fc2ブログ

イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ありえないほど衝撃的なクリプタ(アッバディア・サン・サルヴァトーレ)

2017年7月 エトルリアを巡りつつロマネスクもちょっぴり、トスカーナとラツィオの旅 その3

旅の初日の最後に訪ねたのは、これまで、まったくチェックが入っていなかった教会です。なんでなのか…。思うに、修復で長い間クローズしていたなどがあったのではないか、と。
いやはや、すごいものでした。

2020 etruria 029

アッバディア・サン・サルヴァトーレAbbadia San Salvatoreの、サン・サルヴァトーレ修道院教会Abbazia di San Salvatoreです。AbbadiaとかAbbaziaとか、ややこしいです…。

この教会、修道院がもとだったようですが、上物は、すでにロマネスク的には、見るものはほとんどなくなっています。1500年代に大きな改築が施されてしまっているし、今も地域の教会として生きているようなので、時代に即して姿を変えながら、長生きしてきた教会のようです。町の中心地にありますから、その時々の信者さんを引き寄せるには、常に今を生きる必要があったのかなぁ、と想像します。

2020 etruria 030

でも、ちょっと寂しいくらいの近代化かもね、涙。

この、ベネディクト派修道院の歴史は古くて、8世紀最後の頃に遡るそうです。なんと、ロンゴバルドの時代なんですよね。まさに、この地域のロンゴバルドの貴族Erfoによるそうなんです。時代は、RatchisとAstolfoきょうだいが王国を治めている頃。Ratchisって、Cividale del Friuliにいた人だったかしら?いずれにしろ、ロンゴバルド繁栄の時代ですね。
そして、前にも書いたと思いますが、このロンゴバルドの名前って、本当に魅力的。Erfoですよ。うっとり。

サルヴァトーレは、ロンゴバルドではとっても人気のある人だったのですね。そういえば、ブレーシャの有名なロンゴバルド教会も、サン・サルヴァトーレでした。

ここは、通行の要衝ということで、戦略的に建てられた修道院。かのカンタベリー司教Sigericも通ったフランチジェーナ街道上にあるのです。もしかすると、Sigericが記した東海道五十三次みたいな旅日記(笑、名前を失念しましたが、彼が、カンタベリーからバチカンへ旅したときの記録)にも出てくるんだろうか。
カロリング時代には、なんと100人もの修道士が暮らしていたのだろうです。相当な規模だったのですね。今の教会の規模はさほどではありませんので、俄かには信じがたいですが、おそらく、今の町の多くの部分が、修道院だった、ということなのでしょう。町の名称がまさにサン・サルヴァトーレ修道院というのも、そういうわけなのでしょう。

とはいえ、先の写真のように、上物は、あまり魅力のない状態なんですが…。目的は下もの、笑、クリプタなのです。

本当に、心底びっくり致しました。
2ユーロ払いましたが、別に、人がいるわけでもなく、献金箱に、2ユーロとかいてあるだけ、というものだったと思います。階段を降ります。
まず、すごく普通な感じ。

2020 etruria 031

階段を降りたところは、とっても普通なんですよ。構造も新しいのが明らかだし、面白みもない再建だし、なぁんだ、と思いかけるんです。でも、奥が何か違うのが見えるじゃないですか。それで、先に進んで、本当に息を呑む、とはこのことです。

2020 etruria 032

すっごいです。言葉にならない驚き。ただ呆けたように口を開けて、徘徊するしかなかったです。

2020 etruria 033

近年の修復で、このような隅々まで照らし出す照明が付けられたということを、後付けで知りました。石の自然な色が見えるような照明で、陰影なし。すべてがつまびらかになっています。本来のクリプタの雰囲気とは程遠いことになっているので、戸惑いはありますし、どうなの?という気持ちにもなるものですが、現場にいた時は、興奮しかありません。

2020 etruria 034

確かに、ブレーシャのサン・サルヴァトーレと大いに共通するものがあります。こっちの方が、背が高いような気もしますが。
柱は、多くの使いまわし。そのため、タイプがいろいろです。

2020 etruria 035

柱頭は、素朴系ですが、どれをとってもたまらなく魅力的。
柱への彫りこみなどもあったりします。目移りしちゃって、やっぱり痴呆の人状態が続きます。

2020 etruria 036

祭壇のとこ。

2020 etruria 037

構造としてシンメトリーなのに、それも祭壇前という位置なのに、柱頭、違うんですよねぇ。これって、ロマネスクの面白さですよね。あえて違うの。
こっちの人って、例えば食器なんか、一組が6枚とか6客とか、同じものを使うじゃないですか。基本、シンメトリー。どこまでも横並びで同じ。ナイフやフォークやコップも、個人特定じゃないんですよね。
日本は、お茶碗もお箸もお湯呑みも、個人特定で、模様も形もばらばらだったりしますし、それが個人的には好きです。こういうばらばら感、いいですよね。

