えで、それはそれ、という風に、私は捉えています。
小さい古い教会が好き、プリミティブな浮彫やつけ柱が好き、ということで、ドイツや北欧にあるものにはあまり惹かれませんので、たぶん、行かないと思います。好きなものを見るのが目的ですから、研究は研究者に任せて、私は、大好きなものだけを追いかけていくつもりですよ。だって、時間もお金も足りませんもん、笑。
ドイツについては、Ykさんのサイトで鑑賞させてもらうつもりですので、よろしくお願いします~!
2018/09/02(日) 17:31:00 |
URL |
corsa #79D/WHSg
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