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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

800年生き延びるとは(アナーニ、カテドラル、その3)

2017年12月の週末旅行、ローマの古代から現代まで、その6

サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂Cattedrale di Santa Maria Assunta di Anagni続きです。

やっとこさ入場しますが、最大の目的であるクリプタは、博物館という扱いになっていて、要は入場料を払って見学する仕組みになっています。
博物館はクリプタだけではなく、ちゃんと見学コースがあり、クリプタについては、入場の際にアクセス時間を決める必要がありました。わたしは15時過ぎに行ったのですが、私の前に団体さんが入ってしまい、その人たちのクリプタの予約が15時半ということで、次の16時からにした方がいいよ、と勧められたので、そういうことに。正直、どういう仕組みになっているのかも不明でした。

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カテドラルの博物館、要は宝物館のようなものですから、あるものは、こういうやつ。

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美しい職人技ですし、最近ではハンコのモチーフの参考にもなったりするし、興味が全くないわけではないんですが、まぁ、急ぎ足で眺める程度で済ましちゃうタイプの展示物ではあるわけです。
が、ここのコレクション、かなりすごくて、布物の展示に、こんなに食いついたのは初めてかも。

通過しながら横目で見る状態だったのに、そんないい加減な視線をもとらえて離さない美しい色や光沢に、思わず立ち止まって、ガン見。

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そして、展示キャプション見て、13世紀のものであるというので、のけぞるほど驚いたんです。だって、保存状態すごく良いんですよ。おそらく、退行した色合いが、さらに良い雰囲気に感じるのであって、オリジナルはもうちょっと鮮やかな色合いだったのかもしれないんですが、黄金やシルク、もう贅を尽くされた刺繍の様子が迫ってくる勢いっていうか。

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これらは、祭壇を飾る布だったようで、全体にツリー・オブ・ライフというのかな、Albero della vitaをテーマにした刺繍が、本当に素晴らしかったです。北欧の方のものでした。

一方こちらは、パレルモ産。

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赤いシルクに金糸の刺繍。前回お話に出たボニファチオ8世の祭服だったとされています。これも13世紀のものです。

この美しさは、このちっちゃい写真では、絶対に伝わらないと思うのですが、13世紀の刺繍が、ここまで美しく、という驚きと、その細かさやモチーフの面白さ、刺激的でした。

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これも、13世紀の飾り布で、イタリア中部産。
この頃って、建築やそれにかかわる装飾は男性のお坊さんが主にやっていたわけですが、刺繍もそうだったのか、またはこれほど繊細な仕事だから、女子修道院も多くできるようになってきた時代から、女子の修道僧の仕事として増えたのか。

照明は暗いし、ガラス越しだし、撮影してもうまく取れないのは分かっていたのですが、バカみたいな枚数を撮影していました。いやはや。宗教って、本当に芸術には貢献していますね。

結構な数の展示の後、サルバトーレ礼拝堂Cappella di Salvatore。

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この礼拝堂は、教会建築の終わりに、ピエトロ司教の望みによって作られたものとされていて、ピエトロ自ら、サルバトーレ及びサン・ベネデットに捧げるものとしたそうです。ここは、司教のプライベートの礼拝に使われ、創建当時は、内陣に直接通じる階段があったそうです。
なんか教室みたいな様子になっているのは、絶賛修復中で、その作業台とかがたくさん置かれていたんです。

で、一旦本堂に出ます。

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地味な本堂です。
三身廊で、それぞれに後陣があるタイプ。構造はロマネスク時代往時のままとはいえ、装飾的には、それ以降の手が入っていて、すでに13世紀半ばに、中央身廊や翼廊部分は、ゴチック様式が持ち込まれていたんだそうです。前回までの記事でも書いたように、セレブ御用達ですから、資金豊富だったであろうことも、おそらく背景にあるでしょうね。
で、その勢いで、17世紀初頭には、バリバリのバロック装飾が持ち込まれたようです。ローマはバロック、すごく普及しましたから、はやりだったんでしょうし、やはり資金…。
我々中世ファンにとって幸いなのは、イタリアは、中世創建時の姿に戻そうという流れが割とあって、ここも、19世紀から20世紀にかけて、できる範囲で、バロックの余計な装飾が取り除かれて、一部中世の様子が取り戻されています。
オリジナルでは、すべての壁にフレスコ画があったようですが、取り戻されたのはわずか。

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数少ない生き残りが、この聖母子。写真悪くて申し訳ないですが、リンゴのほっぺでかわいいですよね。

この後、クリプタに降りるのですが、そこのフレスコ画同様、この本堂の方でも、複数のマエストロの絵画があったのだろうと想像します。今残されたわずかな絵画も、明らかに傾向が違いますよね。

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柱は、何もないかと思ったら、ひっそりとこんな方々がいましたね。

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ほぼ、ワンパンマンですね。
そいから、こんな人も。

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今年の干支の方。行ったときは干支じゃなかったですけどね、2017年、自分の年をひっそりと待ってた時期ですね、笑。

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床や壁、多くの場所のモザイクは、もちろん例のコズマさん一家のもので、この床は1230年ごろとされているようです。材料は、ローマ時代の建物から持ってこられたものを再利用しているそうです、こんなモザイクすら。ある意味エコな時代ですよね、あるものをとことん利用する。ローマのものを中世で再利用して、今まで来ているわけですから、このモザイク、テッセラによっては2000年の歴史を背負っていることになります。

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モザイクは、持ちがよくて、考えたらそれ自身がエコです。ここまで長い時間保たせようとは考えていなかったと思いますけれど…。これを作った13世紀の職人さんが、21世紀でもなお、黄金のテッセラが燦然としているこの様子を見たら、たまげるのでは。いや、もちろんそういう気持ちで作ってたからね!と胸を張るのか。

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内陣にある司教座ですが、これは大理石職人ピエトロ・ヴァッサレットの作とされています。ローマのあちこちの教会で活躍した著名マエストロです。ここでもコズマさん一家のモザイクが美しいです。
司教座の左にあるくねくねは、全然ちゃんと写真撮ってなくて、我ながら観察眼ないんですが、おそらくイースターのろうそく立てだと思います。これも同じマエストロの作品で、こういうくねくねにモザイクというやつは、ローマで多くみられます。このくねくねのねじりん棒状態が、何ともセクシーというか、魅力的ですし、モザイクのモチーフとか色合い、とても好きです。

というわけで、クリプタだけが目的で、博物館見学に入ったのですが、意外と展示に食いついてしまいまして、長くなってしまいました。
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  1. 2021/07/18(日) 15:09:34|
  2. ラツィオ・ロマネスク
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