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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

不思議な柱頭と軒送りのおっさんたち(ビキシエール・レ・ミーヌ)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その68

サンティレールSaint-Hilaire(前回、日本語表記を間違えたままアップしてしまいました)から、南西方向に、10分程度のドライブで、次の目的地に到着です。ビキシエール・レ・ミーヌBuxieres-les-Mines。こういうスペリング、もうお手上げ。旅の途上では、自分の頭の中ではフランス語無視で、ほとんどイタリア語の法則に従って、スペリング通り読んでいましたから(ブシエレス・レス・ミネス、みたいな感じです、笑)、今頃になって、初めてちゃんとした読み方を発見している日々です。

この数年の聞くだけ、読むだけの流し学習で、最近でこそ少しは、読み方の法則がわかってきたところですが、これまでは本当にわからなくて、現地で戸惑うことも多かったし、そもそも、町村の名前も、教会の名前も頭に入らず、口頭で発音されても、そこ、知りません、ということが多くて。
これからは、少しずつ、そういうことがなくなるとよいのですが。

ここは、村に入ってすぐに、大きな駐車場が目についたんだったと思います。




もしかして、という期待通り、公衆トイレがありまして、事なきを得ました。何度も書いていますが、修行旅とは、常に自然の摂理との戦いでもあります、笑。夏は、水分を取らないわけにもいきませんし、特に女性にはなかなか厳しいです。

しかし、そういう時に限って、この村の教会近くには、カフェがあったんでした。なんか、損した気分になりました。
駐車場から徒歩5分足らずで、教会です。




Buxieres-les-Minesのサン・モーリス教会Eglise Saint-Maurice(9時/18時)。

ちなみに、ファサードに向かって左側にカフェがありました。真夏でも、ちゃんと開いておりました。

早速入場します。




至極フランスらしい、オーベルニュらしい様子です。どうしても、オリジナルに付け足しやら改築やら増築やらで、いろいろなことになっていて、たたずまいだけで、うおーっていう教会は少ないですが、雰囲気はある方だと思います。

柱頭は、ほとんど植物モチーフ。シンプルさが身上です、かね。




こういった究極的にシンプルなタイプ、いいですよねぇ。これはこれで好みです。
どこにもここにも、こういうタイプの、シンプルでデザイン的な柱頭があります。




デザイン的とか、モダン・センスとか、勝手な印象を述べてますが、こういうシンプルな彫りって、当時としてはどうだったのでしょうね。これはこれであり、だったのか、本当はもっと複雑な彫りが好まれたのか。または田舎の町村では、ディテールに注目する一般人など、いなかったのか。




シンプルでも、やはりバランスだったり配置だったり、すごく考えられています。考えすぎのタイプよりは、まったく考えてなさそうなすっきりタイプの方が、私は好きなんですけど、笑。

この教会で、気に入ったのは、ファサードの裏側に、一段高くなっている二階建て部分がありまして、そこに登れることでした。新しめの教会だと、パイプオルガンとか置かれていて、合唱席になっているような場所です。ここの教会のは、後付けの施設と思います。




目線がちょっと高くなるだけで、すごく偉そうな立ち位置になる気がします。文字通り、上から目線。見えるものや見え方が、地べたからとはかなり変わります。




高いところに上りたがるのは、アレですけど、教会の場合、多くの場合、「上から目線」はとっても意義があります。

植物に隠れるようにして、頑張って生息しているグリーンマンたち。




そして、この一個だけだと思うのですが、人物フィギュアが満載の柱頭。




何とも不思議な人たち。まずは、頭部が、おかしいですよね。角っこの人は、かろうじて、頭髪が彫られていますが、正面に並んでいる人たちは、副柱頭をひっかいているだけで、浮彫にすらなっていません。
角っこの人は、自分の左隣にいる小さい人のほっぺたをつねっているようです。