2020 etruria 038

限りないばらばら感。それでいて、構造は同じだから、統一感が半端なくて、すっごく魅力的。

植物系ばっかりかと思うと、こんなやつらもいます。

2020 etruria 039

石の中から、にゅるっと頭出ちゃった、みたいな感じがとっても面白くてチャーミング。

2020 etruria 040

お足元も、色々です。再利用があるからですよね、きっと。

2020 etruria 041

見ても見ても発見があり、行ったり来たり、何度しても、すげーという言葉しか出てこない。なんで今まで来てなかったんだよ、おれ!?というイライラみたいな気持ちと、とにかく今回来られてよかっただろう、という究極の満足と、行ったり来たり。

2020 etruria 042

照明は、本当にありがたい演出であり技術ですが、欲を言えば、こうなる前のうすぼんやりとしたクリプタにも、お目にかかってみたかった。

例によって、せっかく撮影したんで、動画を貼り付けてみます。アクセスできるといいんですが。下手ですが、臨場感はあると思います。

Abbazia di San Salvatore 動画

ちなみに、このサン・サルヴァトーレの町、教会だけ目指して、見学してすぐに出てしまったのですが、少なくとも、駐車した場所から教会へ向かう距離は歩きました。なんということもない、普通の中くらいの地方都市ですけど、全体に下世話な雰囲気というのか、とっても親しみを感じる空気があって、町として好きでした。もともと全体が修道院だった、という雰囲気などまったくなくて、とてつもなく普通の町なんですけどね、好ましい感じ。ちょっと不思議でした。
次回があれば、もう少し時間を過ごしてみたいものです。

にほんブログ村 美術ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 美術ブログ 建築鑑賞・評論へ
にほんブログ村

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 海外生活ブログ イタリア情報へ
にほんブログ村

インスタグラムに、これまでのロマネスク写真を徐々にアップしています。
Instagram, Notaromanica
スポンサーサイト



  1. 2020/05/04(月) 01:57:14|
  2. トスカーナ・ロマネスク
  3. | コメント:6
<<研究者の執着は真似できないと思ったこと(ピエンツァ) | ホーム | ソーシャル・ディスタンス不可能なクリプタ(コルシニャーノ)>>

コメント

懐かしいです。2012年、ピエンツァ宿泊中サンクィリコドルチャなどの観光を終えて戻った、夕方の時間を利用して訪ねました。corsaさんのブログのコピー片手に。教会も当たりの景色も西日を受けて美しかったのですが、 写真は揺れる木の葉の陰などのため はっきりとれなかったのです。 きれいなお写真で楽しませていただきました。
丸塔、私はアイルランドを思い浮かべました。これも、もっと上につみあげたかったように見えます。アイルランドの塔は以前は Vikingの襲撃にそなえて宝物をしまったり、イザというときの避難所とか言われていたのですが、現在では鐘塔とかんがえられているそうです。
私は行ったときには床に半円形に石が並べられていました。祭室みたいに使われたことがあったのでしょうか?
丸塔といえばイ―ストアングリア(英国)のさほど高くない塔を思い浮かべます。見かけはこちらの方に似ています。とてもみたくて、二年前 ロンドン滞在の旅を申し込み、一人でノリッジに行って回る予定でホテルまでとったのですが、ツアーが催行されませんでした。この年ではもう一人旅は無理でしょう。機会があったらぜひいらしてブログにのせてくださるとうれしいのですが。 https://www.roundtowers.org.uk/
クリプタ 私が行ったときは真っ暗で小さな窓から差し込む西日が頼り。足元にも柱頭と同じ彫刻があったのですね。こういうデザインもめずらしいですよね。
  1. 2020/05/04(月) 02:09:51 |
  2. URL |
  3. yk #C8Q1CD3g
  4. [ 編集 ]

上のコメント昨日の頁に対してでした。 失礼しました。
改めて今日の教会。 このクリプタいいですねえ。早速場所確認。
知っていたら、2012年のトスカーナの旅、オルチャ鉄道なんか乗らずにタクシーでここへ行ったのに。
しばしグーグルマップをひらいて夢想。
ロンゴバルドって聞いただけでわくわくします。ブレシアの柱頭は普通にアカンサスでしたが、ここは バスケットの部分が浅くて彫られた図柄もみたことがないものが多いです。
サンサルバトーレ教会は訳すなら 救世主教会、とおもうのですが、、。
  1. 2020/05/04(月) 02:47:32 |
  2. URL |
  3. yk #C8Q1CD3g
  4. [ 編集 ]

