(2018年9月訪問)
さて、前回は、Samolacoの村から歩き出してすぐ、廃墟に出会いましたが、そこまでは、平坦で気持ちの良い林道でした。しかし、そこからは、徐々に踏み分け道状態となります。

岩肌に、植物が茂っていて、山奥みたいな状況になります。
ワイルドな…。

落雷でもあったのか、ぼっきり、見事に道をふさいでいます。割れた部分が、みずみずしい肌色だったので、かなり最近のことらしい。
時々、Mezzolaの湖が見えます。鉱物などが溶けているような色をしている湖です。ほとりに、砂利の工場なのか、そういったものがあったので、石があるのではないかと思いました。

左手に湖、右手に岩肌を見ながら、かなり道なき道状態となっている藪を行きます。

最後の方で、岩がゴロゴロしている登りを、もう這いつくばるようにして進みます。この辺りは、写真を撮る余裕もなしです、笑。Civateは、登りはそこそこきついとはいえ、整備された山道なので、ここを行けばいいんだな、という安心感がありますが、ここは、勿論行きつく場所は一つ、というロケーションではあるとはいえ、若干不安になるような道。これは、一人では絶対に来られないです。
炭焼き窯のあったところから、かなりのアップダウンを経て、約50分。岩場から転げだすような感じでたどり着いた、湖のほとり。
到着です!
向かえてくれる教会の、愛想のないお姿、笑。

サン・フェデリーノ小寺院Tempietto di San Fedelino。
オープンは、4月から10月末の週末、14時から17時。それ以外の時期の見学についての連絡先は、以下となります。
Agriturismo Val Codera
Localita' Giavere, Novate Mezzola
tel 333 780 7686 & 346 224 6391
www.agriturismovalcodera.it
後で触れますが、実は、歩き以外に、この民宿から船で来ることができるのでしたよ。ご興味があるけれど、とても岩山歩きは無理、という場合は、この民宿にコンタクトすれば、すっごく簡単快適に来られます。
そして、そうやってアクセスした方が、インパクトのあるかわいらしいお姿と出会えることができます。

ねね、素敵なロンバルディア様式の、ミニミニ後陣。よいお姿ですよねぇ。
さて、この教会、サン・フェデーレさんに捧げられたものですが、フェデーレさんという聖人、どういう方だったのか。
ローマ軍の兵士だったのですが、キリスト教者となりまして、同様の仲間とともに、284年(私が有する本では、298年となっていました)、迫害を逃れるために、駐留していたミラノから逃げ出したんだそうです。最後は一人となって、この辺りに逃れ込むのですが、結局追いつかれてしまい、改宗を迫られるのに、頑として拒否したことから、首切りされて、埋まられたのが、この場所だったということになっています。
その後、この地域の住民が、殉教者の亡骸を祭るために、小さな礼拝所を建てたのが、教会の起源ということです。
蛮族が押し寄せてきたころ、建物は損壊してしまいます。そんなある日、フェデーレを信仰していた近郊在の女性の夢に現れ、自分が実際に埋葬された場所を告げます。女性は、すぐにコモの司教Uboldoに知らせると、司教はすぐに駆け付け、遺骸を、コモのサンテウフェミアへと運んでいきました。それが10世紀のお話ということです。

そういう経緯のある建物ですので、今ある建物の下には、古い建造物があるそうですが、それが、実際には何に使われていたものかはわかっていないようです。
それにしても、どうして、こんな人里はなれた場所に、という疑問もわきますよね。隠遁所とかそういう性質のものだったのか?
実はここ、岩が採掘されている土地のようなのです。なので、おそらく古い時代から、石を掘り出す人々はいたようなのですね。そういう人たちの祈りの場だったり、集会所だったりするような礼拝所が、あったのではないか、ということらしいです。
今ある、このかわいらしい姿は、10世紀の後半のものとされています。
しかし、到着したのは13時半ごろ。持参のおにぎりをいただいて、カギを待ちましたが、来ません。わたしは、そういうことは日常茶飯事、慣れているのですが、同行者は、ロマネスク病でもないですし、「14時と書くなら14時に来るべきだろう!」とイライラしています。
14時半になっても現れないので、上にも書いた電話に問い合わせると、もうしばらくしたら行きます、ということでした。
仕方なしに、近辺をウロウロします。
北方角と反対側に行くと、すごい岩場が。

斜面に、延々とゴロゴロした大岩が並んでいます。これはすごい昔からこういう状態らしく、このゴロゴロの中に、歩く道があるんですよ。こちらから、岩山に登って、元に戻る道、別方向に行く道にアクセスできるということですが、登山靴でもはいてないと、ちょっと無理。
さらに林を進むと、湖に出ました。