子供なのか、小さい人は、その腕を握っていますね。髪の毛は、なんだか連続して子供にまでつながっています。

この同じ人、自分の右手では、ドレスのようなものを身に着けた人の腕を握っています。




袖がびらーん、としているので、ドレスに見えるので、とすると、やはりこれは女性と思われます。角っこの人も、スカートのような衣服ですが、袖はないので、やはりこちらは男性と考えるべきなのでしょう。
でも、男と女が手を取り合っている微笑ましい場面ではなさそうです。女性らしい人は、右手は腰に当てて、偉そうな姿勢だし…。

その女性の右手の方の角には、でっかいボタンのようなものがついた衣服を付けた人がいますが、この方、左手はないようですね。ブルボン・ラルシャンボーの記事で、腕のない人物たちが、障碍者と考えられいているという解説をいただきましたが、こちらも何かそういう意味があるのでしょうか。




同じ人物が右手を挙げていて、その陰にいる小さなフィギュアもまた、何とも異形な様子で、謎めいています。わっかんないなぁ。ざっとネット検索もしてみたんですが、今のところ、何も見つけられてません。

扉。




ここもアーチは重なっているだけで無装飾。もちろん、オリジナルがどうだったかは不明です。
ずらりと置かれた柱頭は、遠目には、かなり立派な彫り物があるようにも見えますが、残念ながら傷みが相当激しいです。




左側も。




柱にすららせん模様が彫られていたりしたのかもしれません。今あるものは、当時のものとは思えないんですが。要は、かなり手の込んだ細工が施されていたのに、その肝心なところは修復されず、建物の方は、結構手が入っている、といういろんな意味で残念な状態なんです。

南側にも扉があります。




こっちも、立派な扉ですよ。でも、やはり傷みが激しい。




柱頭は、面白い彫り物が彫られていたようですが、あまりに溶けちゃっていて、本当に残念。

軒持ち送りにも、ずらりと彫り物が並んでいますが、鉋屑とそのバリエがたくさん。再建ものっぽいのも、多くありましたが、オリジナルにあった場所に、ちゃんと並べたのは、頑張ったな、という様子ですね。




鉋屑に混じって、この人知ってる~!みたいな顔がいくつもありました。こういう時のモデルって、もしかして、近所のおっさんとかだったりするのかしらん?




なんか、その辺にいそうでしょ、笑。少なくとも神様とか物の怪とか、そういうたぐいの顔じゃないよね。




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  1. 2019/01/21(月) 02:21:32|
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  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

No title

教会内の飾り彫は、文字を知らない人などが、彫り物を見て物語を知る様に彫られて居ると言う様な事を聞いた事が在ります。
(ステンドグラスも同様だと)

その様に考えると・・・・・・
彫り物のスートリーや人物像を想像推理する楽しみは、格別でしょうね?

私など関心ない物は興味も示さず見逃す事ですからね?
  1. 2019/01/21(月) 00:10:00 |
  2. URL |
  3. 古民家の田舎暮らし<山下亭> #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> 古民家の田舎暮らし<山下亭>さん
そういいますよね。聖書の場面を描く壁画なども、そういう目的だったと。
聖書のエピソードならともかく、そうではなさそうな、それでいて、ストーリー的な彫り物というのは、何か、ちゃんと意図があって作られているはずで、当時の世界の人たちには、それがわかっていたはずだけど、今の人にはもうわからなくなってしまった、というものがある、というのも、どっかで読みかじったと思います。
千年の隔たりは、小さくないってことですね、多分。
意図を推測するのも楽しいですが、そういう時の流れに思いを馳せるのも、ロマンがあります。
  1. 2019/01/22(火) 22:59:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> テルマルさん
悪魔くん、ミュータント的な現代的な姿です。まさか、この姿がキリストとは、想像外。
導かれている被洗礼者ですか。いやいやにしか見えないところが、何か、石工さんに葛藤があったのか?とか想像をしてしまいますね。
それにしても、ご丁寧な解説をありがとうございます。どうぞ、わがブログの解説者として、今後よろしくお願いします!
  1. 2019/01/23(水) 22:34:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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