2016.08.オーヴェルニュの旅 その50
前回、あまり意味のない訪問をしたキュンラCunlhatから、ほぼ真西に30分ほど走った町マングリューManglieuが、次の目的地となります。
サン・セバスティアン修道院教会Abbatiale Saint Sebastian。
東方面から町にアクセスすると、確か町の入り口のような位置にあり、教会前はだだっ広い広場となっていて、駐車し放題だったような記憶があります。
カロリング時代創建という情報とは裏腹に、どう見てもゴシック及びそれ以降の外観に、暑い夏の昼下がり、どっと疲れが出たような。
とは言いながら、もう14時近くながら、ランチタイムでクローズしていても文句を言えない時間に、しっかり開いていてくれたのは、事前に調べた9時から18時というオープン時間通りで、ありがたく思いました。
最初に注目したのは、扉口に置かれた、すのこを縦置きしたような柵です。
フランスでは、よくお目にかかるスタイルで、すでにおなじみですが、わざわざ写真を撮っていたということは、ここで初めて目についたのかもしれません。
最初、なんだろうと思ったんですが、ただ、立てかけてあるだけで、押し開けて入れるんです。入るな、といってるのかとも思ったのですが、そういうわけでもなし。おそらく犬猫が入らないような工夫なのかと思いました。本当のところは知りません。
外側も、全体に修復や再建の結果という様子が強いですが、中はもっと激しくそういう様子が勝っています。
辛うじて、基本構造がオリジナルのままかと想像できるのみの、フランスお得意の漆喰ぬりぬりです。
こういう雰囲気って、一瞬萎えますが、せっかく来た以上、目を皿のようにして、細部をチェックしなければなりません。
そうすると、いろんなものが見えてきます。
まずは、片隅に置かれた洗礼盤。
なんてことはない、石の削りも荒い、Grezzo(時々、適切な日本語が出てこないときがあります。というか、ぴったりした日本語がないというのか。これは、生のままの、とか加工してない、とかそういうニュアンスのイタリア語)な感じが、結構好きです。
内部は、3枚目の写真にあるように、後陣側が、完全に新しくなってしまっています。でも、内陣から、扉方向を見ると、扉周辺部だけが、ちょっと古い時代のまま残されている様子がわかります。
これは、残された、というよりは、後代に、漆喰をはがして、古い時代に戻したのではないかと思われます。なら、漆喰ぬりぬりはやめればいいのにねぇ。
その部分だけ見れば、ロマネスク好きもうなずける様子が見られますよ。
身廊を区切る壁部分、偽マトロネオのような構造で、アーチも美しく、また、支えの小円柱や柱頭もよい感じです。石がむき出しで出ているだけで、なんと落ち着くことか、笑。
低い位置に置かれた大きな柱頭。シンプルな植物文様も、とても好ましいです。再建が多く混じっていると思われますが、再建でも何でも、白塗りや金ぴかより、こういうものが見たいので、オウケイ。
そして、カロリング時代の名残でしょうか。大変好みの浮彫が、いくつか、置かれていました。
こういうのが一つあるだけで、好感度は、簡単にアップします。消しゴムハンコのモチーフにも役立ちそうな彫り物ですわ~。
こちらも、お干菓子系で、何ともうっとりの可愛さです。
少しでも好みのものがあれば、やはり入れてよかった、と思います。はるばる目指してきたわけですから。
こういう大振りの植物モチーフは、ツボ。
ま、見るものはあまりなかったので、見学はあっという間に終了。
扉口へ。
扉を押し包むように、両脇に支え壁みたいのを作っちゃったのは、後代の無駄な付け足しですよね。まるで、絵本の「小さなお家」のように、ぎゅうぎゅうされて、扉が辛そうな感じします。この扉が、小さなお家のように、またのびのびできる日は来ないのが、ちょっとかわいそうな気もします。
それにしても、複数アーチ、頑張って作ったもんですね。それも、お団子がポチポチついているだけのシンプルさん。
これだけ壮大なアーチのわりに、柱頭は、ぽちっとちっぽけで、その上、かなり傷んでしまっています。
小さな円柱の表面も、もともとは彫りが施されていたのでしょうか、それとも、全体にただの摩滅が作ってしまった模様かしら。
それにしても、ここまで傷んでしまうと、石でも痛みを感じていそうで、文字通り、痛々しいです。
この部分を見て気付いたのですが、アーチ部分は、お団子だけかと思ったら、ちゃんと色々異なるモチーフのものが、つけられているのですね。
いずれにしても、かなり地味な装飾です。
さて、それなりに、来た甲斐はあったよ、と思えた教会ですが、実は、教会よりなにより、その前に並べられた青空美術館的な情報が、私には最も訴えてきました。
選挙の公示みたいな、結構安普請な状態で、地域のロマネスク教会の情報が、多くの写真付きで紹介されていたんです。
このあたり、リブラドワLivradoisという地域になるのですね。そこに点在する教会の数々。
例えば、このノネットNonetteのサン・ニコラス教会は、取捨選択の結果、あえて訪ねなかった教会。
怖いもの見たさで、ちょっと見てみたい気もしてしまう極彩色。これは、実際に見ても、おそらくこのくらいのインパクトがあるでしょうから、やはり飛ばして正解だったかな、と思ったり。
ここに来る前に訪ねて、おそらく昼休みでクローズだと思われたサン・ディエル・ドーヴェルニュの教会の中身が、やはり、かなり良さそうなので、帰りに絶対寄る!と決意したり(結果は、記事に書いたとおり、開いているはずの時間なのに、クローズでしたが)。
しかし、中に一つ、どうしても目が離せない彫り物満載の教会がありました。
メラMailhatという町の教会。
ここは、すでに通過してきた土地で、方向的にはどんどん北に向かっている行程の中、行かないことに決めて北上してきたわけで、ここで南下するとなると、また予定が押せ押せになる。でも、ここは、行かなければ後悔する!と思い、別に予定が狂ってもいいじゃないか、ということで、次に向かうことにしました。
計画的なようでいて、無計画な旅なので、走行距離も増えちゃうし、朝から晩まで拘束されるし、ということになるんですね。そういう典型的な一日です。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2018/12/21(金) 06:10:28|
- オーベルニュ 03-63-15-43
-
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-
| コメント:4
行かなくて後悔するより、行って後悔する方が納得致しますね。
何度も気楽に行ける所では無いと思うので・・・・・・・
決断は正解だと思いますよ!
- 2018/12/20(木) 23:20:00 |
- URL |
- 古民家の田舎暮らし<山下亭> #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> 古民家の田舎暮らし<山下亭>さん
おっしゃる通りです。大正解だったんです。やっぱり本能には従わないと、ですね、笑。
- 2018/12/23(日) 18:44:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> Atsukoさん
この青空展覧会がなかったら、気にはなっていたけれど、行かなかったわけですから、何でも一期一会。縁がある教会とない教会、あるみたいですね。
- 2018/12/30(日) 11:38:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
- [ 編集 ]