2017年7月 エトルリアを巡りつつロマネスクもちょっぴり、トスカーナとラツィオの旅 その5
このときの旅、記憶の中では、かなりエトルリアより、一般観光地より、というイメージを持っていたのですが、振り返ってみると、結構ロマネスクを訪ねていたので、今更あきれています。旅程については、同行者から一任されていたものの、なるべく偏りすぎないように、企画したつもりだったのですが、やはりどうしても、そっちにそっちに行ってしまうんですね、笑。
さて、次は、以前ラツィオ北部を一人で回った時に、苦労した挙句に初めて遭遇して、驚愕に近い感動を得た場所です。その時の印象が、いまだに鮮明で、今回はパスしてもよいくらいだったのですが、ここは、中世に私ほどの思い入れがなくても、イタリアに暮らす以上は、それなりに見ておいて損のない場所ではないか、というのも変ですが、色々な意味で歴史を感じられる場所でもあるので、そんな風に考えて、再訪した次第。
アクアペンデンテAcquapendenteのサント・セポルクロ教会Basilica di Santo Sepolcroです(2017年の時点で、日曜9/10:30、それ以外9/12、16:30/18:30)。
なんせこの外面、中世とは程遠いスタイルですから、同行者も、なぜここに?と、驚いていました。
この教会、長い歴史の中で、上物はこのような姿になってしまったのですが、実は素晴らしいクリプタが残されているのです。
サント・セポルクロとは、言わずもがなですが、聖なる都市エルサレムの教会を模した教会につけられる名前です。ここでは、クリプタが、サント・セポルクロを模しているようです。
詳細を調べたりすると、先に進めなくなりますので、それは将来時間ができた時のためにとっといて、さらりと、斜め読みしますと、ここは、前回のサン・サルバトーレ同様に、Via Francigenaが通る町。それも、まさに街道の宿場町だったようです。多くの巡礼が、この道をたどってローマへ、そしてエルサレムを目指していた往時、この町は周辺に比べても、巡礼で繁栄し、多くの巡礼宿や関連施設があったそうです。そういったことから、修道院が建てられ、サン・セポルクロを模した教会が10世紀に建てられたというのが、歴史のようです。
伝説では、以下となっています。
ローマ帝国皇帝オットーI世の母親であるマチルダMatilde di Westfaliaが、サント・セポルクロにささげる教会を建てる意図をもって、ドイツからローマへ向かう旅の途上、このアクアペンデンテで旅をストップする羽目になったのです。というのも、教会建設に必要な黄金を運ぶラバが、梃子でも動かなくなってしまったから。そして、マチルダは、まさにここに教会を建てるべきだ、という夢のお告げを受けるのです。
こういう、「ここ掘れわんわん」的な起源は、枚挙にいとまがないですね。とはいえ、おそらく、教会建設に適した理由はあったのだと思います。地形とか、そして、実際に滞留する巡礼者が多かったとか。地形的には、トスカーナから南下して、この辺りから、ボルセーナ湖へ向かって、なだらかになるところなので、明らかに関係はあると思います。
さて、そういうことは置いといて、久しぶりの再訪でも、やはり同じように感動しました。
ここは、サン・サルバトーレのクリプタとは、まったく違う様相で、全体に天井が低く、柱は太くて重厚で、武骨な感じです。石の色と相まって、薄暗がりの雰囲気も、大変に美しいです。
スペースは結構広いのですが、円柱が林立していて、見通しがきかないので、迷宮に迷い込んだ気分になります。ロマネスク・トリップというか、ある意味お手軽に中世にトリップできるんです。
サン・サルバトーレは、技術の粋を集めたライトアップで、隅々まで見ることができる良さがありますが、本来のクリプタは、うすぼんやり系で味わいたい、と思う向きには、程よい灯りだと思います。
うすぼんやりですが、柱頭は目の高さにあるし、とてもでかいので、撮影にもとても優しい状態ですよ。
彫り物は、力作ぞろいです。動物やシンプルな植物モチーフ、どれもサイズがデカいので、迫力あります。
それにしても、上物には中世の香ゼロなんですが、よくクリプタを、手つかずに遺してくれたものよ、とありがたく思います。聖なるセポルクロだから、やはり手を付けたくなかったんでしょうか。
力作ぞろいですが、ここならでは、という何かはないかもしれません。当時多く使われていたモチーフがそのまま使われているような印象も受けます。複数の石工さんがかかわっていると思いますが、個性的、というものはないかと。
ただ、それらが一堂に会して、この独特のスペースで並んでいる迫力がすごいから、それで、ここが特別な空気を持っているんだろうと思います。
この辺りは、再訪の可能性も高いので、またいつか訪ねることもあると思います。きっと、いつ戻っても、クリプタへ降りる階段でドキドキして、そして、柱の森を目にして、ひしひしと喜びを味わうことと思います。いつも同じように。
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2020/05/10(日) 01:20:29 |
ラツィオ・ロマネスク
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