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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

チェロと添い寝、初体験(Venturaその1)

フオリサローネFUORISALONE 2019 その3

パリの真ん中で、ノートルダム教会が燃えています。なんということが、ある日突然、起こることだろうと、おののくような気持ちでいっぱい。世界遺産である前に、やはり町のシンボルであり、パリに暮らす人々にとってのよりどころでもあるだろうことを思うと、そしてまた、天災や戦争を超えて何百年という年月に渡り、じっと歴史を見てきた場所であることに思いを馳せると、やりきれない気持ちになります。

でも、今のところ、そういう気持ちは置いといて、現代を生きることといたします。

さて、フオリサローネ、続きとなりますが、ミラノ中央駅の高架下に展開しているVenturaの催しを巡ります。




I think it was not design but a kind of art by Maarten Baas

なんか、パンフにも乗ってないので、よくわからないのですが、撮影したポスターはこういうことが書いてありました。Maaten Baasというのは、オランダのデザイナーで、かなり有名な人のようですが、ここは、地味に、小さなモニターがずらりと並んでいて、I thinkというフレーズが並んでいたので、モニターに映っている人たちは、ひたすら持論を展開しているとかそういうイメージなのかと思いました。

この中央駅の高架下地域は、昨年初めて訪れたのですが、華やかな町の中心に比べて、アクセスも不便だし、去年は、見学者も少ないという印象だったのですが、今年は、公式の初日にして、一部行列が出来るくらいの盛況ぶりで、びっくりでした。




Aria – come to light
IVELA SpA

灯りのメーカーさんと思いますが、この高架下の倉庫のようなスペースにピッタリな感じの、素敵な明かりの展示です。
写真よりは全然暗くて、明かりの美しさが際立ちます。
併設の展示は、かなり地味でしたが、おそらく技術的な何かがあるんだろうなぁ、想像しつつ。




デコボコしたガラス容器に入っているのは液体で、たぷんたぷんしていました。こういうのは、お話を伺えると面白いのですが、残念ながら、関係者は全員つかまっていて、商談ぽい感じでお話をしていたので、ただのミーハー見学者は割り込めず。




Tide – NOROO Group
by Kwangho Lee X Wang & Soderstrom for Noroo

韓国人デザイナーとデンマークのデザイナーとのコレボらしいですが、こういう取り留めもないような展示は、ぱっと見、もしかして、と思わせるんですが、全体のイメージ先行という様子もあり、一つ一つについて、別に~、で終わってしまう感じ。なんとなくスペースの使い方もとりとめがなくて、入って、そのまま通過して出る、という通り一遍の見学で終わってしまいました。




AGC(アサヒ硝子)
Emergence of Form by Keita Suzuki

昨年も同じ場所で、ガラスのスピーカーという衝撃的な展示をしていたアサヒ硝子、今回は、ガラスよりもセラミックフューチャーという展示でした。結構地味だったんで、そのまま通り過ぎそうだったのですが、社員さんらしきスタッフが声をかけてくださり、丁寧な説明をしてくださったので、がぜん、興味が沸きました。

手前のつやつやしているのが、セラミック・タイルです。




なぜセラミックなのかというと、ガラスメーカーとセラミックの付き合いは、長いんだそうです。というのも、ガラスを溶かすためには、高温の炉を必要とするため、炉に耐えるレンガ素材の開発が必然で、そのため、高品質レンガの必要から、セラミックへと発展したというお話。そして、3Dプリンターの登場によって、その高品質セラミックを粉にしたマテリアルで、複雑な形も簡単にできるようになって、ということで、これは意外なお話で面白かったです。

やはり社員さんのお話は、熱も入るし、聞いていても非常に面白いです。特に、実際のデザイナーさんや技術者さんだったりするとね。多くは、やとわれのその場限りのコンパニオンにお話を聞くことになるんですが、棒読み状態の説明とか、ちょっとわかりませ~ん、とか、下手な日本語で言われちゃうと、がっかりします。

日本企業だと、日本語をできるコンパニオンを採用するケースも多いのですが、正直、下手に日本語ができる、という人より、私だったらイタリア語で、きちんと説明できる人の方が好いんですよね~。実は、イタリアなのに、英語ができる人しかいないケースも多かったりして、勿論商談第一ですから、そういったことも戦略でしょうが、そうはいっても、訪問者の圧倒的多数はイタリア人ではないかと考えられることから、イタリア語ができないコンパニオンばかりというのは、どうなんだろう、と疑問です。

フオリサローネの会場となる地域では、イベント期間限定のカフェやバールもできるんですが、インテリアのイベントだけあって、それらもきっちりとデザインを楽しんだ設えになっていたりします。
ここは、ちょっと面白かったですよ。




