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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

至福のロゼ・ランチ(シャスナール)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その86

外観がつまらない教会が続きます、笑。




シャスナールChassenardのサン・ジョルジョ教会Eglise Saint-Georgesです。
ここは、まさに、建物は全部やり直し状態なんで、見るべきものがないんです。




上の図がわかりやすいですが、構造そのものとしては、薄紫の部分が12世紀となります。が、一見して12世紀とはおよそ思えない様子なので、見るべきものを知らなければ、教会の姿を認めたとしても、完全に通り過ぎてしまうだろう、という代物です。

わざわざ行くのは、勿論、絶対に見なければならないものがあるからです。
上の図で、下側の壁の部分に、「portail roman decouvert en 2000」とあるロマネスク時代の扉装飾。18世紀に、塗りこめられてしまったものが、2000年になって発見されたという、素晴らしい彫り物があるんです。




すごいですよ。
赤い石で、いわゆるドンジョンの石工さん達の作品の一つとされているもの。
18世紀にもなって、塗りこめちゃったというのもよくわかりませんが、そのころまで見えていたのだとすると、絵などが残っているはずで、それなのに、発見が2000年って、いろんな部分でわかりにくい歴史を持つ彫り物です。

いずれにしても、塗りこめられていたから、かえって保存がよい、という皮肉なことにもなっています。

タンパンは、アーモンドの中で玉座に座り、祝福するキリスト。




ここの彫り物は、ヌイイで紹介されたドンジョンの石工工房の作品とされているようなのですが、このタンパンを見る限りでは、あの、ほっそりモデル体型のフィギュアとの共通性は、あまり感じられませんよね。
このキリストの表し方が、私には、メイエールのサン・ジュリアン教会にあった祝福するキリストとの共通性を感じます。彫り方のテクニックというより、表現の方なんですが、神の子というよりも人の子、世俗の権力者、王者といった風情のフィギュアに思えるんです。




何かしら、世俗的なにおいがあるんですかね。テクニック的には、ドンジョンの石工さんの方が、かなり上のように思われるのですが。もしかして信仰心が薄い地域だった、なんてことはないですよね?巡礼路だしね。そのために教会もたくさんできたんだしね。

それにしても、深彫り。浮彫ではなく彫刻ですね。これも特徴なのかな、ドンジョン石工。

アーモンドを支える天使、うっすらと優しく微笑んでいるのが、とても愛らしいです。




スペースにうまく収めるために、無理な姿勢で、ご苦労さん、と言いたくなりますね。




脇には、マギの礼拝があります。




傷んでいるのは、彫りだすときに結構傷つけちゃったとかそういう話みたいです。
なんか、我先になだれ込み状態で、プレゼント攻めのマギたちがおかしい。冷静な顔でやってるだけに、ロボット的な怖さがありますね。
心なしか、聖母子も引けている様子、笑。

そのわきの方には、落馬して、なんか獣に襲われているような兵士?鎖帷子の人がいますね。




鎖帷子とか、馬のたてがみとか、非常に細かい彫りで、高度な技術を感じる彫りです。
その右の方には、ロマネスクの塔があるんです。




スタイルにすごく忠実。この教会には塔がありませんが、どこの塔をモデルにしたものでしょうかね。

マギに向かい合う位置にある柱頭の方は、傷みが激しくて、テーマがわかりません。ライオンらしい姿と人の姿。ダニエル?とか勝手に想像しますが、左に新約、右に旧約はないかな。




アーキボルトも、すっかりボロボロ。




なんか、覆っていたものを取るとき、相当激しくガンガンやっちゃったんじゃないでしょうかね。でも、ここに何かあるはず、と誰もわかってなかったなんて、ありえるのかな。これだけの彫り物が、何も残っていないなんて、信じがたいんですけどね。まぁ、田舎だから、田舎主導で、勝手にやっちゃったんでしょうかねぇ。

中は、いくつかうっすらとフレスコ画とか残っていますが、正直、無理に入る必要はないです。




開いてたらよし、閉まっている場合、市庁舎にカギはあるようですが、無理に借りに行く必要はなさそうです。

さて、ここに着いた時、ちょうどお昼ごろ。この教会の真ん前にレストランがあり、まさに彫り物の真ん前に、外のテーブルが出ていました。




というわけで、せっかくだから、とテーブルに着いたのですが、結構高いレストランだったので、結局前菜とロゼで、軽く済ませることとしました。

La Table de Jeanne, 4 Rue de Centre, Chassenard

前菜だけ、とか言いながら、ロゼは3人で1本、笑。
そして、ロマネスクの素晴らしいタンパンを眺めながらの一杯、まさに至福でございました。

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  4. | コメント:2
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コメント

No title

めずらしい土の色ですね。赤いんだ…こういう石が取れる地域なんですね。

よく掘り出してくれたな~~美しいですね!ロゼ、美味しかったならそれでヨシ❣ですね❣
  1. 2019/03/11(月) 12:50:00 |
  2. URL |
  3. まーたん #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> まーたんさん
そうなんです、この辺り、こういうかなり濃いめの石が多いんですよ。ちょっと重たい色です。
本当に、よく彫りだしてくださった、とは思いますが、もう少し注意して、慎重に、壊さないように、彫りだしてほしかったとも思います、笑。
フランス人って、アンティークとか好きなくせして、意外と、古いものをぞんざいに扱うのね。そういえば、家の外壁なども、結構きれいにぬりぬりしちゃう人たちだから、イタリアやスペインとは感覚が違うのかも。古すぎるものは汚い、と思うみたいな。
  1. 2019/03/13(水) 22:37:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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