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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

目が泳いでいます(モワサック その6-タルン・エ・ガロンヌ82)

2017.08.ミディピレネー及びオーベルニュはカンタルの旅、その107

モワサックMoissacのサン・ピエール修道院教会Ancienne Abbaye Saint-Pierre、続きです。

改めて、解説を読んでみると、前回の記事でも触れた点が出てきました。
「柱頭は、明確な意図をもって並べられているというより、時として装飾的な内容で並べられたり、時としてテーマを同じくするものを並べたり、という様子であるが、いずれにしても、その一般的なデザインは、偶然ではなく、意図的なもので、信仰に必然なテーマについては、きちんと置かれている。」

感覚的に、普通はもうちょっとまとまった並びをしているよなぁ、と思ったのは、間違いではなかったみたいです。よかった、見当違いなことじゃなくて、笑。

それにしても、私も、もうちょっと撮影の順番を明確に記録するなりしとけよ、と反省しました。あまりの数で、おそらく全部の柱頭は撮影できなかったようなのですが、撮影対象があちこちうろうろするので、解説本があってもなかなか判別が難しくて。
ま、そういう性格なんで、仕方ないですけどね。例えば本堂見学でも、右側からぐるりと回る、みたいなルールを漠然と決めているのですが、パッと見たときにすごかったりすると、もうルールなんか完全無視で、蜜を求めてふらふらするちょうちょとかミツバチのようになってしまって、どういう順番で撮影したのかなんて、全然わからなくなってしまいます。
ま、研究者じゃないし。というお決まりの言い訳、笑。

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ここの柱頭は、動物とか植物モチーフなんかは、私には魅力的なものが多かったのですが、聖書のエピソード系は、傷みも多かったし、細かすぎるのが、正直インパクト薄くて、エピソードを理解しようという気持ちについて、若干おざなりになったところもあったかもしれません。
とにかくあり過ぎるの、問題です、笑。

一旦、他の場所に行きます。ポルティコの上にある塔部分です。

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12世紀の建造物となり、全体でいうと、下の絵図が分かりやすいですよね。

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11世紀の半ばまで、教会は、身廊があり、そこにナルテックスが続くスタイルでした。ナルテックスは、イースターや葬式などの儀式に使われるスペースでした。そういったナルテックスのスペースは、多くのケースで、その上部に礼拝堂を作られる場所となり、大抵、サン・ミカエルと天使に捧げられたようです。
モワサックでは、この工事が、おそらく1110/1115年に開始されたとされています。サン・ブノワ・シュル・ロワールとか、同時期みたいです。これは、2019年の旅になりますが、さて、いつアップできますか。サン・ブノワのこの構造物は、すっごくでかかったですね。でも、あそこは入れなかったのではなかったかな。

モワサックに戻りますと、ほぼ、四角形のプランで、下の階から、四本の堅牢な角の角柱が置かれ、大きなアーケードとなっています(現在は、西及び北部分が埋め込まれてしまっています)。

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この部分、修復もかなり丁寧に行われている様子で、アクセスしたとき、12世紀の構造物とは思えないものでした。
こういうリブがすごい強調されている構造の建物って時々ありますが、かなり時々…。それぞれが、円柱につながっているのも、すごく印象的です。
ここに置かれた柱頭は、回廊にあるものとはテイストが違うとあります。で、例として、これが挙げられています。

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サムソンとライオン。
聖書のヒーローの姿は、善と悪のシンボルとして使われるとあります。が、ここでは、古い時代のモチーフにインスパイアされたスタイルになっていて、なんと、ここでもミトラ神が出てきました。ミトラが雄牛をいけにえにする場面を、ここでは、雄牛の代わりにサムソンにつきもののライオンにした、ということらしいです。

確かにこの図像、すっごくミトラ神の図像に近い感じします。サムソンと言われてももちろんサムソンなんだけど、そうかミトラ入っているのかって、結構発見ですね。サムソンは、大抵イケメンに表されることが多いし、長髪をなびかせて勇敢な様子で、かなり好きなんですが、ここのサムソンは、なんか壮年の、熟女ならぬ成熟した男性の魅力ムンムン系?私の好みは、もっと若々しい、おバカだけどかっこいいのよ、という軽薄感も漂うタイプなんで、ちょっと違います。いや、それどうでもいい、という告白ですね。

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確かに、ダイナミズムっていうか、全体の印象、回廊にある繊細な人物たち満載の柱頭とは、かなり異なります。

今、気付いたのですが、これは地上階の部分にあったのですね、どうやら。例によって、撮影の順番から類推しているのですが、解説も翻訳しながら読んでいるので、なんだか本当にわかりにくくてすみません。
つまり塔の下の部分は、あの派手な扉から続く部分になるわけです。

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本堂を見下ろす位置関係で、狭い階段を下りていき、下にアクセスする構造です。あルートとしては逆かな。
で、この部分は、12世紀の構造物になるわけですが、回廊とは彫り物のタイプが違うわけで、サムソンの他も、やはりちょっとテイスト違いますね。

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線が明確で、きっぱりしています。そして、モチーフも表現方法も、すごく違う感じ。

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このにょろにょろの上に顔出すやつとか、なんでしょう。オリジナリティはありますが、可愛さが全然なくてすごい。
そう、大胆で可愛さゼロ。新しいな。

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下が、本堂への入り口で、クローバー型がかわいい。

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この前何か読んでいて、このクローバーは、やはり三位一体の三つを表しているのかな、とふと気づいたんですが、絶対そういうのありますよね。いつもいつも、かわいいとか面白いとか、目の前にあるものを素直にピュアに見てしまって、信仰のことを忘れがちで、写真を見返しても、基本はそういう感じなんですけど、表現美術って、近代に来るまで、すべて意味があったんですもんね。
これだけロマネスクやっていても、いまだにそういう複合的な見方になれないっていうのも、なんなんだ、と思いますけれど。

半端ですが、どうまとめたらいいのか分からないので、ちょっと考えて、次回を最終回にします。

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  1. 2021/06/25(金) 16:37:23|
  2. ミディ・ピレネー・ロマネスク 31-81-82-46-12-48
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