2018年8月、フランス中部(ブルゴーニュ、オーベルニュ+α)の旅その2
旅の初日は、空港を出る時間も計れないし、行き先は状況次第で流動的に、と思っていましたが、次の目的地となる教会は、できればその日に行ってしまいたいと思っていました。というのも、翌日は聖母被ご昇天の日で、ほとんどの国で祝日のはずだったからです。
本来、教会なら、週末や祝日は関係ないはず、というより、そういう日の方が、ミサがあったりして開いている可能性も高まることがあるのですが、ここは、私有地にあり、裏に住む農家に、カギを借りる必要がある、という情報を得ていたため、全国的な祝日の朝などに、鍵を求めて他人の家を訪ねるなどは、避けたかったのです。
向かったのは、サンタンドレ・ド・バジェSaint-Andre-de-Bageという村です。
前回のイリアから、北上して、約20分ほどのドライブで、村にはすぐに到着したのですが、教会は村中に見当たらず…。付近の地図をプリントアウトしといたことを思い出し、紙を引っ張りだし、方向を定めつつ、道行く人に尋ねながら、何とか到着。

サンタンドレ・ド・バジェのロマネスク教会Eglise Romane de Saint-Andre-de-Bage。
名無しの教会なんですね。ちなみに、村に到着して、わからなければ、方向としては、「Grande RueをBage-le-Chatel方向に進む」となります。
車道から、草原に入り込むようなロケーションなのですが、なぜか、教会前に数台の車が止まっており、まさかミサ?と怪訝な気持ちで停車しました。その間にも、発進する車があれば、私の後からやってくる車もあり、かなりの人の出入りが認められるので、ますます不思議な気持ちで、教会に向かいます。

中をのぞいてすぐ、理由がわかりました。そう、ここはすでに教会ではなく、展覧会などのスペースとして活用されているのでした。
おそらく夏季は、展覧会場として、10/12、14/18といった時間でオープンしているようです。展覧会のない時期だと、おそらく、カギを借りないといけないということになるのでしょう。
それにしても、全体にがらんとしていて、白塗りが激しいし、見るものがあるのだろうか、と茫然とするとともに、展覧会が目的であろう訪問者しかおらず、デジカメを抱え、オペラグラスなども含めてやけに大きな荷物を抱えて、戸惑い気味にじろじろと建物をねめまわす私は、自分的にも周りからの視線的にも、かなり浮いていたと思います。

何かありそうな、というより、あるとしたらそこしかなさそうな後陣へと移動しました。
フランスお得意の真っ白ぬりで、重みも何もない様子ですが、この辺りの柱頭は、ちゃんと残されており、説明版までついているので、逆にびっくりしました。

いきなり、かなり技量のある石工さんの作品ですね。
わたしでもわかる、アブラハムによるイサクの犠牲。緊迫の一瞬を、見事に表した作品と思います。ちょっとアブラハムがイケメンじゃないですか、笑。アブラハムの右手(写真では左手)の奥には、天使がいるんですが、羊を抱えて及び腰で、なんかこの緊張感と温度差が…。アブラハム、やっちゃうぜ、という勢いですよねぇ。

変な人の顔ですが、口から蛇が出ているのは、悪口をシンボル化したものだそうです。
一方、左の方で、植物が花を咲かせているのは、善のシンボル化と。善と悪の対比を表す図像はたくさんありますが、なんだかこういう風に描かれても、なかなかわかりにくいですよね。
こちらは、私が大好きなライオンの穴のダニエルさんのようです。

両脇にライオン、という図像がほとんどですよね。ここでは、ダニエルさんの右手は、別の預言者のフィギュアだそうです。その分、左手に、ライオンが三頭も押し合いへし合いしているのが、なかなか愛らしいです。
同じ小円柱の足元にも、変な彫り物がされています。

足元の彫り物というのは、フランス独特だと思いますイタリアやスペインでも、皆無ということはないでしょうが、特に凝ったものは、非常に少ないですね。
ここは、足元のほとんどに、いろいろなタイプの彫り物が施されていました。これって、それだけ石工さんの仕事が増える話ですから、お金をかけて建てた教会ということになるんだと思います。実際、柱への彫りこみもあり、これも、おそらく当時のオリジナルと思いますので、発注者が装飾に凝るタイプだったのか、または金に糸目をつけずに、素晴らしいものを建ててくれ、という注文をしたのか…。

ケンタウロス、好きなフィギュアです。
柱頭のテーマは、肉体と精神の戦い、とあります。ケンタウロスが、その肉体により人のシンボルで、鳥が魂のシンボルということらしいです。
さて、外側の見学に続きます。

再建部分も多そうですが、基本的には12世紀前半に建てられた教会に忠実なようです。ここで見るべきは、扉口の柱頭、特にその右側。

カギを持ったサン・ピエトロさんと、開いた本を持ったキリストの姿が認められる、と説明にあるんですが、え?みんな本開いているし、いつもわかりやすいピエトロの鍵もよくわからない、と思い、買ってきた本でよくよく確認したところ、扉に一番近い、つまり写真で言えば一番左奥にいるのがピエトロで、そのお隣がキリストということでした。正面から見ると、完全に陰になるんですが、入り口に一番近い、最も徳の高い場所ということになるんでしょうかね。
他のフィギュアほど、顔の損傷が激しくないのは、隠れているせいなのか、単に修復しちゃったからなのか、不明です。

後ろに回ると、石色もちょっと異なる感じで、様子が変わります。美しい八角形の塔も、堪能できますね。
それにしても、墓地があるのに、それなのに教会機能、なくなっちゃっているって、ちょっとどうなんでしょう。
この裏側に、説明版が置かれていました。それも変ですね。

①の水色が、9世紀の教会の構造となりますが、当時のものは、何も残っていません。赤い部分が、12世紀にたてられて、今残っている構造物。数字の順番に、建て増しされたということなのかな。説明が端折りすぎで、よくわかりません。
建物に比して、小さい軒持ち送りは、おそらく古い時代の鉋屑中心で、あまり面白みはありません。

こういうの流行りだから一応付けとく?程度の仕事で、多くの時間とお金は、内陣の装飾に費やされたのではないかと想像しました。
それにしても、緑の中にたたずむこの教会、本当に美しい姿で、名残惜しく去りがたく、最後まで後ろ髪状態でした。

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- 2019/05/23(木) 05:53:38|
- ブルゴーニュ・ロマネスク
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| コメント:2
この記事を読み直してびっくりです。
ST-ANDRE-DE-BAGE の塔の美しさには感動したのですが、冬季でしたので内部へは入れませんでした。
内部の状況が見えましたが、教会の機能は失われていたんですね。
AIN県に在りますので、正式にはLYONNAISE地方なんでしょうね。
小生も自サイトのリオネーズに掲載していますが、外観だけに感動して、内部の有様までは気が付きませんでした。
でもSAONE川流域では、思い出に残る美しい鐘塔の一つですね。
- 2019/06/27(木) 11:18:32 |
- URL |
- ほあぐら #-
- [ 編集 ]
ほあぐらさん
そうなんですよ、教会ではないんです、もはや。それでもなお、これだけの美しさを保つのは、すごいですよね。このたたずまいは、本当に、いいですよね。
内部も、がらんとはしていますが、柱頭の説明プレートなどが付けられて、大切にはされていましたね。入れず、残念でしたね。シーズンオフには、また別の良さがありますが、クローズが多いのは、痛いですよね。
- 2019/07/07(日) 14:48:56 |
- URL |
- corsa #swS.pImU
- [ 編集 ]