Abbadia San Salvatore

 凄いクリプタですね。さぞ感動されたことでしょう。
2016年のイタリア探訪の際、corsa さんに教えていただいた Acquapendente のクリプタを
見学して、Siena 方面へ向かう途中、この近くを通過しました。この町に関しましては、 Guida
rapida d'Italia イタリア公式ガイドでマークはしていたんです。しかし、8世紀のクリプタは発掘
中と記載されており、カットしてしまったんですな。
 考えてみれば25年も前に発行された本ですから、もう発掘は済んでいるだろうくらいの想像は
働かせねばならなかったんですね。発想と調査能力の欠如、ってことですか。
 詳細な写真を拝見して、行ったつもりになっています。
  1. 2020/05/05(火) 09:06:51 |
  2. URL |
  3. ほあぐら #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

YKさん、いつもありがとうございます。

> 丸塔、私はアイルランドを思い浮かべました。これも、もっと上につみあげたかったように見えます。アイルランドの塔は以前は Vikingの襲撃にそなえて宝物をしまったり、イザというときの避難所とか言われていたのですが、現在では鐘塔とかんがえられているそうです。
ここは、ラベンナの影響だとありました。地理的にもそれはありそうですが、丸い鐘楼は城砦系の応用とかもありそうです。でも、ここは街はずれだし、やはり教会建築でしょうか。

> 私は行ったときには床に半円形に石が並べられていました。祭室みたいに使われたことがあったのでしょうか?
今も並んでいると思いますけど、それが往時のものなのかどうかは不明です。いずれにしても、鐘楼としては、一部崩壊したのか、または途中で建設をやめたのか、未完としか思えないですし、内部があの大きさでがらんどうのまま、何にも使用していなかったとは考えにくいですよね。

> 丸塔といえばイ―ストアングリア(英国)のさほど高くない塔を思い浮かべます。見かけはこちらの方に似ています。とてもみたくて、二年前 ロンドン滞在の旅を申し込み、一人でノリッジに行って回る予定でホテルまでとったのですが、ツアーが催行されませんでした。この年ではもう一人旅は無理でしょう。機会があったらぜひいらしてブログにのせてくださるとうれしいのですが。 https://www.roundtowers.org.uk/
英国は、右ハンドルがネックなんですが、一度は行ってみたいと思っています。早くオートマが標準になってくれれば、助かるのですが、笑。

> クリプタ 私が行ったときは真っ暗で小さな窓から差し込む西日が頼り。足元にも柱頭と同じ彫刻があったのですね。こういうデザインもめずらしいですよね。
昔々訪ねた時は、あいていたかどうかも定かじゃないんですけど、いずれにしても、真っ暗で入れなかったと思います。少しずつは、見学用によくはなっているということですね。ピエンツァは観光地だからでしょうけれど。
  1. 2020/05/05(火) 22:11:17 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

YKさん

> 知っていたら、2012年のトスカーナの旅、オルチャ鉄道なんか乗らずにタクシーでここへ行ったのに。
これは、この旅の直前まで、ノーチェックで、我ながら情けないです。ご紹介できなくて、残念でした。
照明など、すごく研究して、今のような形態になったと、後付けで読みました。やりすぎ感はあるのですが、細部まで観察できるのは確かです。
  1. 2020/05/05(火) 22:13:01 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
  4. [ 編集 ]

Re: Abbadia San Salvatore

ほあぐらさん
ここはロンゴバルド起源、要はプレロマネスクなので、ゾディアックにも出ていないのですね。ロケーション的には、アクアペンデンテと同地域となりますね。
> 2016年のイタリア探訪の際、corsa さんに教えていただいた Acquapendente のクリプタを
> 見学して、Siena 方面へ向かう途中、この近くを通過しました。この町に関しましては、 Guida
> rapida d'Italia イタリア公式ガイドでマークはしていたんです。しかし、8世紀のクリプタは発掘
> 中と記載されており、カットしてしまったんですな。

私がもう少し早くに、チェックを入れていればよかったですね、残念です。
この辺りは、ロマネスクは建て込んではいないのですが、ここにしかない、的な個性的で素晴らしいブツが、結構ありますね。本当なら、このイースターに、この地域の再訪をもくろんでいたのですが、残念なことです。
  1. 2020/05/05(火) 22:16:06 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する