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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ラベンナに次いで(サンタ・プラッセーデ、その2)

2017年12月の週末旅行、ローマの古代から現代まで、その16

サンタ・プラッセーデ教会Basilica di Santa Prassede、続きです。

本堂の後陣や、それに続くアーチのモザイクもそりゃすごいんですが、もう一つ必見のモザイクがあります。ここは何度訪ねても、何度でも感動してしまえる場所の一つなんで、やっぱり改めてアップしておこうと思った次第。

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サン・ゼノーネ礼拝堂Il Sacello di San Zenone。後陣向かって右側、入り口のすぐ近くにある礼拝堂です。

ローマにおけるビザンチン遺構の中でも、最も重要とされている場所の一つです。殉教者であるゼノーネさんに捧げられた礼拝堂ですが、その内壁のすべてに、きらめくような美しいモザイクが施され、「天国の庭」とも評されているとか。

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こじんまりとした空間に合わせて、他の場所でも表されている同じテーマが、小ぶりな様子で見られます。その上、場所が小さいために、距離感が圧倒的に近いので、逆に迫力があります。
この、天球のキリストを持ち上げる天使たちの図も、すぐ頭上で、鮮やかな水色やきらめく黄金がふりそぞいてくる気持ちになりますよ。

この礼拝堂は、パスクワーレ1世が、9世紀に、その母親テオドラを偲んで作り、サン・ゼノーネに捧げたものです。
サン・ゼノーネに関しては、ほとんど資料がないようで、レリックが収められているのかどうかなどの基本的なことも分からないようです。

トップの写真は、本堂側の入り口上に置かれたモザイク。開口部を取り巻くような帯の中央には聖母子が置かれ、その両隣は、サン・ヴァレンティーノとサン・ゼノーネとされています。その他も聖人と考えられますが、どなたかは特定できないようです。
その上には、祝福するキリスト、両脇には十二使徒が並んでいます。
上部角に置かれたお顔は、おそらくモーゼとエリア、下部の角にはパスクワーレI世と、その後継者エウジェニオII世ではないか、とされています。

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礼拝堂内部に入ると、壁の上部から天井すべてが、素晴らしいモザイクでおおわれており、我を忘れるほどです。数度訪れているので、もはや気持ちの準備ができていますから、落ち着いて撮影できるようになりましたけれど、その美しさに呆然とする気持ちは、相変わらずです。

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ここは、テーマがどうの、誰がいるのではなく、ただその美しさ、そしてこれほどの保存状態で残されている事実への感謝、そんな気持ちで楽しむことを優先するべき場所ではないかと思います。

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ここだけではないのですが、ローマには、ビザンチン系の中世モザイクが実はたくさんあるのです。2009年に、初めてローマの中世を歩いた時、とても驚いたんですよね。イタリアにおけるビザンチン・モザイクは、まずラベンナであり、そしてシチリア、という知識しかなかったのです、当時。
ローマは何度も訪ねていますが、どうしても帝国遺構の見学に偏り、中世的な視点は、まったく欠けていましたからね。
実際は、少なくとも私にとっては、ラベンナの次に来るモザイクはローマとなりました。シチリアのモザイクは、黄金がすごいし、規模の大きな教会に施されているためにインパクトはあるのですが、描かれている内容は聖書エピソードで、ほとんどの場合、斬新さはなくて形式的な内容になっているんですよね。唯一の例外がルッジェーロ宮のモザイクだと思います。

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ローマのモザイクは、非常にラベンナを彷彿とさせるものが多く、装飾的なモチーフにも凝っていて、面白さがあります。

ただ、ローマはラベンナの何倍も広くて、教会が点在しているので、すべてを見学するのは、なかなか骨が折れます。

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でも本当に価値があるので、帝国だけでなく、中世的な観光がもうちょっとフューチャーされるといいなぁ、と思います。

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祭壇上のニッチには、モザイクによる聖母子がありまず。

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これだけ、他とはちょっとテイストが違うので、職人や時代が違うように思います。新しいのかな。テッセラもやけになめらかですよね。

そして、ここに来ると上ばかり見てしまうので、この時も一切撮影していませんが、この礼拝堂の床は、古い時代の多色大理石による床モザイクとなっています。
コズマ―ティではなく、もっと古い時代のもの。

今回、カンパニアのとある教会で親切にガイドをしてくださった方が、コズマ―ティが有名になってから、床モザイクは何でもかんでもコズマ―ティにされてしまうことに憤っていらっしゃいましたが、同感です。というか、私も、コズマ一家の活躍を知ってから、それまでとそれ以降の区分けが付きにくくなって、コズマ的床モザイクを見ると、反射的にコズマ―ティと思ってしまう癖がついてしまっていたんですよね。例えば、ベネチアの古い教会も、床モザイクすごいんですけど、あれは、コズマ以前の時代ですから、コズマ、まったく関係ないんですけどね。

そんなことも、ある意味ローマの中世を彩るお話。本当に邪険にされていますけれど、ローマの中世は学ぶ価値あると思っています。

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  1. 2021/08/28(土) 10:11:29|
  2. ローマの中世
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