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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

サロメもびっくり、ヘロデ王の顎クイ(トゥールーズ31、その6)

2017.08.ミディピレネー及びオーベルニュはカンタルの旅、その6

オーギュスタン(またはデゾーギュスタン?)博物館Musee des Augustins、続きです。
ここのすごさは、その展示の作品数もなのですが、なんといっても、ほぼ目の前の高さで、身近に彫り物が見られる、ということに尽きると思います。

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カテドラル・サン・テティエンヌの扉口を飾っていた12世紀の柱頭。
扉口なら、まぁまぁ近いとはいえ、実際に現場にあれば、やはり細かいところまで肉眼で見るのは無理です。特に、この柱頭のように細かい彫りだと…。
それが目の前に置かれているのですから、葉っぱのすじすじやライオンの鬣が一筋ずつ確認できちゃう。

これも、カテドラルの扉口にいらっしゃった、ピエトロさんとパオロさんだと思います。

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現場だと、全体は見るし、顔とか手は注目しても、例えばこの足元の細かいタイルみたいなのは何だろう、とか、そこまでは気付かないと思うんですよね。
同じ手によると思われる、別の聖人カップル。シュッとした柔らかい曲線の、とてもスペースに合わせた感が、いいですねぇ。

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こっちは、やはりカテドラルですが、回廊にあった柱頭のようです(確かではないようです)。

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サロメですよね!
なんか、すごく物語性を感じさせます。ある意味劇画チックなシーンの切り取り方で、びっくりします。

こちらは、サン・セルナンにあったもの。

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西側の扉口にあったもので、1120年ごろとされています。
それにしては、表情から何から、もっとずっと後の時代のもののような新しさが感じられます。
これ、向かって左の人がライオンを、右の人が子羊を抱えています。これの意味するところは、長い間、ジュリアス・シーザーの時代の伝説を具現化したものだとされていました。トゥールーズの二人の処女が、キリストの審判の予兆として、一人はライオンを、一人は羊を生み、高潔さは、羊のような優しさで、その逆が、ライオンの残忍さであらわあれているといったもの。
しかし、現実にはその伝説は、14世紀以降に流布したもので、まさにこの浮彫によって生まれたものらしいです。ふふ、思いっきり眉唾状態なんですね。
羊もライオンも、結局はキリストのシンボルなので、単純に信仰の図像化ということで、今は収まっているそうです。でも、なんか意味深だし、絶対意味があるよね、と思っちゃう二人組ですよね。

ちなみにこういうことは、ちゃんと読んでないけど、現地で購入した本で、見ています。ありがたいことに、英語版があったんですよ。でも、英語でも難しいな。

これは、サン・セルナンの回廊にあったとされるもの。

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彫りが細かくて、すごいです。サン・セルナンは、今ある本体だけでも、900くらいの柱頭があるとあったですが、回廊にもこんなのがずらりと並んでいたんだとしたら、さぞや壮観だったでしょうね。

展示の中で、一番多かったのが、たぶん今はなくなってしまっている修道院La Daurade出自のものだったと思います。購入した書籍での紹介も、ここのが一番多い。

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12世紀後半というのは、他二つの教会のものより、ちょっと時代が後になるみたいですが、これまだドラマなものが多かったです。

これは、ヨブの物語らしい。

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私は、いまだに聖書のお話をしっかりと頭に入れてないんですけれど、ヨブさんは、忍耐の代名詞になっている方なんですね。
これは、ヨブが悪魔に皮膚病にされて、三人の友達が訪ねてきたところなのかな。細かい彫りですねぇ。副柱頭部分の装飾的な彫りも、素晴らしいです。

副柱頭部分は他の柱頭でも、こういった装飾的なフリーズが彫られていて、遊び心満載です。

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こんなかわいい子が、こっそりと彫られているんです。
一方で、こんなすっきり系の柱頭もあり。

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ミカエルかジョルジョと思ったら、キリストに自ら悪魔征伐らしい。なんか、仏教の、鬼を踏んづけるやつ、ほうふつとさせる図柄ですね。ほら、金剛像が、よく踏んづけてますよね。態勢が同じ、笑。

こちらは、柱頭をぐるりと、キリスト降架の物語になっていたはず。

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この、何ですかね、ハチの巣みたいになってるところ。もしかして全部背景やりたかったけど、できなかったのかな。ちょっと半端な、それにしても細かさがすごい。
なんかこういう物語性のあるものを一つの柱頭にまとめて描き出すとか、なんかすごいなぁ、としみじみ感心したのを覚えています。これも、目の前にあって、簡単にぐるぐるして、全部を見ることができるからわかることだと思うんですが、この空間に一つの物語を封じ込めるために、マエストロはすごく考えるんだろうなって思えたんですよね。
彫るのは、技術が向上すれば、どの職人でも彫れると思うんだけど、こういうシーンを作っていくのは、彫る以上に難しい作業だろうな、と。

これも、すごく感心した一つ。

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魚はもちろんキリストのシンボルですよね。しかし、こんな堂々と、グリル状態で彫られるというのは、独特ですねぇ。
そして、すごく写実的でうまい。
写実のローマから見ると、なんかすごく下手くそで、デッサンできなくて、何かが劣るみたいな風に考えられがちだけど、こういうの見ると、決してそういうことではなく、私も好きなヘタウマみたいなのって、表現の方向性が違うっていうことだとしみじみ思います。

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下はすっごく聖書の場面なのに、副柱頭では、アクロバットの人がいたりする斬新さは、ロマネスクならではの表現ですよね。こういうのが好きなんだよなぁ。

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ほら、これも本体と副柱頭で、違う世界が展開されている。いいなぁ。
こんな柱頭がこれでもか状態です。
この修道院、なんでなくなっちゃったんだろう。保存しておいてくれたら、その方がよかったよね。これら、回廊の柱頭ということなんで、あまり高いところにあるものじゃないし。今もそのままあったら、本当にすごい回廊だったろうね。

というわけで、きりがないので、この辺で。

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  1. 2020/10/17(土) 01:39:25|
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