2016.08.オーヴェルニュの旅 その89
チョイと足を延ばしたブルゴーニュから、再びオーベルニュに戻り、ロワール県に入ります。
シャリリューCharlieuの修道院Abbaye de Charlieuです。今は博物館となっています。
本来、現役でない場所は、あまり好みではないのですが、この修道院後は、かなり崩壊していて、ディテールに教会の名残を認められる状態なので、博物館になってよかったのではないか、と大いに納得でした。
さて、さらりとアップする予定でしたが、さすがに博物館で、なんとイタリア語の資料があり、それを撮影していたので、つい読んでしまいました。最近、フランス語を、翻訳アプリを使いながら解読していたのですが、イタリア語、それも翻訳のイタリア語の、なんと読みやすいことか!
イタリア語は、仕事ではいやいや読むこともありますが、基本的に読書はほとんど日本語ですし、最近は新聞も読まないし、読解力はいまだにかなり低いのですが、でも翻訳となると、なぜか大抵、小説でもそうなんですけれど、かなり読みやすいのですよねぇ。自分の読解力が上がったのかと思うと、大抵翻訳ものです。
ずいぶん昔に、突然、ヘミングウェイの「陽はまた昇る」をどうしても読みたくなって、仕方なくイタリア語の本を求めたことがあったのですが、その時に、あまり読みやすくてびっくりしたのが、翻訳は読みやすい、ということに気付いた最初でした。それで、自分の読解力が向上したものと大いに勘違いして、何冊かイタリア人作家の本に手を出したら、お手上げ、という結果で…笑。
他の言語だとどうなのかわかりませんが、とりあえず、イタリア語を勉強されている方には、というわけで、イタリア語に翻訳されたイタリア語原典じゃない書物の読解をお勧めします。イタリア語の吉本ばなななどは、結構語学の勉強にはいいんじゃないでしょうか。絶対に勘違いしますよ、読解力向上してる!って。
おっと、話が大いにそれました。
というわけで、今回はばっちり、ガイド的な知識も披露したいと思います。
この修道院の歴史は長くて、9世紀の創建されたベネディクト派修道院が最初です。シャリリューCharlieuという名前は、Cher(愛しい)Lieu(場所)がもとになっているそうですよ。修道士たち、どれだけここに惚れこんじゃったんだか。
今は、結構な町になってしまっていて、この修道院後も、単なる街はずれ、というロケーションになっているので、当時の修道士たちが愛したであろう風景に出会うことはできないんです。要は、かなり発展したのですよ、修道院が。
最初は、一身廊で木製天井の小さな教会でしたが、10世紀前半に、クリュニーと連携して、教会が拡張されます。一身廊から三身廊となり、木製の天井がヴォルト構造となり、周歩廊も備えた立派な教会になります。その頃から、村も、定住者が増えてきて、要は寺町としてどんどん大きくなっていったそうです。
そして、クリュニーが繁栄した11世紀前半以降、その繁栄期の二人の偉大な修道院長サン・オディロンSaint-OdilonそしてSaint-Ugoサン・ユーゴーの時代に、それまでのものでは小さすぎる、ということで、さらに大きな教会へと建て替えられてということです。
新しい教会の装飾は、同時代のブリオネ地域の外の教会と大きな類似性が見られるということで、アンジー・ル・ドュックが例として、挙げられていました。
11世紀/12世紀ごろ、ブリオネ地域を流していた優れた石工がたくさんいたのでしょう。
ちょっと説明過多、笑。
博物館としての順路通りに回ったと思うので、その通りに行ってみます。
構造としては、今は一部しか残っていません。その遺された場所にある装飾が、かなり激しいので、全体残っていたら、どれだけのものがあったのだろう、と思わされる、そういう遺構となっています。
11世紀終わりごろに完成した、つまり、最初に小さな教会から数えて三つ目の教会になると思われますが、その扉口が残っています。ナルテックス構造となっているので、そのナルテックスから教会への扉ということになります。
このキリスト昇天図は、このブリオネ地域では多く見られるものですが、この教会で初めて採用された図像とされているそうです。タンパンには、おなじみ、二人の天使が支えるアーモンドの中にいるキリストの図、そして、アーキトレーブ部分には、十二使徒。
遊びのない真面目な石工さんの作品って感じがします。とってもきちんとした天使たち。彫りの技術がすごくある様子だし、人物デッサンとか、定石通り、という感じっていうのかな。楷書の彫り?
