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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

密なし(ボーリュー・シュル・ドルドーニュ その1-ロット46)

2017.08.ミディピレネー及びオーベルニュはカンタルの旅、その94

この辺り、ロマネスク的には、絶対に外せない教会が、かなりぎっしりなんですが、観光地としての押しは弱いというか、どこもここも結構田舎っぽくて、駐車も割とどこでもできちゃったりするんで、驚きました。何度か書いてると思いますが、フランスは、国土が広くて人口も分散しているとか、それで土地が余計にあったりするせいもあるのか知りませんが、車関係、かなり鷹揚だと思います。あ、イタリアと比較して、ということですけれど。

ちなみに、この日の行程は、こういう感じです。

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最終目的地であるモアサックのすぐ南が、出発点のトゥールーズとなる位置関係。つまり、もう旅の終わりが近い一日となります。
トゥールーズから、地図上でいえば、右の方に向かって、また左に戻るようにして、凸凹の円を回る感じの行程でした。

さて、今回の教会は、こちらとなります。

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ボーリュー・シュル・ドルドーニュBeaulieru-sur-Dordogneのサン・ピエール修道院教会Abbaye Saint-Pierreです(9時-18時)。
ここも町の中心部の、かなりごちゃごちゃした狭めの広場にあります。修道院教会ということですから、ここもまた門前町ということになりますが、前回のカルンナックよりは、町としてはかなり規模が大きいです。

この姿に出会ったとき、ほとんど昼時だったんですが、めっちゃ暑かったです。暑くて暑くて、とにかく、まず見るべきファサードは置いといて、すぐに本堂に駆け込んだことを覚えています。
教会、特にロマネスクの教会って、有難いことに、夏は涼しいことが多いのですよね。天井が高くて、壁が厚くて、開放感もあって、密にならない、考えたら、このCovid下では、理想的な訪問地かもね、笑。

というわけで、まずは中から行きましょう。

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内部は、特筆するようなものはあまりない、というより、タンパン部分が有名すぎて、検索しても、そちらの解説とかばかりに偏っていて、そういうのはちょっと残念ですね。ここは、手元にも資料がないのです。

この教会、というより修道院なのかな。起源は9世紀終わりごろと古いようです。当時地域で有力な資産家の尽力があったということで、多分、お金にあかせて贖った、そこそこ知名度のある聖人の遺物をまつったことで、巡礼などの集客にも成功して、さらに栄える、というような修道院だったようです。

キリスト教が教会宗教になったことで、キリスト教会は組織になったわけですよね。修道院はグループ会社みたいな縦割り管理で、修道院長は社長さん。純粋に、宗教的な意図から移動する修道士と、会社組織として見極めをして移動する修道士と、色々いたんじゃないかなぁ、とか考えるとその辺も結構面白い側面だと思うんですよねぇ。

この土地は、結構狭い地域に、それなりの規模の修道院が林立していて、それぞれが、争うかのようにタンパンなどの装飾に力を入れていたわけですが、その関係性はどうなっていたのでしょう。スイヤックも、カルンナックも、そしてこのボーリューも、石工さんのタイプ、というより、同じ人、同じ工房であった可能性が高いので、それぞれが競うというよりは、当時のトップ技術を、我も我も贖ったということになるのでしょうか。

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聖遺物があったわけですから、周歩廊があります。祭壇に聖遺物箱が置かれていたのでしょうね。祭壇前のスペース、十字型の中央部がドームとなっているスタイル。背が高いです。

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上には伸びても、横幅は狭めで、この狭い側廊というのも、フランスではおなじみですね。
上に伸びることに、強くひかれたいたのですね。とにかく細くてもいいから、上に伸びたい伸びたい、という構造を目指す率が非常に高いですよね。

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周歩廊の上部が、二階建てでちゃんと歩けるようになっていそうです。大変背の低いかわいらしい二連窓がずらりと並んでいます。

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周歩廊を支える一階部分も、二連窓の二階部分も、柱頭はのっぺらぼうですけれど、これはもともとそうだったのか、それとももうちょっと装飾的な彫りものがあったのか。

結構柱頭彫り物ありますので、もともとは色々な彫り物の柱頭ではなかったかと、想像します。分かりませんけれども。

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これは、なんでしょう。道路工事のドリルみたいですけど、笑。膝をべちゃっと曲げた女の子すわりみたいなのが、楽しいです。それでいて、頭はターバン状態だし、胸筋とかもりもりそうな…。いや、どうしてもドリルからの連想しちゃってるな。

ところどころに、めっちゃ可愛いやつ、います。

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小さい扉の上に置かれていますけれど、扉はそれほど古くなさそうなんで、後付で、そこに置かれたものではないかと思います。
それにしても、なんです、この楽しさ。
一瞬ダニエルかとも見えるんですが、左の子が、もっとちっさい子をガジガジしてるんですよね、ヒトのフィギュアとの間で。

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この人、右手には剣を持ちつつ、左手では玉をもって、ライオン手なずけてるんですよね。ウーム。

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お足元にも、シンプルながら個性的な彫りものがあります。

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この辺り、周歩廊のお足元彫り物なんですが、やはり、足元までこれだけ飾るなら、柱頭がのっぺらぼうは、本来なさそうですね。

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これは見たまんまアトラスですかね。

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もう傷んでしまっているけれど、もともとは顔もちゃんと彫られていた様子があります。残念。

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ここにもまたかわいらしいやつ。
これはダニエルさんだと思います。
こちらは、彩色があった様子ですね。

全体に、足元の方が、保存状態が良いようでした。モチーフが単純だからか、単に改修などの影響を受けなかったということなのか不明です。
いずれにしても、創建当時の本堂には、もっとたくさんの彫り物があったものと思います。その時代の名残は、やはり外側の方に多くみられるように思います。

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では、続きます。

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  1. 2021/05/17(月) 00:43:34|
  2. ミディ・ピレネー・ロマネスク 31-81-82-46-12-48
  3. | コメント:0
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