fc2ブログ

イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

一文無しの夜

やられてしまいました…。30年近くミラノに暮らして、スリや盗難は、結構日常茶飯事的にあったのですが、ここまでのは初めて…、というレベルの盗難に合ってしまいました。
例年に比べて短いながらも、楽しいイタリア中部の旅から帰還中の出来事でした。それも、我が家の前が舞台です…。

車で帰宅する途中に、後方から近寄ってきたスクーターに乗った男性が、走行中にも関わらず、信号待ちの際に、私の注意を引こうと二度ほど窓をたたいて何か言っている様子でしたが、うさん臭さがあったので、振り切りたいと思ったのですが、できないでいました。
あと、50メートルほどで我が家に到着するころ、変な感触と同時に音があり、車のダッシュボードに、「タイヤに異変」サインが出ました。その時は非常に素直に、あ、さっきの人は、パンクを教えてくれた親切な人だったのか、と思ってしまいました。
今の車は、まだ7000キロ弱しか走っていませんし、昨夜走った道は、パンクするような道ではなく、本来なら、パンクそのものをおかしいと思うはずなのですが、実は、旅の初日に、同行者の車だったのですが、鋲のようなものを踏んで、見事にパンクしたということもあったために、「まさか私まで?でも、ありえる」、と思ってしまったこともあります。

それでも、自宅前まで走って停車して、まずは車のカギだけ持って下車。スクーターの人が示していた後部右側のタイヤ、つまり運転席から対角にあるタイヤを確認したところ、見事にぺしゃんこ。えええ、まじかよ~、としばし呆然としつつ、まずは旅の同行者に電話をしようとカバンを取ろうとドアを開けた途端、先ほどのスクーター野郎が登場したのです。

開口一番、「僕が異変を教えてあげたのに、なぜ停車しないんだ!」と、いきなり切れて、バイクのエンジンはつけっぱで、タイヤの方によります。その時もまだ、彼を疑っていなかったのですが、コンプレッサーがあれば、僕が手伝ってあげるの何のと、空気入れのキャップを勝手に外してもてあそびだします。
この人、気持ち悪い、と思いつつ、でも、この人が仕組んだとは思っておらず、彼が示す場所を見ようと、タイヤに近づいた時、彼は、バイクを急発進して去りました。
その時初めて、やられた!と気付き、バックを探したところ、もちろん影も形もなく、呆然です。
バッグには、家のカギはもちろん、スマホ二台、うち一つは職場の支給品、デジタルカメラ、お金をおろしたばかりの財布…。ただ茫然として、車のカギだけ持って、近所を徘徊しました。

というのも、こちらでは、ひったくりは現金が目的で、現金を抜き取った後のかばんは、そこらのごみ箱に放り込むことが多いからなんです。

道端のごみ箱を確認しながら、半時間も歩いていたでしょうか。
ハッとして、鍵もないし、今夜どうしたらいいんだっけ?と現実に引き戻されました。ただ茫然としていたので、悔しさや悲しさや情けなさとかはあまりなくて、ただかなり困った状態にいることはわかりました。
一生懸命冷静になって、どうしたらよいのかを考えて、幸い近所に住んでいる友人がいるので、まずはそこに行こう、と決めました。その友人は、もうお休みを終えて、ミラノで仕事していることは知っていましたが、外出していたらアウトですが、他に手段は思い浮かびませんでしたので、歩いて向かいました。
幸い在宅で、すぐに、旅の同行者にも連絡をしてくれて、同時に、鍵を開ける専門家をネットで探してくれました。
実は、先週今週は、ミラノ市内のほとんどのお店がお休みという時期で、そういった人たちも、24時間営業を売りにする人しかいないため、選り好みすることもできないのが現実です。

幸い、その人が9時半ごろ来てくれて、それから1時間近くかかったでしょうか。何とか二つのカギを壊して、家に入ることができました。一つのカギは付け替えてくれたので、とりあえず寝ることはできましたが、なんせすべてのカード類と、スマホのSIMをブロックしなければならなかったため、ベッドに入れたのは1時過ぎだったと思います。

今日はまずは警察に届け出のため、早起きしたところ、7時半過ぎに、会社の同僚が家の固定電話に連絡をくれました。狐につままれたような気持ちで話を聞くと、なんと、盗まれたバッグは、昨夜のうちに、親切な人が回収してくれていて、私がメモ帳に記していた電話に、片っ端から電話をしてくれていたそうなんです。
ひどい人もいれば、素敵な人もいるってことで、救われる気持ちでした。

