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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

肉眼でご対面の聖人たち(ヴィク36)

2018年8月、フランス中部(ブルゴーニュ、オーベルニュ、+サントル)の旅その66

皆さん、楽しいクリスマスを過ごされましたでしょうか。
今年は、カレンダーの並びがよいので、欧州では長期休暇を取る人も多いと思います。私も例外ではなく、珍しく中世無関係な旅をしてきました。それはまた、別途記事にしたいと思います。
中世無関係なんですが、4日間合計で、80キロくらいは歩いたのではないかという、相変わらず修行入っちゃう、みたいな状態で、我ながらあきれます…、笑!

さて、この2018年夏の旅も、いよいよ佳境で、何とか今年中に追われるのかどうか、という微妙なところです。
サントルを巡る一日、次に訪ねたのは、ロマネスクの追っかけをしている人の多くが、あこがれる場所の一つではないか、という教会です。

2018 france centre 826

ヴィックVicのサン・マルタン教会Eglise Saint-Martinです(4月1日-10月31日:8時半-19時、11月1日-3月31日:8時半-17時)。
そういう著名教会の一つですが、フランス・ロマネスクに関しては、実際に訪問する段階で知る場所がほとんど、というレベルの低いロマネスク・ハンターであるわたしは、「なんとなく有名な気がする」、という程度の認識で、友人に勧められるままに、行程に組み入れたんです。

村は、幹線道路沿いに建物が並んでいる宿場のような作りで、教会は、街道からちょっと入った場所にありました。上の写真でわかるように、鐘楼はとても小さく、ランドマークになっていませんし、街道からちょっと入っただけで、方向によっては、目に留まりにくいロケーションです。それで、一旦、村を通り過ぎてしまって、後戻りすることになりました。

やっと教会の場所を特定して、駐車して、確信的に、後陣側の側壁にある扉に向かいました。ほとんどどこでも、この位置が、現在の入場口になっていますよね。でも、開きませんでしたので、例によって思い扉なんだな、と思って、押したり引いたり、結構ガンガンしたんですが、やはり開かず…。
え~、まさか閉まってるの~?と嫌な気持ちになりながら、やっとファサード側に回りましたら、なんと、簡単に開いたんで、苦笑いでした。

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その上入場したら、先客がいらしたので、非常に恥ずかしかったです…。
入場口はナルテックスのような構造になっていて、そこにオープン時間や、下の掲示がありました。

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そういえば、大塚国際美術館、世界の有名な絵画を陶板で再現しているというの、聞いたことがあります。こういう掲示がされるくらいですから、制作にあたって、綿密なスタディがなされたのでしょうねぇ。
それにしても、Narutoって、鳴門とわかる人はほとんどいなくて、漫画のタイトルに結び付けられてしまいそうですね。ここに来るような人にそれはないかな、笑。

前が長くなってしまいましたが、ここは、フレスコ画で有名な教会なんです。

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入って、思わず、おおおお~!ですよ。
そして、内陣に近づくほどに、おおおおおおお~!と「お」の数が増えること必至。
入ってすぐに目に入る部分だけでも、かなりの迫力なのに、その奥にも見えますから、おおおおおおおお~!となりますよ、どうしても。

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内陣は、四面、すべて保存状態の良いフレスコ画で覆われているので、息を飲みます。この部分の絵を見ると、多くの人が、ああ!あれか!と思うと思うんです。ロマネスクをフューチャーする、いろんな場面で、クローズアップの絵が使われていると思います。

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北側の壁面です。
サン・マルタンの死、サン・ピエトロの洗足の図、ユダの接吻などが描かれています。
有名なユダの接吻の部分。

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技術的なことはわかりませんが、ビザンチンが入っているような描き方だと思います。
相対の南壁面の方は、剥落が激しいのが残念ですが、キリストのエルサレム入場や、イブの創造などが見られます。

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キリストを差し置いて、なんですが、これ、キノコにしか見えないですよね。

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リンゴのほっぺたや、唇の描き方が、とてもビザンチンに感じられたのですが、どうでしょうか。

そして後陣のドームのところです。

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祭壇と壁のすき間が狭いのですが、無理やりそのあたりに身体を滑り込ませて、下の方の絵も鑑賞しました。

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エリザベツご訪問や逆さピエトロさんがいます。

全面フレスコ画なんですが、実は、時代が色々だったりします。

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フロアプランで、黒い部分が教会創建の11世紀のもの。壁は、オリジナルのまま、ほとんど残っているのですね。右上の薄い水色は、12世紀以降の付け足し構造。フレスコは、赤い部分が12世紀で、黄色が13世紀となっているようです。素人目には、後陣のフレスコ画などは、もっと後の時代ではないか、というようにも見えるのですが、おそらく後代の修復などで変容している可能性がありますから、オリジナルの絵そのままとはいいがたい部分もあるのだと思います。

