2016.08.オーヴェルニュの旅 その27
イソワールIssoire、サン・オーストモアン教会Eglise Saint Austemoine、続きです。
しっとりとした石色のクリプタで、目を休めた後(笑)、かなり派手な色彩あふれる本堂へ戻ります。
内陣部分は、本当に色があふれている感じです。円柱の彩色も、結構最近塗りなおしたようなピカピカぶり。どのくらいの頻度で、お化粧直しをするんでしょう。フランスでは、内部を漆喰で真っ白にぬりたがる傾向もあると思いますし、一般的に石やレンガのむき出しを嫌うんでしょうかね。ドイツとか、外壁もきれいにぬりこめちゃう文化との共通性を感じますね?
ここでは、ベースに赤が多用されている上に、これでもか、と金がちりばめられていますので、インパクトが半端ないですね。
ここまで細密に彩色されていると、表情などは、石そのものには現れないものが表現されていることとなるので、石工さんの作品ではなく、彩色した職人さんの作品ですね。
実物はかなりでかいので、色のない状態でも、結構表情は読めると思うのですが、でも、ほっぺたが赤いかどうかだけでも、ずいぶんイメージは変わるし、まったくの別物になるでしょうね。
これなど、もうほとんど現代アート的な様相を呈しています。
ニキ・ド・サンファル?みたいな、笑。
往時はどうだったか。彩色は、少なくともこの教会ではあったのだと思います。
色彩的に、どこまではっきりした色が使われていたのかは、よくわからないのですが、ロンゴバルド時代の彩色の再現映像などを見た経験から、かなり派手な、おそらく、こういう色合いに近いものであった可能性が高いのだと思います。当時は難しかった色などはあるでしょうか。
ただし、当時、この明るさはないはずなんですよね。
今回の旅で、目から鱗だったのが、ある田舎教会で、地元のおじいさんが押しつけガイドをしてくださったのですが、「建物の中で、オリジナルの窓はここだけで、あとは全部後代に拡張されている」というお話があったんです。
それで、はっとしたんです。
ロマネスク時代というのは、まだ技術の問題があるから、開口部は最低限にしか取れなかったわけですよね。だから、今でも田舎の小さい教会では、往時のまま外の光がほとんど入らなくて、内部は人工の明かりがないと、足元もおぼつかない、なんていうことがままあります。
でも、フランスのように、ロマネスク以降の発展が著しく素早く普及した国では、ロマネスクの建物をそのまま維持しているケースすら少なく、経済の発展した町村では、多くの部分を改修変容してしまっています。当然、開口部は広い方が内部が明るくなって便利ですから、窓も拡張しているんですよね。
今まで、そこに考えが至らなかったなぁ、と、気付かされた、ということです。
この教会は、外観からわかるように、ロマネスク以降の発展部分が大きく、現在ステンドグラスがはめ込まれている窓は、当然その後に拡大された窓ですから、外光も十分入り、その上に人工の照明もあるので、この派手な彩色の浮彫もクッキリすっきり鑑賞することができます。
でも、ロマネスク当時は、もしこれだけ派手な彩色があったとしても、ほとんど暗闇と言ってもいいような中、実際、石色だけでは、その浮彫の内容が識別できたかできないか、という状態だったと想像します。
この夏の旅でも、実際、ほぼ真っ暗闇、という側廊にある柱頭の浮彫が、ほとんど識別不可能、という教会を訪ねることがあり、もっと光を!と思うと同時に、せめて彩色されていれば、少しはわかったのではないか?と思ったんです。
とはいっても、これはねぇ…。
石の浮彫だったら、ちょっと面白いとか、かわいいとか思いそうなものですが、これだけクッキリ彩色されていると、なんかきもい感じもあります…。
でも、教会創建当時から、もうこういうもの、として来ているのであれば、伊勢神宮じゃないですが、技術の継承のために、何年かごとに、彩色しなおす、ということもありなんでしょうかね。そのあたりはどういう風になっているのか、まったく知らないのですが。
個人的には、このくらい、剥げた加減でちょうどいいかも、と感じますが。
柱の彩色も、せいぜいこのくらいの状態で、保ってくれたらいいのに、と思わないでもないです、笑。
ちなみに、ちょっと暗めの一角にあったもの。
当時は、さらに暗かったはずなので、色があることで、かろうじて見える。そういう様子がわかるような気がしませんか。
やっぱり、現場ですよね。行ってみて、いろいろを見て、感じて、なんとなく思うことがたくさん出てきます。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2018/09/03(月) 01:09:10|
- オーベルニュ 03-63-15-43
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- 2018/09/13(木) 14:32:00 |
- URL |
- shimanuki #79D/WHSg
- [ 編集 ]
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ご連絡いただける際は下記のメールアドレスまでお願い致します。
r.shimanuki@sprix.jp
- 2018/09/13(木) 14:33:00 |
- URL |
- shimanuki #79D/WHSg
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> shimanukiさん
ご丁寧なご連絡、ありがとうございます。
当記事が、学校関係者の方々にお役に立つような内容とも思えず、また、管理人が関与しない状態で、記事や写真が独り歩きすることは好みませんので、せっかくのお誘いですが、見送りたいと思います。
- 2018/09/13(木) 21:32:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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