Lavazza Cafe

ラヴァッツァは、イタリアのエスプレッソ用のコーヒーメーカーで、私もお気に入りのブランドです。やはり高架下という倉庫のようなイメージのスペースからの発想と思いますが、金庫を模した作りとなっていました。
でも、この日銀の地下にありそうな金庫の扉は、べこべこの安っぽい作りですけどね、笑。

奥に見える金色は、そのコーヒーのパッケージ。




エスプレッソコーヒーは、250gのパッケージで、ちょうど金塊のような塊。金色印のパッケージ、もともとありますから、それだったと思いますけれど、お姉さんが、一所懸命積み上げていました。




Pluse by Yamaha Corporation Design Laboratory

今回のVenturaイベントでは、一番楽しんだかも。
まずは、縦置き壁掛けピアノです。椅子に座っている人の方の辺りに、鍵盤があり、勿論しっかりと弾けるんです。全体は装飾かと思ったら、色々複雑な構造になっていて、これで、音の深みとか出しているんです、という説明でした。
こういう時、せめて猫ふんじゃったでも、さらりと弾ければ、楽しいんでしょうが、もうすっかり指が忘れていて…。




装飾として、下手な絵画よりも面白いし、実際に壁にかけてあったら、前を通る度にちょっと音を出してみたり、それだけでも生活が楽しくなりそうな代物です。

こちらもまた、楽しいものでした。




結構大きなもので、砂時計のように、ひっくり返しながら、雨音を楽しむものです。実は、このタイプの音の出るやつ、オリジナルを知っています。多分、アフリカか東南アジアがそのあたりのものだと思うんですけれど、気を使って、中に豆とか入れて、ひっくり返すと、海の波のような音になるもの。昔、そういうフェア・トレードみたいなショップで買って、今も家にあります。
それも、実は、その前に、そういう構造を使って、箱型の音の出るものを作っていた現代美術作家さんの作品が、実家にあったから、おお、これがもしかすると原型かも、と思って買ったので、本当のところ、オリジナルがどこの何かはわからないんですが、笑。

このときは、これを発想して作られたデザイナーさん自らの説明を受けることができたんですよ。
話を戻すと、上下に、小さなプラスチックの玉粒々が入っていて、ひっくり返すと、それが小さな穴から降ってきて、上の写真だと、小さなプラスティックの板に当たって、音が出るという仕組みです。小さな穴だから、粒々の落ち方も、一気ではないので、数秒間、音が楽しめるというもの。
このプラスチックは、町で振る雨の音。奥にあるのは、木の板で、もっと自然のしっとりした雨の音、もう一つはトタン板のようなもので、カンカンと激しい雨の音を表現したかったということでした。

形態はともかくとして、わたし的に衝撃だったのは、楽器を作る発想から、これを作ったという、楽器メーカーさんだから当たり前のことなんでしょうが、なんか、そうか、音が出れば、楽器というくくりができるんだ、という驚きです。

もう一つ、思わぬ楽しみを味わったもの。




なんだと思います?心地よさそうな変形ソファの真ん中にチェロ。




チェロと添い寝する仕掛けになっているんです!
これもまた、デザイナーさんがいて、いろいろと説明してくれて、是非、と勧められたので、わたしも、このおじさんのように、チェロと添い寝してきました!

チェロ、音が出る仕掛けになっていて、触ると、かすかな振動が伝わってきたり、頬を摺り寄せると、場所によって音の聞こえ方が変わったりするんです。そしてまた、チェロって、もしかして生まれた初めて触ったかも、と思ったんですが、思ったより小さいし、抱きしめるのにちょうどよい大きさなんですね。
実は、数年前から、チェロを習いたいと思っているのです。最近、にわかに弦楽器のお店を見つけちゃったり、チェロを教えてくれる個人レッスンの人の連絡先を教えてもらったりと、背中を押されることが続いているのですが、なぜかこれもまたその一環ぽくて、わたしのかすかなあこがれを、周囲がそっと応援してくれてる感が、不思議です。

このデザインナーさんによれば、Yamahaは、社内にデザイン室を持っている、業界でも珍しいメーカーだと。確かに、今、記事を書いていて、主催がYamahaのデザイン研究室になっているのですね。

昨年、確かKawaiが、ガラスの透明なピアノを、池の中において光の雨の中で演奏するというピアノ特化の展示をしていましたが、Yamahaは、もっと広い範囲で楽器を捉えているのですね、きっと。
全体に地味なのですが、日々、色々やってるんです、というメーカーさんの姿が感じられる展示で、好感度高かったです。

ちょっと長くなってしまったので、Ventura、次回に続きます。

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  1. 2019/04/16(火) 05:51:39|
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