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この辺りの顔をじっくり見ると、みんなコピーみたいに同じで、ビザンチンに特徴的な雰囲気で、どうも過剰修復疑惑が…、笑。

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毎度、いろいろ御託を並べますが、現場では、おおおお~!しか出てきませんよ。ここは、行っていただくしかわかりようがない場所なんだと思います。フレスコ画が素晴らしい場所も複数ありますが、ここのすごさは、近さ、でしょうか。
例えば、それがきっかけで、フランス修行を始めたサン・サヴァンなどは、遠い。というより遠すぎる、という位置にありますので、望遠鏡なしでは鑑賞も不可、その上天井ですから、腰痛でもあったら、長くは見ていられない、という過酷な現場ですが、そういう教会に比べると、トップの写真でわかるように、このサン・マルタンは、非常に小さな入れ物であり、フレスコ画も、目の高さからありますから、肉眼至近距離で鑑賞できるのですね。これはすごいことです。

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それでいて、博物館のようになっていないのも、またすごいことです。手で触れる距離ですから、ちょっとドキドキしちゃいました。
幸い、ロマネスクには、普通の観光客は来ませんし、作品に傷をつけるような輩はいないのだと思いますけれど、ガラスもはめていないって、太っ腹ですよねぇ。

これなど、望遠にせず、そのまま撮影した一枚だと思います。

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フレスコが、幾層にもなっている様子。

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この夏もベリー地方を縦横無尽に走りましたので、実はこの教会の脇も通過しました。先を急がなければならない時間の関係で、断腸の思いで通過しましたが、是非再訪したい教会の一つですし、フレスコ画好きな方には、是非訪ねてほしい教会です。

2018 france centre 843

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  1. 2019/12/30(月) 01:50:09|
  2. サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
  3. | コメント:3
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コメント

大塚国際美術館、いってきましたよ。
ヴィックのサン・マルタン、忠実に再現されていましたよ。
人数が少ないとはいえ、ツアーではマニヤックな人ばかりなので なかなか写真が撮りずらかったりしますが、 ここでは人気の場所ではないのか、すいています。
一つ気になったのが 照明。
現地では 高窓からの光が主でしたが、ここでは人口照明です。きっと一番考えられた場所にとりつけてあるのでしょうけれど、光ってみにくいところがありました。
まあ、現地でもアプシスの窓からの光で 逆光、ということもありましたから、どうともいえませんけれど。
corsaさんのように気軽にどこへでもいらっしゃれる環境にあればともかく、遠いに日本でおまけに高齢者ともなると、ここも貴重です。
近代絵画などは展覧会はよくありますが、Romanesqueは 殆どないですから。
再訪したい美術館でした。
 
  1. 2020/01/13(月) 02:49:18 |
  2. URL |
  3. yk #C8Q1CD3g
  4. [ 編集 ]

大塚国際美術館

YKさん、すっかり返信が遅れ、申し訳ありません。
一時帰国中にお会いした方にも、この美術館の素晴らしさ、お伺いしました。いつか日本にパーマネントで戻って、懐かしい気持ちになったら、ここを訪ねれば良さそうだな、みたいな気持ちになりました、笑。
それにしても、面白いことを考えたものですよね。
  1. 2020/02/09(日) 10:34:26 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
  4. [ 編集 ]

お正月休み中、 たいへんだったのですね。お休みが続いていらっしゃるのは、お忙しいか、パソコン不具合化? なんて思っておりましたが、、、。くれぐれもお大事に
 influenzaもあなどれませんね。若い人でも疲れているときなどは、、、。 
それにしても今の新型コロナ、私は少し騒ぎすぎでは? と思っております。 influenzaなどを心配する程度に(もちろんこれだって重症化して死者も出ます)つまり、ふつうに冬場は特に風邪対策しっかり、くらいに考えていいのでは。エヴォラ出血熱やペストじゃあるまいし。
イタリアのどこかで、中国人だけではなく日本人も含めてアジア人排斥が起こった例があることが報じられていました。次の海外旅行(三月にスペイン)日本人ボイコットなんてされたらどうしよう、、、。
  1. 2020/02/10(月) 02:08:47 |
  2. URL |
  3. yk #C8Q1CD3g
  4. [ 編集 ]

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