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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

てんこ盛りの解釈は…(セニェ、その2―15カンタル)

2017.08.ミディピレネー及びオーベルニュはカンタルの旅、その69

セニェSaignesのサンタ・クロワ教会Eglise Sainte-Croix、続きです。

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小さな合唱席に登れたので、すかさず登りました。全体の雰囲気が味わえます。
勝利のアーチのところに掲げられたキリスト像が、ぼんやり明るくなっていますね。これは、ファサードにあるバラ窓から、光がさしているのかと一瞬思いましたが、西側から光が差す時間ではないので、それはない。
おそらく、鍵守りさんが明りをつけてくれたんでしょうね。

さて、柱頭です。レベルが高そうなやつから行ってみます。

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グリフィンが角っこでごっつんこスタイルのやつ。これは勝利のアーチの根元にあります。
グリフィンは、オーヴェルニュでは、非常によく使われているフィギュアということです。グリフォンは、神聖な場所を守る門番さんのお役目を務めているために、身廊から見ることのできる二面にだけ置かれているとか。他の一面(右の方にちらりと見えるやつ)はシンプルな植物模様で、ただ場所を埋めるためだけに石工さんが彫ったもので、ロマネスクの典型的な処理の仕方、とありました。本とかあると、結構余計な感じで、どうでもよさそうなこともいっぱい書いてあって、悩ましいわ、ほんと。

向かいには、植物系のぐるぐるしたやつ。

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これ、松ぼっくりらしい。
ドヒャ~。解説読んでよかったと思いました。
この松ぼっくりのタイプ、昔、ミラノから日帰りで行ける教会で、明らかに松ぼっくり、またはパイナップル、としか思えないこの手の彫り物があったんですが、いや、これはブドウですよ、と言われて、あんまりびっくりしたのでもう忘れることができず、それ以来この手のフィギュアを見たら、どう見ても松ぼっくりだけど、これはブドウ、と思ってきたんですよ。この記事でも、結構そう書いてきたと思います。
でも、松ぼっくりもありだったんですね。いやはや、ダメだよ、全部そうだと思ったら。でも、その教会のも、本当にこういうやつだったんですよ。もしかして、あそこでブドウだと教えてくれた人も、思い込んでるだけ、という可能性もありますな。

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これがまた、なんだか盛沢山な柱頭です。
真ん中に棕櫚があって、右にライオン。これはたてがみの感じがライオンだけど、変なデフォルメの方。

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左側には鷲がいます。上の副柱頭には、前回紹介したつやつやのコッペパンみたいのがありますが、これはやはり松ぼっくりということらしいです。

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副柱頭の右側では、頭部があって、カバンがあって、蛇がそれを引っ張っています。カバン?なんのこっちゃ、と思ったら、例のあれ、守銭奴のカバンらしいです。そういえば、守銭奴のカバンって、大抵こういう風になってるね。これもオーヴェルニュでよくみられるモチーフということだけど、オーヴェルニュには守銭奴が多かったのかな。または貧しいやせた土地が多い地域とも聞くから、よそよりもさらに、独り勝ちしてほくそ笑む、みたいな罪を戒めたのかな。
副柱頭の正面は、3枚上の全体像を見てくださると出てるんですが、天使が、怪物に足をガジガジされちゃっている人に、翼を差し出しているようなシーンになっています。
複数の解釈があるようです。クジラの口から出ているヨナ、ライオンの穴のダニエルに食事を持ってきた天使、怪物に食べられそうな子供を助けようとする天使、サン・ピエトロの最初の書簡を表現した図(ペテロのお言葉?詳細不明)、など。

でもね、結局よくわからないらしいです。で、さんざん苦労して読んだ割には、最後は、天使が祝福のポーズをしているから、加護とかまじないしている場面だろう、だってさ。

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確かに指二本、祝福ポーズだけども、でも、この絶体絶命、すでに半分終わってる状態で、何か祈られてもなぁ、と思ってしまったら罰が当たるんかいな。

そんでもって、柱頭全体の意味を探るとしたら、動物の凶暴さをもって自然の摂理を表現してるとかなんとか。いや、それは違うと思うなぁ。
いずれにしても、天使の目の前で怪物が人を襲う様子というのは、善と悪の対決図に他ならないとしめてましたが。

そういえば、現場で、身廊で向き合っている柱頭それぞれが一対で、善と悪を表現しているとかいう説明を受けたんですけど、とすると、これは一つで善悪かい。

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てんこ盛り柱頭の向かいにあったのは、これだと思いますが、これは、「謎です」だそうです、笑。
謎だよねぇ。プルプルゼリーの間に、並んでる顔、それが、なんかゼリーとつながってるんだよね、綱みたいなものを口に挟まれているというか、自主的に噛んでいるというか。
書籍の著者は、植物がYという形を表していることまで気にしているようですが、なんだか、研究者も大変だな、というか、なんでも疑問にしようと思えば疑問になるよね。

でも確かにここまで不思議だと、色々考えたくなっちゃうのは、よくわかる。
職業的研究者になったら、単純に楽しむのが難しくなりそうですね。

プルプルゼリーの右の方にも、変な人がいて、これも謎ですよねぇ。

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まず、姿勢が変でしょ。で、表情も、妙に写実で、絶対モデルさんいたよね、という世俗な感じが、逆に違和感あります。これは、こういう意味です、なんて言える人は誰もいないと思うけれど、これを彫った石工さんは、何かわかって彫っていたんだろうし、教会を訪れていた多くの信者さんたちだって、きっとその意図を分かったんではないかと思うと、改めて千年というときの隔たりを感じざるを得ません。

もう疲れちゃったんで、あとはさらりと。

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こんなグリフィンもいます。むっちりタイプで、なんか暗闇でいけないことしてる二人が、いきなり見つかっちゃった、的な様子がありません?最初の方で、まじめにお役目している人たちとは偉いタイプの違うお仲間です。

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神の子羊ですね。十字架の、なんというか稚拙なしっかり感が、十字架というよりも、なんというんですか、なんか違います。美味しそう、とでもいったような…。また、不遜なこと書き連ねていますね、笑。

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この植物モチーフも、前回紹介したパン屋さんに連なるタイプ。本当にかわいらしいですよね、ふかふかつやつやのこの感じ。

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教会は12世紀の創建とありますけれど、柱頭見てると、なんかもっと古い時代のものではないのか、という疑惑が湧きます。
まぁ、すべてが、ではないですが、例えば下の奴なんて、とっても古そう。単に石工さんの技術が古くて稚拙だった、という可能性はあるんですけれども。

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でも、植物モチーフの小さい柱頭は、みんなとてもシンプルで大胆で、イメージ的には11世紀って様子でした。研究者じゃないから、言いたい放題。

お足元にも、いくつか装飾あり。

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これは、かなりお金かけた証拠だと思うし、そんな技術のない石工さんを使うようなとこではないようにも思うから、やっぱり古いはず。まさかの断定、笑。
続きます。

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