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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

最後の最後に試練が(コルティーヌ及びシャステル・シュル・ミュラ―15カンタル)

2017.08.ミディピレネー及びオーベルニュはカンタルの旅、その47

まだしばらく、ある意味カンタルらしいかもしれない、地味目の教会が続きます。

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コルティーヌColtinesのサン・マルシアル・エ・サン・ヴァンサン教会Eglise Saint-Martial et Saint Vincentです。
ここは、大変わかりやすいロケーションの上、教会前が広々とした駐車場になっているので、見学には大変便利です。
が、私が訪ねた時はクローズでした。
確か、教会の裏側に接しているお家のお庭で、お食事会中の方々がいたので、鍵のありかを訪ねると、お隣のお店で管理している、ということだったと思いますが、お店は昼休み中で、開くのは16時とありました。その時15時だったので、他を回った後で、戻ってきて、見学を果たしました。
そういうわけで、最初は、記念的にこんな写真を。

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ロマネスクやってる人には同意していただけるかと思いますが、こうやってカギを探して、自分で開ける喜びって、格別ですよね。普通に開いているところを入るときよりも、わくわくドキドキ、胸が高鳴っちゃいますよね。
それが、こんな重厚な扉だったりすると、ほんとにもう幸せいっぱいな気持ちになりますね。

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ただ、時々、うまく開けられなかったり、そういえば中に閉じ込められてしまったこともありますし、結構リスクもありますけれども、笑。

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中は、デジャブ―感ですかね。これまでの教会にも似た、外も中も、新しくされている様子が、まず飛び込んでくるタイプの教会です。一部、内陣に向かって、注目すべき柱頭があります。

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ここの彫りは、太い線で一気に、とでもいった、非常に大胆でおおらかな構図のものです。素朴、というよりは、大胆。迷いのない線的な意思を感じます。

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これは、良き羊飼いだったりするのかなぁ。
惜しむらくは、暗かったんですよね、ちょっと。肉眼ではあまりよく見えない程度の暗さで、この石色がグレーで、暗闇に沈む感じで、あまり識別できなかった、というのが、正直なところです。
近々ヘッドライトみたいのを購入しようと思っているので、そういうサポートがあれば、見え方も、印象もずいぶん違ったことと思います。実際、こうやって写真で改めて見ると、かなり好物的な彫りなのに、見学時は、あまり強い印象を受けませんでした。

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次は、ちょっと強烈でした。

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シャステル・シュル・ミュラChastel-sur-Muratのサンタントワーヌ礼拝堂Chapelle Saint-Antoineです。

ここね、びっくりしましたよ。
村にたどり着く前に、幹線道路から、丘の上に見えるんですよ、この礼拝堂が。まさかあれじゃないよな、あんなところ登れなそうだよ、車で、と思いながら村に入ると、村にはそれらしいおのが何もない。事前のメモを確認すると、「村の南側外れ、何もない場所」と書いてあったので、やはりあれかも、とそちらの方に移動して、車を降りてうろうろしていたら、ウォーキング中的な中年カップルがやってきたんです。
尋ねると、この丘の上にあるのが、私が目指す礼拝堂で、あそこは徒歩しか行けないから、車はここにおいて、この道を登るんだよ、と。彼らは、毎日ウォーキングで、礼拝堂まで上り下りをしているのだそうです。
どうしてもどうしても行きたい、という分類はしていないし、顔にためらいが出ていたのでしょう。15分程度だし、その靴ならまったく問題ないよ、と勧めてくれ、では、僕らは行くから、とすたすたと登りだしました。

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こんな木立の道ですから、一人では躊躇して行けなかったと思いますが、こういう方がいるなら安心なので、ついていくことにしました。
実際は10分足らずののぼり道だったようです。
登ってよかったと思ったのは、まずは、これ。

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距離は大したことないのですが、結構な急坂なので、見事なパノラマが360度広がり、絶景でした。気持ちよかったです。
礼拝堂は、絶対開いてないんだろうと思っていました。
建物も、外側は見るものもないし、でも、絶景があったからいいか、と思っていたのです。が、なんと。ちゃんと開いているではないですか。

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小さな祈りの場ですが、今も美しく保存されているのは、驚きです。
こういうこじんまりとした石の雰囲気は、大変好みです。スタイルが完璧でなくとも、こういうロケーションだからこその静謐さや、祈りの思いが感じられます。

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外の地面から、ずいぶんと下に降りるようになっているのですが、これは、外の地面が高くなったということなのかもしれません。外側構造はずいぶんと新しいし、この扉口あたりもそうですしね。
礼拝堂は12世紀で、両脇にチャペルが増設されたのが15世紀とあり、この扉口も、そのころのものらしい。

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壁全体への絵画装飾も、15世紀のものということのようです。
構造は、柱頭も含めて、ロマネスク時代となるのですね。かわいい内陣です。

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柱頭は、植物モチーフ中心ですが、この、ニコニコした様子の童子っぽいのは、もしかすると、聖アントワーヌなのかな?アントワーヌって、アントニオ?ウーム、名前すら識別できないのが、困ってしまいます、相変わらずのフランス語音痴、笑。

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なかなか風情があって、後代の絵も、退色が程よくて、邪魔しないんです。

予想外に、中まで入れたので、登ってきた甲斐がありました。美術的観点からは、さしたる重要性はないかもしれないのですが、こういう場所って、なかなか着にくいわけで、たまたま地元の人がいてくれて、本当によかったと思いました。
でも、最後に試練が待っていました。

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今年の主役たちですが、笑、確かに上るとき、登り口の近辺にいたんですよ、一団が。しかし、降りてきたときは、山道から車が停めてある場所までをふさぐ感じに、さらに多くの方々が広がって草を食んでいたんです。
これには弱りました。彼らを完全に避けようとすると、すごい藪を進む必要があり、少しでも藪のない場所を行くには、どなたかのそばをすり抜ける必要があり…。
乗馬のおかげで、馬は多少知っていても、牛は未知なので、反応がわからない分怖いんですよねぇ。走ると結構早かったりするのを知っていたり、半端な知識がありますからね、これまでの経験で。
考えると、田舎に行くと、フランスでもスペインでも、牛は結構いるので、もうちょっと牛の性質は知っていても損はないのかもね、と改めて思います。
こわごわ、かつ、素早く、何とか複数の方のわきをすり抜けて、車にたどり着きました。完全に無視されていたので、おそれは杞憂でしたが、用心に越したことなしです。

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