2017.08.ミディピレネー及びオーベルニュはカンタルの旅、その92
カルンナックCarennacのサン・ピエール修道院教会Eglise Ancienne Prieure Saint-Pierre、続きです。

この素晴らしいタンパンですが、前回、ちょっと見残しているので、そこから。
構図としては、特に新しさとかはないと思うんです。中央にアーモンドのキリスト、その周囲にはおなじみの福音書家四人のシンボル。そして、周囲に、これまたおなじみの使徒たち。
下段、向かって左側に並ぶ使徒たち。

そして右側の方々。

聖書を読み込むなどされている方には、それぞれが持っているものとか位置とかポーズとかで、誰が誰だか分かるのだと思いますが、私はさっぱりです。
信仰の方は置いといて、このタンパン、一番すごいのは、やはりその宝石箱ぶりではないかと思います。
それぞれの衣装の、キラキラぶりは、すでに言及しました。キリストの衣の宝石金糸銀糸は、これでもか状態でしたね。一見清貧な様子に見える使徒たちですら、よく見たら、胸元などに、かなり素敵な装飾が施されているのです。
タンパンの端っこの方にいる脇役的なこの人など…。

裾に素敵な絹の縫い取りが。いや、勝手に絹とか言ってますけどね。ここは、キリストとの対比もあり、宝石なし、金糸銀糸なしで、もうちょっと地味目の絹糸かな、と勝手に思うわけなんですけどね。
そして、各人の椅子が、これまた、なんでしょうね。

アーモンドのキリストの背景には、天の国エルサレムの風景が盛り込まれるようなんで、ここも、キリストはそうかなと思ったんですが、各使徒の椅子にも、どうやら天の国の様子が彫られているのでしょうか。装飾的ですが、これは建築ということなのかしらん。

建築をベースに、宝石的な装飾を付け加えて、椅子的に組み合わせるって、とても斬新。面白いと思います。
さらに、純粋な装飾的アイテムも、とても魅力的だと思うんです。
特に、タンパンの下に走るフリーズ。

いわゆるアーキトレーブに当たるのですけれど、それにしては細くて、本来とはずいぶん違うのです。そして、そこに置かれたモチーフは、屋内のアーチ下とか、この図柄のような感じで、後陣に置かれたモザイクの下とかに置かれることが多いタイプのモチーフじゃないでしょうか。

いわゆる、ラーメン丼のふちにあるようなあの、ぐりぐりとした模様。
ラベンナとかローマとかの写真を徘徊して、どっかになかったかと探したんですが、にわかには見つからず。同時に検索したところ、これ、多分ギリシャ起源のねじれたリボン文様というやつだと分かりました。日本語に訳しづらい…。
一方で、ラーメンどんぶりの模様に通じると感じたので、それで検索したところ、「雷紋」という中国起源のモチーフとありました。日本では、九谷焼あたりから使われるようになったとか。
雷紋は、迷路のようになっていることから、魔物が迷ってしまう、つまり魔除けとしての模様だったらしいのです。それがなぜラーメンどんぶりについているかというと、中国起源のそれらしい文様をつけると中華料理らしさが出るのでは、という理由だったのではないか、という説を見ました。
そこから、ギリシャ雷紋という名称が出てきたので、イタリア語では、Meandroということが分かりました。でも、そうなると、ちょっと違うものになりつつあるような。いずれにしても、ギリシャ起源の文様らしいです。
こういったビザンチン的な装飾性を、石で彫りこんでいるのは、珍しいように思います。この地域でしか見たことがないかも?まぁ、私の記憶ほどあてにならないものはありませんが…、笑。

ここで面白いのは、その文様の中に、やけに写実的な動物を閉じ込めていることです。かなり獰猛な様子のやつらがたくさん。まさに迷路に閉じられている様子になっています。
写実的な動物といえば、扉のアーチ部分の、最も外側、今はほとんど壊れてしまっているので、全容が不明ですが、一部残っている部分にもいるんです。

トップの写真を見ていただくと、どういう状態か分かると思うのですが、左の方にあります。

独特の表現です。羊?

こちらは、割とスタンダードな狛犬系のライオンですね。口が、なんとも。

右の方にもかすかに。
かなり大きめな動物たちですから、これがアーチ全体に彫りこまれた部分が完全に残っていたら、全体の印象が、また違ったものとなっていたことでしょう。

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- 2021/05/15(土) 18:33:44|
- ミディ・ピレネー・ロマネスク 31-81-82-46-12-48
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