すぐその方に連絡して、無事、バッグは戻ってきました。
幸い、会社の携帯は無事、旅の記録メモやメモ帳、アドレス帳、そして、イタリアの滞在許可証や身分証明書も無事で、それはありがたかったですが、当たり前のように、新品の自分の携帯や、旅の記録が入ったデジカメは、予備のバッテリーともども、なくなっていました。もちろん現金は、きれいさっぱり。

昨夜は絶食状態で寝てしまい、今朝も段取りを考えるとあまり食欲がわかず、24時間、ほとんどまともに食べていない状態で、どうも元気も出ないのですが、不幸中の幸いがたくさんあって、感謝の気持ちもたくさんあります。
予備のカギを誰かに預けなければ、とこの数年、ずっと考えていたのに、また、家の総合保険を買おうと思いつつ、実行しなかった自分の馬鹿さ加減を呪うしかありません。
身分証明書が戻ってきたのは、本当にありがたいことですが、今回の旅の記録が、まったくなくなってしまったことは、ここだけは心底悔しいです。カメラなど、取られていいのですが、SDカードだけ、返してほしい…。

おそらく、また行けよ、ということだとは思うんですけれどもね。Covidのせいで、いろいろな制約があり、思うような訪問ができない教会も複数ありましたので。それにしても、めったに入ることのできない教会の写真は、本当に悔しいです。

というわけで、今回の旅は、写真がほとんどないのですが、そのために自分の記憶の劣化が激しいはずなので、写真なしで、一応記録は残したいと思います。
お楽しみに、というのもおこがましいですが、写真がないじゃん!と思ったら、これが理由です

イタリアって、本当にね。以前は、悔しいよりも悲しくなったものですが、長く生活していると、こういう国だということは身にしみているので、己を馬鹿だと思うばかり。ある種の悟りがありますな。
傷心で警察に行っても、誰一人親身になんかなっちゃくれない上に、最後にちょっと呼ばれたら、「こいつ、同僚なんだけど、日本が大好きなんだ!ちょっと話してもいい?」と、こっちの傷心思いっきり無視の能天気さだったり、SIMの再発行が無料だったり、なんか、想定の斜め上みたいなことがたくさんあって、結局、仕方ないよね、無料?ありがたいよね、みたいな、小さな幸せに喜びを見出すみたいなことになります。そういう国です。日本とは、方向性が違いますよね。自分、打たれ強いと思います、笑。

にほんブログ村 美術ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 美術ブログ 建築鑑賞・評論へ
にほんブログ村

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 海外生活ブログ イタリア情報へ
にほんブログ村

インスタグラムに、これまでのロマネスク写真を徐々にアップしています。
Instagram, Notaromanica
スポンサーサイト



  1. 2020/08/19(水) 02:56:52|
  2. ミラノ徒然
  3. | コメント:5
<<エトルリア再訪と、ロマネスク巡りの旅の始まり(チェッロレ) | ホーム | 小さな古いクリプタだけど、電気も来てます!(ブレーメ)>>

コメント

御無事がなにより

 とんだ災難でしたね。何処にいてもそうしたリスクは誰でも背負ってはいるものの、それが
自宅の前で起こったのですから、相当のショックだったと想像しています。
 あたしも数年前にフランスのニース近郊カーニュのルノワールの美術館に行った時、駐車
場に止めた車の窓を割られて、バッグのほかデジカメと外付けハードディスクなどを盗まれ
ました。まだチップが1M時代だったので撮った写真を全部ハードディスクに移してましたの
で、約一か月分の旅の記録がパーになってしまったという苦い経験があります。
 バッグはいいから、ハードディスクだけは返してよ、と言いたい気持でしたが、ついに何も
出ませんでした。盗難保険で金額的には不満はありませんでしたが、お金で買えない写真
と精神的なダメージはかなり後までお尾を引きました。
 モノだけで済めば「命あっての物種」とも言いますので、写真はもう一度取り直す旅の出
発点と考えて、ショックから早く立ち直って、ください。
 では、お元気で。 
   コロナの東京から、ほあぐら。
 
 
  1. 2020/08/20(木) 03:11:33 |
  2. URL |
  3. ほあぐら #-
  4. [ 編集 ]

