2016.08.オーヴェルニュの旅 その77
この辺りの集積ぶり、本当にすごいですね。こうやって、訪ねた行程をたどりながら、狭い地域に重なるようにある事実、改めて認識させられています。
前回のオートリー・イサールから、南方向に、たった6キロほどで、次の目的地。もうね、村ごとに、教会が、それも、何かしら見たいようなものが残っているロマネスクの教会があるんですから、あきれてしまいます。要は、その当時、土地全体が、栄えていたということなんでしょうねぇ。こんな狭い土地なのに、村ごとに教会がひしめいていたんですから、経済的にも、教会を建てられるだけ、潤っていたということになります。
でも、ロマネスク時代のものが残っているということは、逆に言えば、ロマネスク以降、厳しい時代もあって、早々新しい様式に変更するなどはできなかった、ということでもあるので、ロマネスク時代の繁栄が突出していたんですかね。
今の我々にとっては、ありがたいような歴史ですが、土地の歴史としては、お寒い部分もあるのだろうなぁ、と思いを馳せたりします。
アリエ県の主だったロマネスク教会の一覧図が掲げられていました。オレンジの印が、今回訪ねる場所です。
訪ねたのは、こちらとなります。
スーヴィニーSouvignyのサン・ピエール・エ・サン・パウル修道院教会Eglise Prieurale Saint Pierre et Saint Paul(住所、Place Aristide Briand、近くに駐車可能だったと思います。9時/19時。ガイドツアーもあるようでした)。
外側は、ほぼ見るところなし。
ただし、クリュニー起源のベネディクト派修道院ということで、創建は10世紀半ばと古いので、もともとは、ロマネスクの良い建物があったのだと思われます。
前振りの歴史の話ではないですが、送検後も発展してしまったために、小さかったロマネスクの教会建築がどんどん拡大し、クリュニー本拠同様、規模が膨れ上がってしまったようです。でも、ルネサンス時代には、もう落ち目になって、ほとんど放置されて、ボロボロになったとか。
それでも、今でも、規模は、かなりのものを誇っておりますね。町のつくりも、おそらく起源は寺町だったろうということを髣髴とさせるようなたたずまいとなっています。
教会周辺の、ぐにゅぐにゅした道のあるあたりが、かつての寺町なのだと思います。まっすぐな道は、後代のもの。
そのぐにゅぐにゅした旧市街の道は、猫道のような細い小路が入り組んでいて、なかなか楽しいものでしたよ。
中入ると、びっくりして、一瞬足が止まると思います。
この、オレンジが勝った黄色ぬりぬりも、漆喰好きなフランスでは、大変良く出会う色ですねぇ。真っ白もなんですが、この変な黄色も、やめてほしいです。なんなんですかね。
でも、大丈夫です。柱頭は、ちゃんと石色が出ていて、おそらく近年になって、そういう風に直したんだと思います。
オレンジが11世紀、水色と青と紫の中間色みたいな部分が12世紀となっています。そのあたりに、我々好みの柱頭が、沢山あるんです。
印象では、グリーンマン、グリーンアニマルが、山ほどありました。勿論、そうじゃないものもたくさん。
あたまガジガジされちゃっている人とか。
おなじみの、仲良くお水を飲むキメラちゃんたちとか。
ブルボン・ラルシャンボーの柱頭を髣髴とさせる、村の楽隊とか。
これは珍しい感じ。人魚ちゃんとケンタウロス共演ですね。
副柱頭の市松もしゃれていますけれど、実は、足ものもオシャレな柱がたくさんありました。
逆さになっていますので、どこかにあったものを再利用して、ここに置いたものと思いますが、なんでしょう?でも、なぜさかさまに置いたか、ですよね。
イタリアは、ローマがあったせいか、石材の再利用は、非常に頻繁に行われているのですが、例えば、装飾的なものがある場合の柱などをわざとさかさまに使って、これは異教時代のものですから、ということを明らかにした例などを見たことがあります。でも、ここでは、さかさまにされている浮彫そのものが、ロマネスクっぽいので、そういうことでもなさそう。
とすると、ただ石工さんがうっかり置いちゃった、ということなのかなぁ。そういううっかり、意外とありますからね。
こんな風に、くっきりすっきりと彩色されちゃって、なんだか往時とは全く別物となっていると思いますが、それでも、柱頭部分を、何とか石色に戻してくれたので、良しとしましょう。
