ここは、エジプトものでは、カイロに次ぐ規模、ということで、昔から興味はあったのですが、そして、トリノは仕事ではもう何十回といっているし、オペラにはまっていた時代には、テアトロ・レージョも、何回も行きましたけど、これまで、エジプト博物館に行くチャンスはなかったのですよね。しかし、とうとうそのチャンスが来ました。
すごく有名だし、イタリア北部の子供たちは、学校生活時代に必ず一度は行くくらい、その”カイロに次ぐ規模”という立ち位置は、国民的に認知されているようだと思いつつ、でも、「イタリアでしょ」「それもトリノでしょ」という気持ちがあり、絶対たいしたことないと思っていたのも、無理していかなかった理由です。
ちなみに、トリノの人というのは、かつて王宮があったりしてイタリアの首都だったりした時代があったことを踏まえて、トリノがイタリア一、もしくはヨーロッパ一、くらいに思っている人たちですが、実は他の地域の人にはあまり好かれていません(と思います)。特にミラノの人たちは、「トリネーゼ?けっ、田舎者が…」というような感じがあり、私はミラノに長い上に、仕事で他の地域より圧倒的に多くのトリノ人を知るにつけ、「まさに田舎ものだ!」と思うにいたっておりまして、要するに、トリノの人は、一般的にはあまり好きとはいえないということなんですが、まぁそういう部分から、トリノで、カイロに次ぐ規模なんていうことが、図々しい!と勝手に「さすがトリノ人はやることも言うこともえらそうだよね」とか思っていたんですよね。
ところがどっこい、ここばっかりは、大間違え。ここ、すごいです。確かにすごい。持っているものもかなりだし、展示もうまいし、説明もしっかりされていて気持ちよいくらいです。トリノの人々に、ごめんなさい、という感じでした。
イタリア人はエジプトが大好きで、エジプト学、という言葉もあるくらいですし、その情熱がしっかり反映されているというのか。私にとって発見だったのは、パピルスの重要性、というか、いかに当時の人々がパピルスを大切にしていたかということを目の当たりにしたことでしょうか。多くの石像(ホルス神や、ラムセス2世像)の足元なんかに、パピルスを表す装飾模様がちりばめられているのですね。これはこれまで知らなかったことです。というか、エジプトってまだ行ってないので、エジプトものをまとめてみたことがあるのは大英博物館くらいで、実は、当然トリノの博物館より大英博物館の方が上、と思っていたわけなんですが、大英博物館は、ロゼッタストーンという大物があるのがすごいって言うだけのことで、そんなに熱心に学ぶような展示ではなかったですね。インパクトだけでは、頭に入らないってことです。
ここは小学生から高校生の子供が勉強に来るだけあって、説明も細かく、展示も実によくできています。思わず、エジプト学、フムフム、とテレビに出ずっぱりで発掘費用を稼いでいるという早稲田の教授を思い出したりします。エジプトは、やはり特別な感じがします。そりゃあ、初めて墓を暴いた人は、感動したでしょうよ、と思わされるというのか。
中世どころか、いきなり古代BCの世界に飛んじゃいましたが、たまにはそれもいいなぁ、という週末でした。
蛇足ですが、展示はすばらしいものの、ファシリティーに問題ありましたね。古い建物なので、すべてが古びていて、チケット売り場の仕組みは古色蒼然だし、トイレは少ないし、展示は階段を登ったり降りたりを繰り返す必要があるし、この辺が、やはり所詮イタリアの限界って感じです。
Author:Notaromanica
ミラノ在住で、ロマネスクが大好きで、主にイタリア、フランス、スペインを回っています。