ご愁傷様です

お強いというかそうでなくちゃ生きてけないんでしょうな彼の地では。
私めもイタリアの旅で、ローマの掏り集団にしてやられた経験があります。自分で言うのもなんですが手慣れたグループワークは見事でした。ナポリの少年たちの窃盗行為は稚拙で乱暴だったのでバッグは無事でしたが、妻は車から引きずり出されそうな怖い目に遭いました。
でも悪いことばかりじゃありません。同じ旅で家族ぐるみのお付き合いができる出会いもありました。
めげないでくださいね。
この記事に出会って即座に非公開コメントを書いたはずでしたが、履歴になっておりませんので再度!
頑張れ!!
  1. 2020/08/21(金) 12:55:35 |
  2. URL |
  3. ote #TQU6yXy2
  4. [ 編集 ]

Re: 御無事がなにより

ほあぐらさん
コメントありがとうございます。まさに命あっての、と考え、立ち直りは早かったのですが、日々対応をしていく中で、逆に、いかに恵まれていたことか、と実感し、何かしらに感謝の日々です。
今年は、いきなり病気で倒れるなど、不吉な年初で始まり、いやな予感しかしなかったのですが、まさに予感通り、事件ばかりです。いわゆる厄年というやつみたいですが、ここまでいやなこと続き、という年は、なかなかなかったですねぇ。
でもきっと、コロナで、世界中のたくさんの人々が、いろんな苦しみを感じて生きているご時世ですから、この程度で落ち込んではいられない気持ちもいっぱいです。本来、この夏は、お出かけさえままならない可能性もあった中、とりあえずお出かけができて、写真はなくなっちゃったけれど、見たかったものを見ることができて、それだけでとても幸せだったのも、事実なんです。
トスカーナもラツィオも、まだまだ見るべきものがありますので、必ずや再訪するつもりです。コロナが、いつ収束するかはわかりませんが、共存に慣れてきたら、各地の訪問も、今よりはスムーズになりそうですし。
せいぜい、ブログで、過去写真をアップしていきたいと思います。
引き続き、よろしくお願いします。
どうぞ、日々、お気をつけてお過ごしくださいね。
  1. 2020/08/23(日) 10:22:46 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
  4. [ 編集 ]

Re: ご愁傷様です

Oteboさん
コメントありがとうございます。非公開コメント、どこに行っちゃったんでしょうね?私も、いまだによく使い方がわかっていなくて、すみません。
おっしゃる通り、いやなことがあっても、またいいことに出会ったり、そういうのが旅であり、また人生ですよね。今回も、バッグを回収してくださった方には、感謝の気持ちしかなく、こういう素敵な人もいるのだという事実、人の世のありがたさっていうか、感じました。
しかし、ついてない日々です。因果応報だとしたら、過去に何をやらかしたのか?でも、結果的に、不幸中の幸いみたいなことも多くあるのは、なぜ?と謎の日々、笑。
いずれにしても、四度ふられた教会もありますので、再訪は必至です。今週パンクが直せたら、ガンガンお出かけする予定です!
あ、でも、お休みも終了しちゃいますから、そうそうは遊んでられないですけどね、笑。
  1. 2020/08/23(日) 10:28:43 |
  2. URL |
  3. Notaromanica #-
  4. [ 編集 ]

お見舞い

悲しい出来事、お見舞い申し上げます。
楽しい記事への感謝お礼を含め、次の記事を紹介致します。
カトリックの国、イタリアでチベット仏教体験はいかがですか?
2020/05/17
敬虔なカトリックの国イタリアに、ヨーロッパで随一の大きさを誇るチベット仏教寺院があります。ピサ州のポマイア(Pomaia)という街にある、Istituto Lama Tzong Khapa(イスティトゥート・ラマ・ツォン・カーパ)です。
寺院といっても外見はお城を彷彿とさせますが、中には立派な僧院があり、ログハウスに個室、ドミトリーなどの宿泊施設や食堂も完備されています。
名称:Istituto Lama Tzong Khapa (イスティトゥート・ラマ・ツォン・カーパ)
住所:Via Poggiberna, 15 56040 Pomaia (Pisa)
電話番号:+39 050/685654 月曜から金曜(9:00 – 12:30/14:00 – 18:00)、土日(9:00 – 17:00)
メールアドレス:segreteria@iltk.it
公式サイト :http://www.iltk.org/it(イタリア語)、https://www.iltk.org/en(英語)
  1. 2020/11/29(日) 06:02:22 |
  2. URL |
  3. マサムネ #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する