ストーリー性のある彫り物は少ないですが、グリーンマン始め、変な獣たちの姿がたくさんあるのは、楽しいことです。どの柱頭も異なり、バラエティーに富んでいるので、上を見ながらウロウロするのが楽しい教会です。
全体が目に入ると、漆喰に、ちょっとうんざりしちゃうんですけどね。
それに、ちょっと洗いすぎな感じもありますね。
最後の審判らしい、結構凝った彫り物ですが、真っ白すぎて味もないし、陰影がなくて、見にくいです。
ここ、採光もいいので、風情はゼロと言ってよいですね。可愛いものが多いし、楽しいんですが、ちょっと思い入れしにくいのは、そういうことなのかもね。暗いと言っては、見えなくてイライラしたりしているんだから、勝手なもんですが、でも、ロマネスクの醍醐味は、薄暗がりの中で、あえかに見える異形のものたち、みたいなところ、結構ありますよね?ありません?
ここまで白日の下にされされた上に、何の染みもないほどに現れちゃうのは、どうも…。
なんだかんだ言いながら、十分堪能して、教会を出ると、すぐ近所に、もう一つ、どう見ても教会ではないか、という建物が目につきます。
サン・マルク教区教会L'ancienne Eglise Paroissiale Saint-Marc。
12世紀の教会ということです。創建当時は、どうやら墓地教会だったようです。その後屋根が落ちたりなんだかんだで、とうとう家畜小屋までに落ちぶれてしまった時代もあったようなのですが、20世紀に入って修復されて、今では、文化施設として、展覧会場やホールとして使われているそうです。
扉口に、往時の柱頭が、しっかりと残されていました。こういうのを見ると、歴史の、時間の流れを目の当たりにする気持ちになりますし、周りが変わっても、この柱頭たちは、ずっとここにあったんだなぁ、と感慨深いです。
あまりケアされなかったからこそ、残されている、こういったいかにもプリミティブな鉋屑の軒持ち送りなど、愛おしい気持ちで眺めてしまいます。
帰りは、大通りに挟まれたように残された旧市街の小路をたどって、駐車した車まで戻りました。
家並みの中に、いきなり現代アートのギャラリーがあったりして、楽しい散歩でしたよ。なぜか、人っ子一人いないのは、どの村でもありがちなことですが。
しかし、ランチも終わった15時過ぎなのに、なぜ、人がいないんですかねぇ。
Les Atelieres du Chapeau Rouge
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2019/02/05(火) 06:59:20|
- オーベルニュ 03-63-15-43
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地図を見て教会の多さに驚いて居ます。
このブログは「ライフワーク!」ですね。
全世界に教会が在りますからね?
キリスト教の教派は判りませんが・・・・・・
ロシアの教会のキンキラキンには驚きました。
英国諸島最北端のシエットランド島の教会は素朴だけど天井が高く、何となく厳かな気持ちに為りました。
ステンドガラスに興味を持ったのはシャルトルの教会を見てからです。
全て古代遺跡の巨石を見に行った序での教会見学でした。
- 2019/02/05(火) 00:07:00 |
- URL |
- 古民家の田舎暮らし<山下亭> #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> 古民家の田舎暮らし<山下亭>さん
フランスの中でも、この辺りは、集積宝庫なんです。
ライフワークというほど偉そうなものではなく、単なる病気だと思いますけれど、笑、ただ、一生かけても回り切れないことは確かなので、それは、趣味としてはありがたいことだと思います。
山下さんは本当にあちこちいかれていて。私は、もはや狭い世界に捕らわれてしまったので、もう広がることはないな、と思いつつ、シェットランド島かぁ、とあこがれを感じてしまいますねぇ。
- 2019/02/05(火) 23:07:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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