2018年8月、フランス中部(ブルゴーニュ、オーベルニュ+α)の旅その14
トゥールニュTournusのサン・フィリベール修道院Abbaye Saint-Philibert、続きです。
全体に装飾性の少ない教会ですが、ところどころに、時代の異なるお宝が隠されています。ぱっと見、見えないところにあるんですが、そういういろいろが、きっとこの教会の美しさを、隠れたところから盛り上げているんだろうなぁ、と思います。
前後してしまいますが、教会のフロアプランを。

結構広いですが、手前がナルテックスで、奥の方の赤い部分は周歩廊ですから、本堂は結構小さいのかもね。
黒い部分が11世紀で、周歩廊の部分は、12世紀となるようです。ということは、11世紀の時代には、周歩廊のない後陣だったのかな。後陣全体の地下に、クリプタもありますが、これがまた、結構な広さです。
古い時代の雰囲気を残しているのは、やはりナルテックスの上にある、前回紹介した礼拝堂かな、と思います。
そこで見られる植物系の浮彫の柱頭も、かわいらしかったですが、本堂にも、立派な柱頭がいくつか見られます。

グリーンマン系の動物が、ちょっと面白い表情をしていますが、でも、端正な彫りですねぇ。
テイスト的には、もうゴシック色が入っている様子ですよね。

さて、周歩廊に入り込んで、驚いたのがこれです。

なんと、美しい12世紀の床モザイクが残っているのです。残されたわずかな部分が、きれいに修復されて、上から見られるような構造になっているのも、嬉しいことです。

12世紀前半に作られたモザイク。上の写真でわかりますが、月々のテーマと、星座が、メダイヨンとなって置かれている意匠のようですね。月々のテーマは、イタリアだと、中部地方によく見られるもの。フランスでは、どういう分布をしているのでしょうか。
ありがたいことに、英語での説明版によれば、なんと2002年の教会修復の際に、発見されたものということです。かなり最近のことですよねぇ。つまり、埋もれていたということで、そのために、遺された部分だけは、結構よい保存状態だったのかと想像します。それでも、勿論修復作業がされたそうなんですが、誇らしげにフランスの修復業者なのか専門家集団なのか、名称まで記されていました。でも、個人的な感覚では、モザイクは、イタリアの業者にやらせた方がよかったのでは、という印象を受けます。
ちょっと、見た目が新しくなりすぎっていう様子になっているのが、個人的には気に入りませんでした。
それにしても、上の写真にあるザザ虫的なもの。これ、カニなんですね?かに座のことですよね。このタイプの変なフィギュアって結構見るんですが、カニとは思ったことがありませんでした。謎が一つ解けたかも。
周歩廊にある柱頭、クラシックな植物系で、大変繊細な彫りです。

現代のステンドグラスが、とても美しいです。何度も書くようですが、ステンドグラスに関しては、現代ものが好みです。

周歩廊の構造というのは、装飾可能部分をたくさん作りだしますね。だから、豪華な教会にしたいと、やはりあこがれる構造かもしれないですね。

上の方の小円柱に、かわいらしいやつらが。

下手すると、誰にも気づいてもらえないような場所に、こういうやつらを彫ってしまう石工さん、なんかいいですよねぇ。こういうものを見つけると、いったい誰がどうやって、こういう細かいところの装飾を決めているのか、という疑問が、いつも湧いてきます。これだけのものを彫るのだって大変だから、遊びでこっそりというわけにもいかないでしょうしねぇ。闇研みたいな、会社には指示されてないけど、技術者が勝手に研究しちゃうみたいな闇彫り?プロジェクトXとかで、よくありましたよねぇ、そういう話、笑。

何だろう、この可愛さったら。
さて、クリプタにも、勿論おりますが、ここ、結構怖かった~。

かなり手が入っているのですが、元は11世紀当たりの古い構造なんでしょうね。天井は石がむき出しだったりして、相当古い様子です。薄暗くて、広いんで、一人でいて、ちょっと怖い気持ちになります。人がいない方が、よい写真が撮れるのですが、誰かいてほしい、みたいな。

ヴォルトの石積みの様子が、ナルテックス上のサン・ミシェル礼拝堂にそっくりですから、やはり11世紀、同時期の構造物なのでしょうね。
回廊に出る通りスペースだったか、回廊を取り囲むスペースの一部だったかに、古い柱頭が並べられていました。

まさに溶けている様子の傷み方ですが、これは、回廊にあったものなのかな。
回廊の部分は、ずいぶんと整備もされているし、後代のイメージです。

ファサード側の塔の一つが見えます。美しい青空の日でしたねぇ。
これで、内部はおしまい。

後陣側からだと、こういう感じ。建物に囲まれちゃって、増殖している様子です。
11世紀から12世紀的な様子も見ることができますが、場所によってはゴシック色もかなり強く、建物全体、時代が混在しています。これだけの教会となると、それは避けようがないですね。

スタイルとして、こういうファサードは好みではないのですが、素朴なヘタウマ的なブラインドアーチが連発で、これは、そそられます。

トゥールニュ、町中にいくつか他の教会もありますので、もう一回、続きます。

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- 2019/07/10(水) 05:41:01|
- ブルゴーニュ・ロマネスク
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| コメント:2
サン・フィリペール懐かしいです。 2003年 tourからぬけだして訪ねました( HPは 2003年の旅、9日目)
ただガイドなしの悲しさ。 ナルテックスの上への上がり方がわからなくて行けませんでした、それとクリプタも明かりの位置がわからずあまりにも真っ暗なので こわくてやめました。(全く誰もいなかった) いまでも残念に思っています。
ふれられていませんでしたが、 黒マリアもよかったですよね。 床モザイクは 修復中でした。 それと、結局 ディジョンに戻るまでトイレに行けなかったことも思い出しました。 死者も出たという炎暑でしたから、なんとか大丈夫でしたが。ブランシオン、 オズネーなどもいらっしゃいましたか?
- 2019/07/14(日) 23:18:14 |
- URL |
- yk #C8Q1CD3g
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YKさん
ようこそ、新規ブログに!これからは、こちらで、よろしくお願いしますね。実は、貴ブログに、コメントをしようと思ったら、海外IPだと拒絶されてしまうようで…。残念ながら、連絡が取れませんでしたので、来ていただけてよかったです。
2003年に、この辺りにいらしていたのですね。HP拝見しました。
この後、ブランシオンは行きますが、オズネーはスキップしたようです。宿泊地のすぐ近くでしたのに、ダニ騒ぎで、色々不具合がありまして、涙。とにかく多すぎて、とても回り切れない土地です。
この6月、2003年以来の暑さに見舞われました。そういえば2003年は暑かった、という話を、先日古い友人としていたところでした。
- 2019/07/17(水) 21:45:50 |
- URL |
- corsa #swS.pImU
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