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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

まさかサント・ドミンゴのにわとりが(フルリエル)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その93

何ですかねぇ。人に連れて行ってもらっているし、事前にきちんとチェックしているわけでもないし、ということなんでしょうかねぇ。なんだか、いつも以上に記憶が薄くて、アワアワしております、笑。
でも、自分で撮影している写真がある以上、確かにここに行ったのだ、と言い聞かせるようにして、記憶を探っております。情けないですねぇ。

さて、ペア修行の一日、次に訪ねたのはこちらとなります。




フルリエルFleurielのノートルダム教会Eglise Notre-Dame。
この、後陣の写真でもおおよそ想像がつくように、建物のほとんどの部分は、後代の建築になってしまっており、たたずまいとしては面白みがありませんが、フランスらしく、ディテールに素晴らしいものがあります。
見るべきは、ファサードにある彫り物、そして内部の柱頭の彫り物です。

まずはファサードから。




ちょっと寂しいたたずまいですよね。でも大丈夫。扉周りは、オリジナルですから。とはいっても、結構傷んでいるのが残念です。
大きくて隅切りの深いアーチは、うっすらとパターン的な浅浮彫が施されているだけで、ほとんど無装飾というイメージです。この部分は、もしかすると、オリジナルではないのかも、という疑惑もあります。
でも、こういうスタイルはありますよね。




説明には12世紀とありましたが、装飾の雰囲気からは、12世紀も押し迫った頃ではないのか、という様子がうかがわれます。また、修復で結構余計な手が入っている可能性も感じられました。特に扉上部にある軒持ち送りの部分。




ずらりと顔が並んでいて、その合間に、花とかキメラとか、そういった浅浮彫が施されています。
上下に、とても中世らしいモチーフの帯があるのは、今写真を見て初めて気づきました。特に上のモチーフは、フレスコでもモザイクでもよく使われますが、彫り物では、他で見たことあったかなぁ?うう、再建疑惑が…、笑。




お花モチーフはかわいいんですが、顔はどれもおっさんで、なんかテイスト的に、納得できない…。まず、かわいくないですね。変にリアルで、ロマネスク的面白さがない。かといって、テクニック的に特徴があるとも独創性があるとも思えず。
なんて、偉そうなことよりなにより、私の好みではないということですけれども。

隅切り柱頭、傷みが激しいです。




どうやら、時間の経過により溶けてしまっただけではなく、積極的に損傷も受けたような様子もあります。柱の方は、入れ替えられているようなので、かなり傷んでいたということなのでしょう。




おそらく、技術力のある石工さんの作品だろうと思われる作品は、認識できました。例えば、このキメラ。




細かい彫りですよね。




つる草の宝探しモチーフ(例によって勝手に命名してますが、つる草の中に動物とかいろんなものが置かれているタイプのモチーフ)も、工夫が感じられます。

さて、中へ。




漆喰ぬりになっておらず石むき出しというのは、珍しいですね。この点は大変好感度が高いです。石の色も、ベージュのグラデーションがあって、好みです。

プランは以下のようになっています。黒塗りが11世紀から12世紀で、薄い網掛けが12世紀、それ以外はそれ以降の時代となっています。




面白い柱頭がいくつか見られます。例えばこれ。




説明によれば、これは古代メソポタミアに起源があるマスクで、それがローマやギリシャに伝わったもの、とありました。
このオカメ顔のグリーンマンも、そのあたりからインスピレーションを得たものでしょうか。たらこ唇が何とも言えず、ぬめり感があって、苦手かも~、笑。




他にもちょっとかわいいのとか、そうでもないのとか、いくつかあるのですが、おそらく最も注目されるべきやつを紹介しておきます。これはね、よく覚えています。なんか衣が変だとか、どうとかこうとか、柱頭を見上げながら、同行者と話した記憶があります。とっても漠然記憶で、笑っちゃいます。




聖ジャックとあるんですが、ヤコブってことですね?そういえば、こういうひだひだのたっぷり目の衣装は、巡礼者の衣装を表すものだったのでは、と今、かすかな記憶が出てきました。
ここでは、廂のない変な帽子をかぶっているようですが、これも、巡礼者を表すアイテムなのかもしれませんね。彼が身体の前において、寄りかかっているような表現をされているのは、勿論巡礼の杖。
あ、今気づきましたが、左にしか靴を履いていません。

説明に、オヴィエドのカマラ・サンタにあるサン・ジャックの表現と似ているとあります。
ちょっと探してみました。多分この人ですね。




彼の左側(我々からは右側)にはこれ。




くるりん尻尾には愛嬌がありますが、顔は相当いじわるそうなバジリスク。
そして、左側には鳥とキメラ?いや、説明には、Aspicとあります。こっちも想像上の動物とされているので、キメラのことなのかな。




サンジャック、聖ヤコブについては、様々な伝説があるので、それが色々盛り込まれているようなんですが、例によって説明が置いてあったので、頑張って読んでみました。
上の、聖人の右側にいる上のやつは、やはり見たまんまにわとりみたいなんですが、なぜにわとりがここに、という説明が、やたら長かったんですよねぇ。
でも、スペインと結びついていて、ちょっと面白かったんで、せっかくなので記しておきます。

「ドイツ人の父子がコンポステラに向かう巡礼で、1090年、トゥールーズの旅籠に泊った。旅籠の不誠実な主人が、彼らのカバンの中に茶碗を隠し、そして、彼らを泥棒と非難した。父子は捕まえられて、刑が下り、息子は首をつられた。絶望した父親は一人で旅をつづけ、聖ヤコブに裁きを求めて祈った。帰りの旅で、36日後、父は、トゥールーズで、首を吊られたのに、生きている息子に会う。息子は、聖人の手が私を抱きしめて、天の優しさをもって、力をつけてくれたと説明した。この伝説は広く普及し、その間に、トゥールーズがサント・ドミンゴ・デ・カルサダにとってかわられた。」

なぜ、1090年と正確に特定するのか不明なんですが、そういうことなんです。あ、これだけではにわとりが出てきませんが、サント・ドミンゴ・デ・カルサダって、にわとりで有名なんですよね。それを結びつけるためのにわとり、というようなことが書いてあったんですが、でも、時代が合うのかなぁ。浮彫はおそらく12世紀後半だとは思うのですが。

きっと、こういう情報は、ネットで頑張れば見つかると思うので、どうぞ皆さん、探してみてくださいね。もうフランス語は読みたくない!と思っているのに、つい読んで、そして半分くらいしかわからないのにすごく時間使って、もう嫌です、笑。
それにしても、トゥールーズがサント・ドミンゴにとってかわられた、というのが、なんか面白くて。これって、観光的にはかなり大きなイメージ戦略ですよね。スペインもやるじゃん~。

最後に、もう一つだけ、なんだかお気に入りの柱頭を。




悪魔くんみたいです。
可愛いですよね。

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  4. | コメント:2
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コメント

No title

伝えられていることは少し違いがありますが、、、

お上に訴えたところ「そんなことがあるわけないだろう
そういうことがあるのなら、私の食べようとする
鶏が蘇るだろうよ!」
と言ったところ、お皿に盛られていた鶏が生き返って
逃げていったとか、、、
  1. 2019/03/23(土) 15:29:00 |
  2. URL |
  3. Atsuko #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> Atsukoさん
そうか、そこにつながるんですね、きっと。別のお話かと思っていました。ありがとうございます。
  1. 2019/03/26(火) 21:59:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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