全体にすごく丁寧に、心を込めて彫っているように感じられます。この手の感じ。楷書ながら色気があるというか、愛を感じませんか。
それにしても、細かい。アーモンドの中の細かいアーチは何だろう?卵だったらカラザと思っちゃうところですが、アーモンドにはそんなもんはないですね。でもカラザ状態の場所に、キリストが座っているみたいです。
顔がないのは、例によっての革命時の狼藉の結果ですね。フランス人、徹底的にやりましたよねぇ。なんでこんなところまできて、ご丁寧にここまできれいに顔を取ったか、本当にわからない人たちです。
アーキトレーブに、すっきりと並ぶ十二使徒も、顔なし。
いつだって、ほとんど唯一認識可能なピエトロさんも、顔なし。
手の表情が豊かで、彫りも細かいので、ここは顔が欲しかったですねぇ。
かすかにピンク色が認められますね。彩色なのか、この辺りでよく使われている、ピンクと黄色の混じった石なのか。
それにしても、ぎゅっと押しつぶしたようなスタイル、ちょっと愛らしさもあります。そして、シンプルなアーチで囲って、余計な装飾をしていないところが、憎いデザインです。表門(あとで紹介します)がすごいだけに、落差が激しいです。
脇にいるアトラスさんたちは、なんだか、また違う様子で。
手がすっきりと美しいのは同じかな。足指が長い、笑。
腕がどうなっているのかと思ったら、おそらく彫刻状態で浮いていたので、折れちゃったんですね。浮き彫りにとどめておけば、そんなこともなかったろうに、とにかく立体にしたかったんですかねぇ。
おそらくこの扉口から入った場所にある柱頭だと思うんですが、面白いのを並べてみます。構造をよく覚えてないんですよ(例によって、当時入手したであろう資料を探すのが面倒なため)。
今どきのイラストのような二股人魚。
アクロバットの人。正直、これはきもいですね。
ケンタウロス。お互いがお互いの髭を引っ張っていますが、これは、確か意味があったはず。意味があることは覚えていても、その意味を覚えていないって、情けないことです~。
そして、これは大好きなダニエルさんだと思うのですが、悩んでるご様子です。
よく言及してしまいますが、漫画、聖お兄さんのブッダ状態?動物に好かれすぎて面白くないっていうような様子です。律義な体育すわりが何とも、いいです。
こっちもモチーフはダニエルさんでしょうか。
でも、このライオンは、ダニエルさんに対するリスペクトが感じられないので、ちょっと違いますね。自分が自分が、の目立ちたがりB型なライオンですね。
建物の脇に、発掘で発見された遺構が見られます。
20世紀初頭から何度か実施された発掘で、過去の三つの教会の遺構である基部の一部が発見されているそうで、おそらくそれが、こういう形で残されているものと思われます。結構なスペースですよ。異なる時代の建物が、錯綜していたのですねぇ。ある意味、時間の視覚化です。
構造は、こういう感じです。
一番下の部分が、見学したナルテックスの部分で、異なるグレーや黒の部分は、基部だけが残っているものだと思います。それらの間に一部、壁とか柱頭が残っている状態です。ちゃんとした建物としては、このナルテックスの地上階とその上が残っています。
その二階の窓から、こういう様子で遺構が見えました。
二階部分にも、いくつか面白い柱頭があるんです。
悪魔くん。
手足の指がカエル状態です。耳は猫耳、顔は人面。それも表情がないのが、妙に怖い。
そして、ハーピーっぽくもある人面鷲。
そして、大変興味深いのは、これです。
太陽と月。これは昼と夜、善と悪、というシンボル的なモチーフですが、めったにないだけに、とっても嬉しくなります。なんだろう、悪魔くんとか鷲とかに比べても、いきなりスタイリッシュでデザイン的で、とても不思議なんですよね。これを見るだけでも、入る価値があります。
長くなってしまったので、一旦切ります。今回は、すごく時間がかかりました~!
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2019/03/17(日) 03:31:16|
- オーベルニュ 03-63-15-43
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| コメント:2
此れは何度も訪れて見たくなる見所満載の教会ですよね?
私も同じ遺跡を訪れた場所が在りますよ!
キンタイヤ半島の古代遺跡群です。
ポールマッカートニーの歌でキンタイヤ半島の歌が在ったような記憶が・・・・・
- 2019/03/17(日) 02:30:00 |
- URL |
- 古民家の田舎暮らし<山下亭> #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> 古民家の田舎暮らし<山下亭>さん
再訪は、家の近所以外はなかなかできないものですが、オーベルニュの友人がいる限りは、また行けるかもしれない、と思っています。そうはいっても、他にも訪ねたいところがあると、なかなか難しいです。
キンタイヤ半島ですか。まったく知らないんですが、名前からして興味を持ってしまう土地ですね。ゲール語起源とかの名前でしょうかね。
- 2019/03/17(日) 17:55:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
- [ 編集 ]