岩ゴロゴロの道を登ると、この正面の岩山の天辺に向かう道に出て、コモ湖の方に降って行く道があるのだそうです。
青緑で、美しい湖の色でした。
まだ来ない…。
おにぎりをいただいたベンチに戻って、ぼーっとしていると、川遊びをしている若者たちが、寄ってきました。

筋肉美の美しい若者でしたが、すっごく感じがよくて、しばらくおしゃべりしました。おばさんになると、なんか変な色気もなくて、色々気楽になることがありますねぇ、笑。きれいだったんで、目がハートになっていたかもしれませんけれど。
昔、ヌードデッサンをやっていたんですけど、その時、男性のヌードも美しいものだなぁ、と気付いて以来、美しい筋肉には、純粋にぼーっとしちゃうんですよ、へへ。
そうこうするうち、もう15時過ぎですかね。鍵の御一行様がやってきました。
そう、このときわかったんですよ。船で来られることが。4、5人のリゾートスタイルのお客さんを連れて、調子のいいおやじでした。
待ちに待った入場です。

淡いパステル調で、大変美しく清潔感にあふれるフレスコ画。
かつてはほぼ全面にあったと考えられていますが、今は後陣部分とそれ以外に、ちょっぴり残っているだけ。

テーマは、祝福するキリスト。キリストの両脇に、天使の姿。彼らの手が、赤い布で隠されているのは、神に対する絶対的な信仰を意味するものです。
下の方には、十二使徒。キリストに比して、非常に小さく描かれています。中央には、聖母がいたのではないかと考えられていますが、窓になっています。ということは、この窓は、後付けのものということですね。
長年にわたる湿気と、人による損害などで、失われてしまった部分が、どういうものだったのか、残念なことです。

修復は、相当頑張ったと見えますが、傷みがひどくて、これ以上は無理だったんでしょう。
時代が下る絵も、あるような気がしました。

持っている書籍に、興味深いことが書いてありました。実は、性格にはどの絵のことなのかわからないんですが、アイルランド起源の装飾ではないかと考えられているものがあると。

アイルランドには、ケルズの書とか、中世の美しい書籍がありますよね。そういう書籍装飾に使用された装飾的な表現様式が伝わってきたもの、とあるんです。
この場所、今では忘れられたような土地ですが、湖のほとりだし、北部との交通の要衝と言えないこともない場所ですから、いろいろな伝播を受け止めている可能性はある土地なんですね。
それにしても、この小さい空間が、全面フレスコ画だったとしたら、あたかも天国に迷い込んだような、トリップし放題、みたいな場所だったかもね。
うまくアップできるのか不明ですが、Youtubeに動画を張ってみました。
San Fedelino
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村インスタグラムに、これまでのロマネスク写真を徐々にアップしています。
Instagram, Notaromanica
スポンサーサイト
- 2020/03/23(月) 00:36:39|
- ロンバルディア・ロマネスク
-
-
| コメント:2
この後陣、本当にすてきです。 たどり着いたときの横写真だと、?? でしたが、ご苦労のかいがありましたね。
地図好きですから調べました。 この前の教会から西に山奥にはいってもみつかりません。検索の窓、コモ湖のあとにTempietto di San Fedeliをコピペするとすぐ出ました。やはり英語などで書いておいてくださると、調べやすくて助かります。
中のフレスコ画もいいですねえ。好きです。
左の天使の腰回り足など見ると、時代は10世紀後半よりもう少し後かな? という気がしました。
それにしても川のそばなのに、ものすごく大回りしなければならなかったのですね。
健脚でなければ。でもだからこその喜び、感動だったのでしょう。
もうイタリアにいくことはなさそうで、corsaさんのブログが唯一の楽しみ。
続き楽しみにしています。
連日のイタリアコロナ報道に胸を痛めております。 どうかお気をつけて
- 2020/03/23(月) 02:47:46 |
- URL |
- yk #C8Q1CD3g
- [ 編集 ]
YKさん
体力があれば、まだまだ、と言いたいところですが、どうも最近の状況を見ると…。欧州と日本は、残念ながら、さらに遠くなっていますね。
今は、せめて、お写真などで、楽しんでください。私もそれしかありませんけど、笑。
先ほどアップした洗礼盤は、なんでこんなに長きにわたって、訪ねなかったのか、自分でもびっくりするくらい、絶対に見るべき洗礼盤でした。この後、さらに山奥に分け入ります。と言っても、こちらは、車ですい~っといけちゃうんですけどね。
まぁ、色々あるもんだ、と今更コモ地域に、感心しています。
- 2020/03/27(金) 19:20:53 |
- URL |
- Notaromanica #-
- [ 編集 ]